1. ブランドエクイティとは
1-1 ブランドエクイティの定義
ブランドエクイティとは、企業や製品・サービスが持つ「資産価値」のことです。ブランドエクイティを高めることで、企業や製品・サービスに対する認知度や評価が高まり、それによって売上や利益を伸ばすことができます。
ブランドエクイティの専門家であるDavid Aakerは、著書『ブランド論』にてブランドエクイティを3つの主要な側面から解説しています。
1.ブランド認知
ブランド認知度は、消費者が企業や製品・サービスを知っているかどうかを表します。高い認知度を持つことで、新規顧客獲得につながります。
ブランド認知は見方や好感度、態度に影響し、顧客はなじみのある商品を好みます。
これは高額商品や耐久消費財の購入において重要な属性のシグナルとなり、認知度が高いと購入プロセスでブランドが選ばれる可能性が増します。
2.ブランド連想
ブランド連想とは、顧客にブランドを連想させる様々な要素であり、顧客関係や購入決定、使用経験、ブランドロイヤルティの基盤となります。
ブランド連想を決め、強化し、ブランドに結びつける計画は、ブランド資産のマネジメントにおいて重要な仕事です。
3 ブランドロイヤルティ
ブランドロイヤルティは、消費者が企業や製品・サービスに対して忠誠心を持っているかどうかを表します。
ロイヤルな顧客は、価格が高めでもその企業や製品・サービスを利用し続けます。そして、口コミや共感を広めることで、新たな顧客を開拓する役割を果たします。
参考文献-David A. Aaker, ブランド論 ダイヤモンド社
1−2長期的なブランドエクイティの重要性
なぜ、ブランドエクイティが重要とされるのか。
例えば、アップル社の例です。インターブランド社の「Best Global Brands 2022」によると、アップルは常に世界のNo.1ブランドにランクされています。
イノベーション、デザイン、カスタマーエクスペリエンスに対する同社の取り組みは認知、連装、ロイヤリティのいずれの分野においても、強力なブランドエクイティを築き上げたと言えるでしょう。
消費者は、アップルの製品が高品質で信頼性が高く、使い勝手が良いという信頼を寄せており、それはエクイティ(資本)そのものであるといえます。
さらに、ブランドエクイティが強固な企業は、その分野での競争力を保持することができます。なぜなら、顧客は強いブランドから得られる信頼と忠誠心に対してプレミアムを支払う傾向があるからです。
このことは、競争が激しく、顧客がさまざまな選択肢を持つ分野では特に顕著になります。強力なブランドによって、企業は競合他社と差別化することができ、それによって顧客を引き付け、維持することができるのです。
例えば、スターバックスの例を見てみましょう。Food Business Newsによると、スターバックスは世界で最も価値のあるレストランブランドです。
過去6年間、最も価値のあるレストランブランドの中でトップの座を守ってきた1位のスターバックスは、このカテゴリーにおけるその地位をさらに強固なものにしました。
Brand Financeの調べによると、スターバックスのブランド価値は2022年までに17%増加し、534億ドルに達し、2番目に価値の高いレストランブランドであるマクドナルド社との差を広げたといいます。
そして何より、長期的なブランドエクイティの育成に欠かせないのが、一貫性です。
例えば、高品質の製品やサービスを長期にわたって提供し続ける企業は、顧客から信頼と信用を得ることができます。
例えば、トヨタ自動車はその典型的な例です。トヨタは、自動車の品質、耐久性、信頼性で高い評価を得ています。コンシューマーレポートによると、トヨタは常に最も信頼できる自動車ブランドの1つにランクされています。
この一貫した高い品質が、トヨタの強いブランドエクイティの形成に貢献しています。
1−3ブランドエクイティ構築のためのソーシャルメディアとコンテンツ・マーケティングの活用
しかし、ブランドエクイティの確立は、一筋縄では行きません。
というのも、消費者の心の中にポジティブなイメージを醸成することは、持続的な取り組みが必要だからです。
そのため、「一過性ではない」ソーシャルメディアとコンテンツマーケティングは、広告以上に、企業がブランドエクイティを構築するために不可欠なツールだと言えます。
例えば、ソーシャルメディアは、ブランドを人間らしくするための効果的な手段です。
ソーシャルメディアは、ビジネスの舞台裏を垣間見ることで、企業が顧客と親近感を持ち、真のつながりを築くのに役立ちます。
さらに、コンテンツマーケティングは、ブランドエクイティの構築に不可欠です。
製品やサービスに関する価値ある情報を提供することで、企業は顧客に対して教育をおこない、情報に基づいた意思決定を支援することができるからです。
さらに、手際の良いコンテンツマーケティングは、企業が顧客の注目を集め続けるのに役立ちます。
常に価値あるコンテンツを提供している主体は、業界のオピニオンリーダーとして位置づけられますから、ターゲットオーディエンスの頭の中に常にブランドを新鮮に保つことができるのです。
このような一貫したコンテンツ制作は、エンゲージメントと顧客ロイヤリティの向上につながります。
2.ブランドエクイティと成功の測定法
しかし、「我社はブランドエクイティの獲得に成功した」と、どうすれば言い切れるのでしょう。
無形であるがゆえに、企業のブランディング戦略において、ブランドエクイティと成功指標の測定は不可欠です。
成功指標の定義と、正確な測定は、企業のブランディング戦略の有効性を評価し、ビジネス目標を達成できたかどうか、そしてブランドを改善するためにどのような調整が必要なのかを知ることができます。
以下では、企業がブランドエクイティと成功指標を測定するために使用できるさまざまな戦略やツールについて説明します。
2−1ブランドエクイティと成功の測定基準を決定する
企業がブランドエクイティと成功の測定プロセスを開始する前に、まず目標と目的を定めなければなりません。
例えば、ブランドエクイティの測定に用いられる代表的な目標には、顧客維持、顧客獲得、市場シェア、顧客満足度などがあります。
