無形商材(サービス・コンサルなど)の販売で実績をあげる、5つのマーケティング手法について。

このコンテンツは有料note「webライターとメディア運営者の、実践的教科書(安達裕哉著)」より転載しています。


むかし、私が読んだマーケティングの本に、こんなことが書いてありました。

この話から得られる示唆は、
「やり方を教える」という、無形の商材よりも、「おはぎを作って売る」という有形の商材のほうが売れやすいということです。
 
これは、感覚的にも、当たり前といえば当たり前の話です。
例えば、「痩せたい」という人に対して、「痩せるのを手伝います」という、RIZAPのような無形のサービスは一定のニーズがあります。
しかし、「食べてダイエット」というダイエット食品のほうが、はるかに購入へのハードルは低く、マーケットは大きいのです。
 
堀江貴文氏は、かつて「確実に成功する商売」として、次の条件を挙げました。
利益率の高い商売
在庫を持たない商売
定期的に一定額の収入が入ってくる商売
資本ゼロあるいは小資本で始められる商売
しかしこれらを実際に立ち上げるのは、相応の苦労が必要です。
 
なぜなら、上の条件に当てはまる元手が不要の商売は、ほとんどが無形商材やサービスであり、商品を見せることができる有形商材より「売るのが難しい」からです。
 
私の経験の中では、それに当てはまる商材の一つは「コンサルティング」です。
コンサルタント時代、私の上司だった人物はそれをよく知っており
「コンサル会社で出世したいなら、マーケティングと営業を経験しておきなさい。コンサルティングは売るのが難しい商材で、コンサルティングが売れれば、何でも売れる。」といいました。
 
確かに、私はコンサルティング会社に入社した当時「コンサルティング」という商材を、どのように売っているのか、見当もつきませんでした。
安くても数百万、高ければ数千万から億単位のお金を、コンサルタントに支払う、という価値感覚が、まったく想像できないものだったのです。
なので、私は「コンサルタントは、さぞかし変わった提案をしているのだろう」と、漠然と考えていました。
 
ところが、現実は全く異なりました。
コンサルタントの行っている「提案」は誠に地味なものでした。
営業パーソンをきちんと育成しましょう
マニュアルを整備しましょう
目標管理を行いましょう
手戻りをへらましょう
提案書を読めば、「知ってた」と、誰でも言いそうな内容です。
果たしてこれで、お客さんはコンサルタントを雇おうと思うのでしょうか。

コンサルティングは「アドバイス」を売っているのではない

結論から述べると、これで売れるのです。
なぜなら、コンサルティングは「アドバイス」を売っているように見えて、実はそうではないからです。
 
コンサルティングサービスの本質は、アドバイスではありません。
実は、「リソース提供」なのです。
アドバイスに付随する「実行力」、すなわち「代わりにやってあげる」を売っているのです。
「お客さん先」に常駐し、開発の作業をします。
プロジェクト管理します。
マニュアルのチェックをします。
研修をやります。
といった具合です。それゆえ、コンサルタントの実態を知っている人は、「コンサルタントって、高級人材派遣だよね」といいます。
 
そして、この事実は、前項の話につながります。
アドバイスは「無形」ですが、コンサルタントが提供する労働力はそれにくらべて「有形」であり、お客さんがはるかにイメージしやすい。
実際、コンサルティングの見積書に記載される項目は、「アドバイス料」ではありません。
「人日」「人月」などの、コンサルタントの時間拘束、つまりリソースの提供にたいして料金がかかる、という形式になっています。
 

1.無形の商材は「有形化」する

「アドバイス」ではなく、「代わりにやります」のほうが、売るのは簡単です。
そしてさらに、「マニュアルのひな型」や「研修資料」など、「もの」を見せると、さらに売るのは簡単になります。
これは、私にとって、商売を組み立てるうえで、大きな考え方の転換になりました。
 
例えば、私は「プロジェクトマネジメント」という分野のコンサルティングの立ち上げをミッションとしたことがありました。
システム開発業を中心に、プロジェクトマネジメントがうまくいかないことで、プロジェクトが大きなが赤字を出してしまったり、労働時間が長くなり、人が辞めてしまったり、といったことが頻発していたためです。
 
コンサルティング会社はプロジェクト管理はお手の物です。
ノウハウそのものは、すでに社内に存在していました。
そこで、それを利用して「プロジェクトマネジメントのコンサルティングをします」と、営業をかけたのです。
ところが、残念ながら、ほとんど需要はありませんでした。
既存のお客様をまわって、「プロジェクト管理はとても課題だ」という顧客にすら、売れなかったのです。
 
