Googleが苦手な分野で活躍する、「文章生成AIを利用した上手な検索」の手法について。

このコンテンツは有料note「webライターとメディア運営者の、実践的教科書(安達裕哉著)」より転載しています。


現在の文章生成AIは一般的に「検索」や「調べもの」には向いていないと言われています。その理由は、2つあります。
1.生成AIは「正解」を記述するのではなく「ありそうな話」を記述するだけだから
2.生成AIが学習したデータはリアルタイムではないから。
 
しかし、本当に生成AIは検索に向いていないのでしょうか?
 
確かに従来の「キーワード」を中心とする使い方、つまりGoogle検索を使うのと同じやり方は、生成AIは向いていません。
 
しかし、使い方によっては、Google検索よりもかなり優れた検索結果を得ることもできるのです。
そこで本稿は、「文書生成AIを利用した検索」について述べたいと思います。

結論:生成AIにおける検索は、「キーワード中心」ではなく「相談・対話中心」

ChatGPTのような人工知能を使って検索クエリを作成するには、従来の検索エンジンで慣れ親しんだものとは異なる考え方が必要です。
そのコアとなる考え方は、生成AIにおける検索は、「キーワード中心」ではなく「相談・対話中心」だということにあります。
この違いは非常に大きいものです。
というのも、従来のGoogle検索のような、キーワード中心の検索は、質問に対する答えをある程度持っておかないと、検索ができません。
例えば「東京の美味しいラーメン店」というキーワードで検索する人は多いかもしれません。
 
しかし、考えてみてください。
その人がすでに「ラーメンが食べたい」という答えを持っているときのみ、そうした検索は有効なのです。
しかし、我々は常に、答えを持っているわけではありません。例えば今日はとても暑いですが、何を食べたらすっきりできるでしょうか?
 
試しにGoogleに「今日みたいに暑い日は何を食べるとすっきりする?」と聞いてみましょう。以下のような答えが返ってきます。
 
しかしこれは「答え」ではありません。この中を見て、自分で調査が必要です。
このように検索エンジンは、具体的な要望や条件が明示されてなければ、機能しないのです。
これは、SEOという技術にもよく表れています。
「SEO対策」は、顕在化されたニーズに対してのみ、アプローチが可能なのです。
 
それに対して生成AIは、答えを全く知らなくとも、あるいは自分が何を求めているのかわからなくても、対話によって求める答えに近づくことができます。
では、ChatGPTに同じ質問をしてみましょう。
 
ChatGPTでの検索クエリ作成は、人間の自然な対話と非常に似ています。ただキーワードを並べたり、Yes/Noがはっきり決まっている質問を入力したりするのではなく、知人に話しかけるような形でクエリを作成するだけで、ある程度の方向性が得られます。
 

1.「何が知りたいのか、わからないとき」に生成AIは強い

つまり、従来の検索エンジンに比べて、生成型AIによる検索は「知りたいことが何かわからない」状況に強いです。
これは、具体的に何を探しているのかが不明瞭な場合や、クエリが曖昧な場合でも、生成型AIシステム(例えばChatGPT)が明確な方向へと導いてくれる、ということです。
ではもう少し、高度な使い方を見てみましょう。
このラインより上のエリアが無料で表示されます。
たとえば、「今日のような暑い日には、何を食べればすっきりするでしょうか?」と尋ねるだけではなく、「私に要望を尋ねてください」と付け加えれば、さらに回答の精度は上がります。例えば以下のようなイメージです。
 
ChatGPTに尋ねると、それに対して「食事制限はありますか?」「軽いものをお探しですか、それともしっかりした食事がよろしいですか?」「甘いものがよろしいですか、それともしょっぱいものがいいですか?」などのフォローアップの質問が返ってきます。これによって、選択肢を絞り込み、あなたの具体的な状況や好みに合った提案をしてくれます。
 
この相談・対話が中心のアプローチは、従来のキーワード中心の検索と比べていくつかの重要な利点があります。
 

対話によるニーズの明確化

上で見たように、初期の検索キーワードが不明確または不完全な場合、生成型AIはフォローアップの質問をして検索ニーズをを洗練させます。
この対話的なプロセスは、実際に見つけようとしているものに関連するかどうかわからない情報のページを読み漁る時間を大幅に節約するでしょう。
 

文脈認識

生成型AIは、クエリの文脈を考慮することができ、単語そのものだけでなく、その裏にある意図を理解します。
これは、特に、検索キーワードをGoogleが理解できるように表現するのが難しい人々にとって有益です。
 
つまりは、従来問われた「検索エンジン」をつかうために必須だった、「知識を手に入れるための知識」がそれほど必要ないのです。
 
現状のGoogle検索の正体は、「知識の無い人に知識を授ける」ツールではなく「知識の豊かな人だけが知識を引き出せて」「知識の乏しい人には質の良くない知識しか与えない」ツールと言っても過言ではありません。
 
もちろん、生成AIが提供する知識が正しいわけでもありませんし、知識の質を見極めるための知識がゼロで良いというわけでもありません。
 
しかしGoogleの検索結果を見て、「数多のページから正しい情報を引き出す」よりは、はるかに生成AIは「確からしい情報」を早く引き出すことができます。
 

2.「アイデアを検索したいとき」に生成AIは強い

従来の検索エンジンに比べて、「アイデアを検索したい」という時には、生成型AIは力を発揮します。
特に、記事や企画、あるいは手順書や報告書の中で必要とされる、「アイデア」を埋め込みたい時には、検索エンジンでアイデアを調べるより、はるかに優れた結果を出してくれます。
例えば、ビジネス系の記事を書くとします。
Googleに、ビジネス系 記事 アイデア と尋ねてみると、以下のような回答があります。
 