これらの指標を長期的に精査することで、企業は自社のブランドエクイティをより深く理解し、今後のブランディング戦略についてデータに基づいた意思決定を行うことができます。
例えば、顧客維持率を向上させたい企業は、顧客ロイヤルティプログラムを導入することが考えられます。成功例は、スターバックスのリワードプログラムです。このプログラムは、スターバックスで頻繁に買い物をするお客さまに、特典や割引、限定商品を提供することで、リピート購入のインセンティブを与え、顧客ロイヤルティを向上させるものです。
顧客獲得を測定するために、企業はデジタルマーケティングキャンペーンを活用することができます。これは、検索エンジン最適化、ペイパークリック広告、ソーシャルメディアマーケティングを含みます。
特に顧客維持について、GoProのユーザー生成コンテンツ・キャンペーンはその好例です。
このキャンペーンは、顧客にGoProのビデオをシェアしてもらい、賞金を獲得するチャンスを得ることを奨励しました。このキャンペーンは、ブランドの認知度を高めただけでなく、顧客獲得の急増にもつながりました。
市場シェアについては、競合分析ツールを使って、市場における自社の立ち位置を把握することができます。例えば、SEMRushはマーケットエクスプローラーツールを提供しており、企業は競合他社と比較して自社の市場シェアを分析することができます。
最後に、顧客満足度は、顧客満足度調査やネットプロモータースコア(NPS)などの手法で測定することができます。Qualtricsのようなツールは、顧客満足度を測定し、実用的なインサイトを導き出すための強固なプラットフォームを提供します。
具体的な目標を設定し、これらの戦略を採用することで、企業はブランドエクイティを効果的に決定し、ブランディングの成功度を追跡することができます。
2−2成功を測定するためのツールと方法
ブランドエクイティの評価は、さまざまなツールや方法を用いて行うことができます。
一般的なアプローチは、顧客調査です。この調査は、ブランド、製品、およびサービスに関する顧客の貴重なフィードバックを企業に提供するものです。この情報は、企業がブランディング戦略について十分な情報を得た上で意思決定を行う上で役立ちます。
具体的な顧客調査ツールの例として、SurveyMonkeyはブランドエクイティ調査のテンプレートを提供しています。企業はこのテンプレートをカスタマイズして、顧客から関連データを収集し、自社ブランドがどのように受け止められているかについての洞察を得て、改善のための領域を特定することができます。
企業の成功度を測るもう一つの方法は、ソーシャルメディア分析です。「いいね!」、「シェア」、「コメント」、「フォロワー」などの指標を追跡することができます。
そこでは、オーディエンスの属性やコンテンツへのエンゲージメントを把握することができ、企業のコンテンツマーケティング戦略の微調整に役立てることができます。
この目的のための具体的なツールは、Sprout Socialです。このツールは、ソーシャルメディア分析の包括的なツールを提供し、オーディエンスのエンゲージメント、リーチ、人口統計に関する洞察を提供します。企業はこれらの洞察を利用して、ソーシャルメディア戦略を改善し、ブランドエンゲージメントを向上させることができます。
2−3情報に基づいた意思決定を行うためのデータ分析
データ分析は、ブランディング戦略について十分な情報を得た上で意思決定するために不可欠な行為であり、企業が将来のブランディング戦略に関してデータ駆動型の意思決定を行う際にも役立ちます。
例えば、Google My BusinessやTrustpilotなどのプラットフォーム上のカスタマーレビューを通じて、顧客からのフィードバックを分析することができます。ReviewTrackersのような企業は、さまざまなプラットフォームからの顧客フィードバックを集約・分析するツールを提供しており、企業が顧客感情を理解し、改善すべき領域を特定するのに役立ちます。
ソーシャルメディア分析も不可欠なツールです。Hootsuiteのようなプラットフォームは、包括的なソーシャルメディア分析を提供し、企業はオーディエンスのエンゲージメントと感情を理解し、成功したコンテンツを特定し、フォロワーの増加を追跡することができます。
さらに、販売データから、顧客の購買行動に関する重要な洞察を得ることができます。Tableauのようなツールは、販売データを可視化し、トレンドの特定、機会の発見、販売戦略に関するより多くの情報に基づいた意思決定を支援します。
これらのツールを活用することで、企業は顧客のフィードバック、ソーシャルメディアのエンゲージメント、および販売データを徹底的に分析することができます。これにより、ターゲットとする顧客層や、彼らの購買意欲を高める要因について、より深く理解することができるようになります。
例えば、ある企業が、ある製品の売上が、カスタマーレビューの好意的な評価によって大幅に増加することを発見したとします。
その場合、レビューと引き換えに次回購入時に割引をするなど、カスタマーレビューの増加を促進する戦略をとることができます。
つまり、データ分析は、企業がブランディングの取り組みについて、情報に基づいた戦略的な決定を下すために必要な洞察を提供するものです。このデータを継続的にモニタリングし、分析することで、企業は常に戦略を練り直し、ブランドエクイティを高めていくことができるのです。
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(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)
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【著者プロフィール】
安達裕哉
元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。
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