取材をしてインタビュー記事を書く技術について。

このコンテンツは有料note「webライターとメディア運営者の、実践的教科書(安達裕哉著)」より転載しています。


今回は、取材をして、インタビュー記事を書く技術について記述します。
 

インタビュー記事の問題点

端的に言えば、「インタビュー記事」の最大の問題は、読まれにくいことです。
その理由は、【28】「インタビュー記事」はなぜ、呆れるほど読まれないのか。に詳しく書きましたが、結論から言うと、ニュースやオピニオンにくらべて、読み手への負荷が高い点にあります。
 
これはインタビューの中で使われる「会話」というコミュニケーション形態が
「かみ合ってなくても進む」
「結論を出さなくてよい」
「表情からニュアンスを読み取れる」
「情報の密度が低い」
と、文章と根本的に異なるため、必ずしもライターが悪いのではありません。
いうなれば、それが「会話調のインタビュー記事」というフォーマットの限界なのです。
 
それゆえインタビュー記事は、構成に脈絡がなく、質問も散発的、「結局、何が言いたいの?」となりがちです。
結果として、
・知人・関係者しか読まない
・主張があいまい
・薄い
記事になりがちです。
また、記事の拡散力も「インタビューされる人」の拡散力に依存するので、この場合のPVの上限は、ライターの腕というよりは
「その人がどれだけ有名なのか?」
という話になります。
要は、「とりあえず有名人だしときゃ、拡散協力してもらってPV稼げるわ」みたいな。
そんなやつです。まあ、それはそれで否定はしません。

そういうやり方もアリです。

 
そういうわけで、メディア運営者側には
「手軽に作れ(るように見え)て」
「有名人や、フォロワーの多い人を出せばある程度のビューがとれる」
インタビュー記事は、相も変わらず人気です。
ただし、「インタビュー記事は、有名人しかやらない」
と決めているメディア関係者や、ライターの方であればいいのですが、
そうでない場合は、苦労して書いても、ほとんどビューが出ません。
 

読まれるインタビュー記事のための技術

では、インタビュー記事は基本、内輪ウケの提灯記事ばかりなのでしょうか。
あるいは、有名人頼みの記事ばかりなのでしょうか。
もちろんそうではありません。
 
それどころか
「インタビュー記事は、有名人しかやらない」
というメディアやライターは、微妙だと個人的には思います。
書き方によっては、インタビュー記事は、もっと読まれますし、「無名の人のインタビュー記事をどう読ませるか」は、それこそライターの腕が問われる記事だからです。
 
では、どのようなインタビュー記事なら読まれるのか。
単純に言えば、情報の密度を上げて、読者の負荷を下げることです。そのために必要な技術は次の3つです
1.テーマはメディアが用意する
2.「会話形式」を極力避ける
3.インタビュー記事の題材は「視点の提供」
では、順番に解説します。
 

1.テーマはメディアが用意する

記事のテーマ・主張は、必ずメディアが用意します。
これは、インタビュー記事を書く上で、最も重要なことです。
逆に、やってはいけないのは以下の行為。
「雑談をして、その中から話題を拾う」
「好きにしゃべってもらう」
「ディスカッション」
つまり、インタビューイーに、自由にしゃべらせてはいけません。
 
いったいなぜでしょう。
インタビューを受ける人の多くは、記事やメディアに関しては素人です。つまり「何が読まれるか」については疎いです。
さらに、彼らがインタビューを受ける理由は、「自分の知名度向上」に役立つからです。
 
ここに、落とし穴があります。
つまり、インタビューを受ける人物が「話したい事」とメディアの読者が「読みたい事」が往々にして違うのです。
だから、自由にしゃべらせてしまうと、記事はインタビューイーが読者を無視して、話したいことを話すだけ、という最低の成果におわります。
 
これを回避するために「テーマはメディアが用意する」が必要なのです。
あらかじめ質問を用意しておき、極論すればメディアの思惑に従って「YES」か「NO」かを答えてもらうだけでも良いのです。
 
つまり、インタビュー記事作成の基本形は「落とし所を決めておいて、その通りに答えてもらえそうな人にインタビューする」というやり方です。
この一連の流れは、仮説をメディアが立て、検証はインタビューによって行う「仮説」→「検証」のサイクルに似ています。
 
それ故に、インタビュー記事は事前の調整や事後の承諾など、高度な調整を求められます。
「誰が記事として成立しそうなことを言ってくれるか?」を探すのですから、重要なのはインタビューではなく、むしろ「インタビューイーの選定」にあるわけです。
 
これに絡んで、よく、マスコミが「言ったことと違うことを書かれた」という批判を受けています。
これは記者のインタビューのレベルが低すぎて
「その通り答えてもらなかった」のに、そのまま記事にしてしまったために起きている現象です。
事実に反することを記事にはできないですから、想定通り答えてもらえない場合はむしろ、「記事にしない」という選択肢をとるべきでしょう。
 
なお「メディアはどんな意見でも記事にして、中立であるべき」という方もいるかもしれません。
それはそれで価値ある考え方だと思いますので、メディアの運営方針に従うのが良いと思います。
 

