このコンテンツは有料note「webライターとメディア運営者の、実践的教科書(安達裕哉著)」より転載しています。
ChatGPTの便利さ(というか、すでに「創造性」と言えると思うのですが)には、驚くばかりです。
すでに100近い記事を実際にChatGPTを使って書いてみましたが、生産性という観点でいうと、ChatGPT以前と、ChatGPT以後では、10倍くらいの開きがあると言ってもよいでしょう。
というのも、以前は、「テーマが決まっていない状態」から、何を書くべきか、酷いときには1週間近く悩んでようやく書き出す、ということがよくありました。
ところがChatGPTが登場してからは、「アイデア出し」という作業にChatGPTを利用できるため、凄まじく仕事のスピードが上がったのです。
これは、ライターにとっては大きな福音となるのではないかと思います。
そこで今回は、タイトルにある通り、実際に業務で使って得た実務的な記事を書く方法
「ChatGPTを使って、「書くことがない状態」から、30分~45分でブログ記事を書く方法」を、全部で6ステップに分けて、ここで紹介したいと思います。
(なお、本記事そのものにはChatGPTを利用しておりません)
ステップ1.「記事のテーマ生成」をChatGPTに命令する
前回、ChatGPTでSEO記事を書きたい場合には、「キーワード」から候補となるタイトルを生成させる手法をお伝えしました。
ところがこの手法は、ブログやSNS、Youtube動画など「面白そう」だからと、読者に立ち止まってもらう記事には使うことができません。SEO記事は「調べ物/役に立つ」に対する欲求を叶えるのが役割だからです。
ではブログなど「面白いな」と思ってもらうにはどうすればよいでしょうか。それは、大別して3つあります。
・笑える
・深く共感する
・好奇心を満たす
「笑える」は、面白ネタを取り扱うことで読まれるコンテンツです。
「深く共感する」は、喜怒哀楽のいずれかの感情に訴えかける方法であり、一般的にwebでは「怒」が人気を集めています。
これには、以前の記事「勘や経験則ではなく、心理学のエビデンスをもとに、バズるコンテンツを生み出そう」で紹介したように、心理学的なエビデンスがあります。
ケンブリッジ大学心理学科のSteve Rathjeらの研究は、米国の政治家や報道機関からの約 300 万件のツイートを分析し、「グループ外への敵意がソーシャル メディアでのエンゲージメントを促進する」ことを明らかにしました。(出典:Out-group animosity drives engagement on social media Steve Rathje PNAS)
ただし「怒」は記事そのもののエンゲージメントは高くなるものの、「敵」と「味方」の線引をはっきりさせるため、意図しない敵を増やしてしまうというデメリットもありますので、使用には注意が必要です。
そしてなにより、これら2つは感情を持たない「ChatGPT」に書かせるには、ちょっとハードルが高いのです。
試してみましたが、「おもしろ」と「煽り」のコンテンツは、ChatGPTの生成物のクオリティは正直なところ、高いとは言えません。
とくに「怒り」を引き起こすような内容については、ChatGPTは過激な回答を封じられており、本来の使い方からも外れます。
ですから、ChatGPTで「ブログ記事」を書きたければ、必然的に最後の「好奇心を満たす」に振り切ることになります。
そして、記事の目的は意外性のある知識や結末を読者にもたらし、新鮮な驚きを提供することです。
では、実際に「記事のテーマ生成」を、ChatGPTにやらせてみましょう。
ChatGPTに対して、次のように命令します。
解説します。
このプロンプトの要諦は、2つあります。
1つ目は、「面白いテーマ」を、具体的な6つの条件によって定義していること。
2つ目は、条件を満たす、参考となるブログ記事のタイトルリストを提供して「ChatGPTに学習をさせること」です。
この場合、後者は私自身が実際にBooks&Appsで執筆した記事のタイトルを用いて、「自分らしさ」を出すように調整を行うために、リストを読ませています。
こうすれば、曖昧な「想定読者」を定義するのではなく、いままでの記事が想定していた想定読者を、そのまま引き継がせることができます。
結果的に、上のプロンプトから得られたのが、次のタイトル群です。
かなり具体的な結果が得られました。
中には、「お、ちょっと読んでみたいな」と思うような記事のタイトルが生成されているのがわかると思います。リストを与えたことによるメリットは、大きいのです。
ステップ2.「章立ての生成」をChatGPTに命令する
それでは、上で生成されたタイトルを一つ選択し、記事を書いていきます。
選択するのはどれでもいいのですが、ひとまず「知性」に関連するネタ、
“13 売れる人に学ぶ:「頭の良さ」以上に重要なスキルとは?”