これには私も頭を抱えました。
いつも言われるのは、「必要なんだけどね……何してくれるの?」という言葉。
「プロジェクトマネジャーに対して、こういったアドバイスをします」という説明をするのですが、これがぴんと来ないようなのです。
ここで私たちもさすがに気が付きました。
「アドバイス」というのは、無形です。
どんな場合に、どのようなアドバイスがあるのか、想像しづらい。

だから、お客さんは、非常に買いづらいのです。

 
そこで私たちは提案しました。
「プロジェクトがうまくいくように、現場の事情に合わせて研修をできますよ」と。
その話をすると、先方の目は輝きました。
「研修の資料を見せてほしい」と彼らは言ったのです。
そこで我々は、今までの経験をもとに、研修資料を作って、先方に提案したところ、「うちで研修をやってほしい」ということになったのです。
同様の提案を、別の顧客にもしたところ、「うちでもぜひ」という会社が数多く現れました。
コンサルティングを、手に取ることのできるカリキュラム、すなわち「研修資料」にパッケージングしたことで、売れるようになったのです。
さらに後日、プロジェクトマネジメントの資格である「PMP」という資格取得補助もサービスの一つに加えたことで、需要は急に伸びました。
「資格取得」は、手に取れる資格証があります。これは、有形化の一つの手段だったのです。
 
冒頭の「おはぎ」の話のように、漠然としたサービスより、手に取れる商品のほうが売れる。これは、商売上の鉄則です。
「つやつやになる髪の洗い方を教えます」というアドバイスを売るよりも、「髪がつやつやになるシャンプー」を売るほうがはるかに簡単です。
「資産形成のアドバイスをします」よりも
「資産形成ノウハウ本」のほうが、はるかに売れます。
「子供の運動神経を高める方法を教えます」よりも
「なわとび」や「ボール」のほうが売れます。
したがって、無形商材を、売れるように改良の検討をするときに、まず考えるべきことは、「有形化する」ことなのです。
 

2.無形商材は、小さく切り出す

実は、無形の商材・サービスを「売りやすくする」方法は、有形化するほかにもあります。その一つが「小さく切り出す」ことです。
小さく切り出すことで、顧客は小さなコストでサービスを「試す」ことができるからです。
 
例えばスマートフォンアプリ。
アプリが提供する便益は無形であり、その多くは使ってみるまで分かりません。
しかし、機能の一部を制限し、小さく切り出すことで、ユーザはアプリの使い勝手を「試す」ことができ、有料のサブスクリプションの契約を狙うことができます。
あるいは習い事における「体験入学」。
料理教室やスポーツクラブなどが提供する便益は、無形で手に取ることができません。
したがって、サービスを小さく切り出して「試す」ことを顧客に提供し、契約の獲得を狙います。
もちろん、本稿「noteの有料マガジン」などもこの部類に入ります。
というのも、導入部分は無料で読めるマガジンが多いからです。
マガジンのもたらす便益は、「無形」に近いため、小さく切り出して「試す」という選択肢を提供せねばなりません。
 
小さく切り出したサービスを積極的に提供し、「試してみてよかったら購入してください」というのは、サービスを売るうえで、古典的ではありますが、「有形化」と同様に、効果的なやり方です。
 

3.無形商材は「誰が売るか」が重要

無形の商材を売りやすくする工夫は、まだあります。
例えば生命保険のケースです。
生命保険は、基本的には無形で便益がわかりにく、その価値を顧客が実感するのが難しいため、売るのが非常に難しい商材です。
自発的に入ってくる人は、まず詐欺を疑え、なんて話もあるくらいです。
また、保険は基本的に、法律の規制が厳しく、商材自体がほとんど差別化できません。「有形化」や「お試し」も商品の特性上、非常に難しいと言えます。
 
では生命保険はどのように売られているのでしょう。
公益財団法人生命保険文化センターの調査によれば、これは圧倒的に「人のすすめ」であることがわかります。(出典:https://www.jili.or.jp/research/report/1297.html)
 
 
上位の理由を見ると、「親身になって説明してくれた」「すすめられた」「知り合いだった」という回答で全体の7割近くを占めています。
 
同様のケースは、コンサルティングを売る時にも見られました。
有形化やお試しが難しいケースには、私の上司は「コンサルティングを売るな。自分を売れ」と指示していました。
そのため、コンサルタントは、顧客との接触頻度を高めることに注力しました。
「単純接触効果」によって、好印象を与えたかったのです。
 