トップの記事を見ると、「記事のアイデア」ではなく、「ビジネスアイデア」になってしまっています。これではほしい結果とは言えません。
しかし、生成AIを使うと、これよりはるかに良いアイデアを数多く得られます。
ではどのように生成AIを使うのか。
最初に指示を出すときのちょっとしたコツは、「種となるアイデア」をこちらから提供してあげることです。
具体的に言いましょう。
例えば、東洋経済Onlineのサイトを見ます。すると、右肩に「アクセスランキング」の欄があります。
 
これらはアクセスを数多く集めていますから、「良い記事」の一つの要件を満たしていると考えましょう。
ここで登場するのがChatGPTです。
ChatGPTへ「あるビジネス誌の人気記事タイトルを集めたものです。これらのタイトルから、読まれそうな記事のタイトルのアイデアを出してくれ」と指示してみてください。
 
すると以下のような出力になります。
 
すぐにわかりますが、大変優れたアイデアを「検索」しているように見えます。おまけに強調したい言葉を「」(かっこ)でくくるという、東洋経済のタイトル付けの手法まで真似ています。
 
こうした「アイデアを検索する」ことができる理由は、ChatGPTがその内部に「概念同士の近い/遠い」を持っているからです。
ですから、似たような構成の言葉を、いくらでも挙げることができます。
 

3.生成AIは「Q&Aのように複雑な質問をしたいとき」に強い

一般的な検索エンジンでは、複雑な質問や複数の要素を含む質問に対する適切な答えを見つけるのが難しい場合があります。
しかし、生成AIは複雑な質問を理解し、それに対する答えを形成することが可能です。例えば、「20世紀のフランスの芸術にどのような変遷があったか?」という質問に対して、歴史的背景や主要なアーティスト、作品の変遷等を整理して回答することができます。
しかし、それ以上に活躍するのが、ある「問題」に対して、様々な条件の下で「原因」を探索する場合です。要するに生成AIは、Q&Aに強いのです。
逆に、従来から、検索エンジンはQ&Aに弱い、という特徴がありました。
これは、個別の状況に対して、様々な条件を付けていくと、検索クエリ(キーワード)が複雑で、長くなりがちだからです。
そもそも検索エンジンは「ぼやっとした質問」が苦手です。
例えばある時、自社のサイトのアクセスが大きく減ったとしましょう。
通常では、原因は「競合ページに順位で負けたから」というものですが、よく見ると、検索の順位は変わっていません。
なぜこんなことが起きたのでしょう?
それを調べるためにGoogleを利用すると、こんな結果になります。
 
検索1位に表示されたページがそれらしいように見えますが、実は問題解決にはなる情報はありませんでした。
これは「検索クエリの作り方」がヘタだという以前に、複雑な現状を検索エンジンに伝えるのが極めて難しいからです。
では、同じように状況をChatGPTに向けてみましょう。
 
見ていただくと一目瞭然ですが、原因として考えられることが、きれいに一覧化されています。これは明らかに、Googleの検索結果よりも優れています。
生成AIは、従来は「フォーラム」などに投稿をしていた、複雑な状況を伝える必要があるQ&Aという分野で、大きく活躍する可能性があります。
 

4.複数の情報源からの統合的な回答が欲しいときに、生成AIは強い

 
ユーザーが「第二次世界大戦の原因」と検索した場合、検索エンジンはwebサイトの一覧を提供します。これには、歴史学者の解釈、公式な歴史書、教育機関のページなど、様々な情報源からの内容が含まれます。
 
ユーザーはそれぞれのページを訪れ、情報を自分で統合し、全体の理解を形成しなければなりません。これは、時間がかかる場合が多く、また情報の信頼性を判断するスキルが求められます。
 
 
では、同じ質問を生成AIに投げかけた場合はどうでしょうか。
AIは複数の信頼性の高い情報源からの知識を基に、統合的な回答を形成します。これには、例えば、経済的状況、政治的緊張、ナショナリズムの台頭、前の大戦の講和条約など、複数の要素が整理されて説明されるでしょう。
 
結果的に、ユーザーはある程度整理された回答を受け取ることができ、自分で多くの情報源を横断的に調べる手間が省けます。
 
これらの例から、生成AIがユーザーのニーズを汲むことに長けており、個別のニーズに対応した情報を提供できる一方、検索エンジンは一般的で幅広い
情報を迅速に提供する点で強みを持っていることがわかります。

補足:生成AIによる検索と、検索エンジンによる検索は、相補的

これらの結果からすると、「生成AI」と「検索エンジン」のどちらが優れているか、という話ではなく、得意領域にしたがって、分けて使えばよい、という話になります。
傾向としては、生成AIは「直接の答えを出すのが難しい状況」に、対話や文脈を通じてアプローチするのが得意です。逆に検索エンジンは「答えが定まっているもの」に対して、素早く回答を提供するのが得意です。
これらの特徴を踏まえ、生成AIと検索エンジンの特徴を生かした利用をするのが得策だと言えるでしょう。
 

 

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(2024/2/22更新)

 

【著者プロフィール】

安達裕哉

元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。

◯X:安達裕哉

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