でやってみましょう。
ここでのコツとしては、2つです。
1.「章立て」を聞く。いきなり記事を書かせない。
2.章立ては、大項目、中項目、少項目程度の3階層で出力させると、どのような話題が含まれているかを人間が判断できるので、記事を書かせやすい
したがって、下のようなプロンプトを入力します。
このプロンプトから得られたのは以下の出力です。
そこそこ、良好な結果が得られたように感じます。
ただし、この章立ての出力は、常に良好な結果が得られるわけではありません。出力をよく吟味すると、
・話が重複している
・一般論が多すぎて、話が退屈そう
といった問題点もあり、章立てについて一度人間が目を通したほうが良いことが殆どです。
今回は比較的、重複や一般論ばかりではなさそうなので、そのまま使っていきますが、章立てに不満がある場合は、編集作業を入れて、章立てを整理してから次のステップに進みます。
ステップ3.「下書き生成」をChatGPTに命令する
その章立てをもとにして、ChatGPTに下書きを作らせるプロンプトを入力します。それが、以下です。
このときの注意点ですが、「章単位」で、できる限り分割して出力させるほうが、圧倒的に文章のクオリティが上がります。
そして、上のプロンプトに対する出力が、以下です。
なかなか良さそうです。
「出典を示せ」というプロンプトを入れると、最後に参考文献を入れてくれますので、調べものの方向性も定まります。
ただしこれらの文献は「ウソ」が多数含まれていますので、あくまでも「調べものの方向性が決まっているので楽ができる」程度にとらえておきましょう。
ステップ4.編集とファクトチェックを行う
さて、ここからは人間の作業が入ります。
出力をもとに、編集作業を行ってみましょう。同時に「ファクトチェック」を行います。それが、以下の文章です。
なお、文献となっている4つのうち、2つについてはファクトチェックができましたので、文中に注釈を入れています。
第一章「頭の良さ」の定義とその限界〇知識と知性の定義「頭の良さ」とは一般的には、知識の豊富さや知性、すなわち問題解決能力や論理的思考能力を指します。アルベルト・アインシュタインは「想像力は知識よりも重要である。」と語ったとされますが、これは、知識が情報そのものであるのに対し、知性がその情報を活用する能力であることを示しています。〇「頭の良さ」の価値と限界「頭の良さ」は、職場でのプロジェクトの進行や、学術的な研究など、多くの場面で価値を発揮します。知識が豊富であればあるほど、新しい情報を迅速に理解し、適切な意思決定を行う能力が向上します。また、知性が高ければ、複雑な問題を解決するための新たな視点を提供し、効率的な解答を導き出すことができます。しかし、「頭の良さ」がすべてを解決するわけではありません。知識主義の落とし穴は、「知っていること」が「理解していること」や「行動できること」とは必ずしも等しくないということです。教育心理学者のブルームは、学習の領域を認識、理解、応用、分析、評価、創造の6つの段階に分けました*1。知識(認識)はこのうちの最初の段階であり、それ自体では限定的な価値しか持ちません。(*1 熊本大学)〇情報過多時代の課題さらに、現代社会は情報過多であるため、単に情報を知っているだけではなく、その情報をどのように分類し、必要な情報を選択し、活用するかが重要となります*2。情報の優先順位をつける能力や、情報を効率的に活用する能力(情報リテラシー)が求められています。(*2 ワシントン大学 Information Overload with David Levy)以上のように、「頭の良さ」は非常に価値がありますが、その一方でその限界も認識することが重要です。
それなりに読める文章に仕上がってきました。
コツは、「事例」と「エピソード」をきちんと記事中に入れることです。
これを入れるだけで、機械生成した文章の印象がかなり変わります。
では、もう2章の方もプロンプトから出力させましょう。
以下が出力です。
では、これについても編集作業とファクトチェックを行っていきます。
ステップ5.「文章のクオリティ向上」をChatGPTに命令する
しかし、第一章と比べると事例が弱く、クオリティの低さは否めません。
このような場合は、クオリティを上げたい文章を取り出して、さらにChatGPTに指示を出します。
この際に重要なことは、とにかく最初に記事を出力させたときと同じく、「具体例」および「すぐにできること」を記事に含めさせるように、プロンプトを作ることです。
その結果が、下です。
かなり良くなりました。事例なども含まれています。
これをもとに、編集作業を行いましょう。
編集とファクトチェックを行うと、AIで出力した記事であったとしても、見違えるように人間が書いたものに近くなります。