実際、コンサルティングや研修などを買う会社は、アドバイスやコンサルティングの中身よりも、「この人に来てほしい」という理由で契約を結ぶことも多かったのです。
これは、ベテランのコンサルタントだけではなく、新人のコンサルタントに対しても同様の傾向がありました。
「熱心に通ってくれるから」
「頑張ってくれているから」
「親身になってくれたから」
こうした理由で、中小企業の経営者や、企業の担当者がコンサルティング契約を結んでくれることは少なからずあるのです。
 

4.無形商材は「実績」を強調する

無形商材を売りやすくする方法の一つに、「実績」を強調することがあります。
「〇〇社がすでに導入」と数を強調したり、導入企業のロゴをコーポレートサイトや営業資料に入れたり、「あの人も使っています」と著名人を引き合いに出すこともあります。
特に大手企業は「競合がやりだすと、自分たちも始める」という、横並び意識が非常に強いため、実績のあるサービスにますます人が集まる、という現象が起きやすいのです。
 
しかし「実績は、売れたからこそ、強調できるのでは」と思う方もいるかもしれません。
売れていないうちに、この方法をとることはできないのでは、というわけです。
 
確かにその通りですが、実績を作る方法はいくらでもあります。
例えば、知人に無料で利用してもらい、その代わりに販促資料に掲載させてもらう、といったケースや、モニターを募集して、そのコメントを収集するというケースもあります。
 
もちろん、この手法は実際に手に取ってみることができない、「半有形商材」である、ECサイトでの物品販売などにも使われています。
例えば、個人的には、最近、Amazonで購入した商品の一つに、こんなチラシが同梱されていました。
・レビューを書いて投稿し、そのスクリーンショットを送ってくれれば、キャッシュバックします
Amazonは、レビューに対してインセンティブを与えることを禁止していますから、これは、Amazonの規約違反の可能性があります。
しかし、Amazonがそのすべてをチェックできるはずもありません。
その商品には、数百のコメントが集まり、その多くが「星5」をつけていたところを見ると、一定の効果があるのでしょう。
 

5.無形商材は「情報量」で勝つ

無形商材は、有形商材と異なり、手に取ってみることができません。
それであるがゆえに、お客さんが購買の意思決定をする際、十分な情報が出ていなければ、その時点で購買の対象から外れてしまいます。
したがって、無形商材の販売には、わかりやすい商品説明をはじめとした、豊富な情報提供が必須となります。
 
・どんな商品・サービスか?
・価格は?
・アフターサポートは?
 
また、無形商材は「売り手」が重要だと述べましたが、売り手に関する情報を積極的に提示することも重要です。
・どんな会社が売っているか?
・どのような理念に基づく商売なのか?
・実績はあるか?
 
あるいは、「利用手続き」なども、顧客へ提供することで、購入へのハードルを下げることができます。
・どうやって申し込めばよいのか?
・解約はできるか?
・質問などはできるのか?
・お試しなどはやっているか?
 
しかし、何より肝心なのは、「今すぐお客さんにならない人たち」、つまり見込み客にも、継続的に情報を提供することです。
そして、見込み顧客へは、サービススペックや売り手の話をする前に、「利用した時のシーンを想像してもらう」ことが重要となります。
・使ってみたら、うちではどうなるのか?
・生活は変わるか?
・考え方はどう変化するか?
 
また、仮にオウンドメディアやECなど、サイト上で集客を行うのであれば、「コンテンツマーケティング」の定石にのっとり、記事で集客することで、豊富な情報を提供している事業者だと認知してもらうことが可能です。
 
以上が無形商材の販売で実績を上げる、5つのマーケティング手法でした。
お役立ていただければ幸いです。
 

 

【お知らせ】
Books&Apps及び20社以上のオウンドメディア運用支援で得られた知見をもとに、実際我々ティネクト(Books&Apps運営企業)が実行している全48タスクを公開します。

「成果を出す」オウンドメディア運営  5つのスキルと全48タスク
プレゼント。


これからオウンドメディアをはじめる企業さま、現在運用中の企業さま全てにお役に立つ資料です。ぜひご活用ください。

資料ダウンロードページはこちら↓
https://tinect.jp/library/5skills48tasks/
メールアドレス宛てに資料が自動送信されます。

 

【著者プロフィール】

安達裕哉

元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。

◯Twitter:安達裕哉

◯Facebook:安達裕哉

◯有料noteでメディア運営・ライティングノウハウ発信中(webライターとメディア運営者の実践的教科書