2.「会話形式」を極力避ける

インタビュー記事のフォーマットの一つに、「会話形式」があります。
例えば、以下のようなイメージです。
 
Aさん 〇〇ですよね?
Bさん 私は〇〇だと思います。
 
Aさん 〇〇についてはどう思いますか?
Bさん 〇〇は私の経験では、〇〇です。
 
いわゆる「文字おこし」系の記事によく使われますが、このフォーマットは基本的にNGです。
主張を追いかけるのが難しく、情報密度が低いので、読者は読むのが面倒になります。
なぜそうなってしまうのかの理由は以下のように、冒頭に書きましたが「会話」というコミュニケーション形態の限界です。
「かみ合ってなくても進む」
「結論を出さなくてよい」
「表情からニュアンスを読み取れる」
「情報の密度が低い」
 
また、これ以外にも深刻な問題があります。
それは「失言」まで、文章にしてしまうことです。
会話というのは基本的にその場のノリなので、文章化して改めて眺めると、必要以上に辛辣に見えるケースが往々にしてあります。
例えば、
「サラリーマンなんてやるもんじゃないですよ」
「貧乏人は努力してないですよね」
「頭悪いですよね」
といった会話は、雑談や飲み屋では普通に出てくる(!)言葉ですが、文章で見るとかなり嫌な印象を読者に与えます。
これはインタビューイーにとって、マイナスでしかありませんので、会話をそのまま書けないケースです。
 
あるいは事実誤認。専門家としてもっともらしく数字を語っても、実際裏をとってみると、うろ覚えで実は間違っているケースは、想像以上に多いです。
これも後から「訂正してくれ」や「そんなことは言ってない」とトラブルになる可能性が高い事項です。
 
こうなると「言っていることをそのまま書いたら、インタビューイーに怒られた」というケースに発展します。
インタビュー相手との関係も悪くなりますし、「言った」「言わない」のやり取りがすさまじく面倒になりますから、会話をそのまま記事にする、という記事は非推奨なのです。
 
では、どんな書き方が良いのでしょう。
例えば私が以前に書いた、「インタビュー記事」はこちらです。
 
この記事の主張は非常に簡単です。

一言でまとめると、

副業は「スキル高めの人がさらに稼げるようになるための手段」
だと思っていたが、そうではなく
「ダブルワークをして余剰資金を投資に充て、お金持ちを目指す」
という、ウォーレン・バフェットのアドバイスを素直に実行している人がいた。
という記事です。
そして、この記事に出てくるインタビューイーの方は、それを補強する「取材相手」です。
 
もしこの記事を会話調で書いてしまったら、かなり読みにくく、情報の密度が薄い記事になったでしょう。おそらく1万PVもいかなかったと思います。
面倒ではありますが、取材で行った「会話のエッセンス」だけを抽出して記事にするほうが、はるかに読者にとって有益な記事を作ることができるのです。
 

3.インタビュー記事の題材は「視点の提供」

出来事・事実は、「暴露ネタ」でない限り、インタビュー記事である必要がありません。
そのまま素直に事実を報じる記事を書いたほうが読者への負荷が低いので、インタビュー記事はやめたほうが良いでしょう。
 
ではどのような題材がインタビュー記事に向いているのか。
それは、取材相手の「視点」の面白さが際立つときです。
むしろ、「おもしろい視点」こそ、インタビュー記事の中核コンテンツ、と言っても良いでしょう。
 
例えばBooks&Appsの中でも、指折りのPV数を誇るこの記事。
この記事は日本植物燃料というスタートアップ企業の代表者の方へインタビューを行い、私がその主張を代筆した広報記事です。
 
この記事も、一種のインタビュー記事ですが、「会話調」ではなく、むしろ書籍のような語り口で書かれており、情報の密度を高くしています。
ただ、この記事で着目すべきは語り口ではなく、この代表者の方の「視点の面白さ」です。
アフリカの呪術師との戦いには辛くも勝利したものの、もちろんアフリカは日本の常識が通用するところではありません。
 
当たり前ではありますが、「郷に入っては郷に従え」という格言通り、私たちは「現地の常識」に従う必要がありました。
 
今回はそんな話です。
「モザンビークで70万円盗まれた」という事実を記事にしただけではこの記事は「ふーん、治安悪いんだね」で終わってしまいますが、この代表者は
・日本の常識とモザンビークの常識はかなり違う
・70万円という金額であっても、現地の経済活動に大きな影響を与える
ことを、ユニークな視点で語ってくれました。
実は、その頃は現地モザンビークの感覚にもある程度慣れていて「知らぬ間にお金が減っている」ということはよく経験していました。
 
店などでモノを買った後にお釣りが足りなかったりすることは、実は日常茶飯事です。
 
最も驚いたのは銀行でお金を引き出した時、目の前で行員さんがちゃんとお札を数えて確認したにも関わらず、後で確認したら明らかに少なくなっていたことです。
 
とにかく、気を抜くとすぐお金が減るのです。
なるほど……そう言えば、その時期その飲み屋でよくビールを現地の皆さんから奢られていたんですよね。
 
ビールはモザンビークでは高価なのです。
 
普段は現地の人にこちらがビールを奢ることが殆どだったのですが、その時期急に周りの人からビール奢られていたのです。
 
あ、それオレのお金だったのか。
 
と気づきました。
逆に言えば、「視点」が面白くなければ、インタビュー記事は読まれません。
したがって、ここでもまた「インタビューイーの選定」は非常に重要な意味を持ちます。
 
まとめましょう。
「インタビュー記事」は、会話を記事にするものではありません。
インタビューを通じて、
1.メディアの主張を裏付ける
2.会話のエッセンスを抽出して情報密度を高く保つ
3.インタビューイーの「視点」をコンテンツの中核に据える
という3つのことを同時に行う、高度な技術を要する記事なのです。
 

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