第二章「頭の良さ」を超えるスキル頭の良さは重要ですが、それだけでは限界があります。例えば以下で紹介するコミュニケーション力、EQ、創造力は、単なる論理的な思考力や知識の豊富さなどの「頭の良さ」を超え、より広範で深い影響を及ぼすことができます。私たちは、これら全てのスキルをバランス良く育てることで、自己の成長と社会全体の発展に貢献できる可能性があります。〇コミュニケーション力コミュニケーション力は、人間関係をスムーズにするだけでなく、自身の意見やアイデアを他人に伝え、理解させる能力です。ビジネスや学問の領域では、これが効果的なチームワークや創造的なコラボレーションを生むために不可欠です。具体的には、アップル創業者のスティーブ・ジョブズが優れたコミュニケーション力を持っていた一例として、彼のプレゼンテーションスキルが挙げられます。彼はプレゼンテーションを通じて、聴衆を引きつけ、自分のビジョンを伝え、賛同を得ることに成功しました。
このスキルを試す一つの方法は、あなたのアイデアを短く、わかりやすく説明することです。一分程度でプレゼンテーションを行う「エレベーターピッチ」は、あなたの思考を明確にし、他人に伝えるための有効なツールとなります。
〇EQ(エモーショナル・コーシェント、心の知能指数)EQは、自分自身と他人の感情を理解し、適切に管理する能力を指します。研究によれば、高いEQを持つ人は、ストレス管理、対人関係、自己意識、自己規制、そして他人への共感といったスキルにおいて強いと言われます[^16^]。それを試す一つの方法は、感情日記をつけることです。それはあなたの感情とそれが起こる状況を認識し、それに対応するための戦略を開発するのに役立つツールです[^17^]。また、他人の感情を理解するためには、積極的な聴き方が有効です。他人の視点を理解し、共感する能力は、強力なコミュニケーションツールとなります。
〇創造力創造力は、「頭の良さ」を超える別の重要なスキルです。創造的な思考は新しいアイデアや解決策を生み出すために必要であり、現代社会でますます重要になっています。それは新しい商品やサービスを作り出すための革新的な思考から、日々の問題解決まで、広範な領域で活用されています。例えば、Teslaのイーロン・マスクは、従来の自動車産業の枠を超えて電気自動車の可能性を追求し、その結果、自動車産業に革新をもたらしました。“マスクとべゾスの読書リストに目を通すと分かるのは、2人ともSF好きであることです。イアン・バンクスの『カルチャー』シリーズやフランク・ハーバートの『デューン 砂の惑星』のように共通する愛読書も目立ちます。2人が読んでいるSFの詳細は『天才読書』で説明していますが、いずれも宇宙を舞台にした壮大な作品です。若かりし頃に読んだSFが、2人の想像力をかきたて、宇宙開発のスタートアップをそれぞれ起業することにつながりました。”)あなたが創造性を試す一つの方法は、”もし仮にこうだったら”の質問を頻繁に自問することです。これにより、新たな視点と解決策を見つけるための創造的な思考を刺激します。
ステップ6.タイトルを付けなおす
同様に、最後の3章も、ChatGPTに出力させます。
プロンプトは、1章、2章と全く同じで問題ありません。テンプレートに従って命令します。
出力は以下です。
まだ若干事例などが弱い気がしますので、2章と同じように、再度の命令によって記事を強化します。(この部分は、2章までと同じなので割愛します。)
そして、最も重要で、最後の作業が「タイトルの付け直し」です。
当初、この記事のタイトルは、”売れる人に学ぶ:「頭の良さ」以上に重要なスキルとは?”でした。
しかし、出力させた結果を見ると「売れる人」というよりは、ほとんどは研究者と経営者で事例が構成されています。
「売れる人」を中心にするために、プロンプトに営業の事例を含めさせてもいいのですが、非常に時間がかかったり、適切な事例が出てこなかったりするので、できればAIの出力結果を素直に使うほうが良好な結果を得られやすいでしょう。
そこで、タイトルを
”研究者と偉大な経営者たちに学ぶ「頭の良さ」以上に重要なスキルとは?”
に変更します。
これで、記事は完成です。
補足
なお、一点だけ補足をしますと、「ChatGPT」に記事を作らせるときの作業は、結局のところ
・細かく分割して注文をだす
・結果を編集して、さらにそれをもとに注文を出す
という反復的な作業にほかなりません。
したがって、馴れてしまうと、かなりのスピードでそこそこの記事を生み出すことができます。
社内のブログ、書かないといけないけど、なかなかそんな暇がない……とお嘆きの状況であれば、ぜひChatGPTに頼ってみても良いのではないかと思います。
その辺の3文ライターよりもはるかに優秀ですよ!
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【著者プロフィール】
安達裕哉
元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。
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