SEOにおける「記事の寿命」を、検索エンジンからのアクセス数を見て判断する

このコンテンツは有料note「webライターとメディア運営者の、実践的教科書(安達裕哉著)」より転載しています。


SEOを行う上で一つの重要なテーマは「記事の寿命」です。
記事の寿命というのは、いうなれば「賞味期限」にも似た概念で、どの程度インターネット上で一つの記事が読まれ続けられるか、という話です。
 
記事の寿命は、メディア運営上の様々な意思決定にかかわります。

例えば、

・記事をリライトすべきか、新しいテーマで書くべきか
・記事はどの程度の期間でリライトしたほうがよいのか?
・今後のアクセス推移は?
・どの程度、新しい記事を作ればよいか?
といった疑問に対しては、「記事の寿命」を知らなくては答えることができません。
 
そこで本記事においては、様々なメディアサイトの「検索エンジンからのアクセス数の推移」を見ることで、記事の寿命がどの程度なのかを推定します。
 

事例1 Books&Apps

まずはBooks&Appsを取り上げます。
・毎日1~2記事更新
・ビジネス系コラムが中心
・SEO対策は未実施
・記事のリライトは無し
 
以下が、4/27日現在の、過去3か月の検索エンジンからの流入数と、前年同月の検索エンジンからの流入数の推移です。
Books&Appsは、Googleの検索アルゴリズム変更の影響で、この1年で検索エンジンからの流入数が20万PV→10万PVと、半減しました。
専門サイトではなく、雑記・コラムサイトであること、SEO対策を施していないことなど、Googleを無視してサイト運営を進めてきた結果です(笑)。(SEOを重視するサイトでは、決して真似をしないでくださいませ)
 
では、1年前検索上位TOP50のキーワードがどの程度、アクセスを失ったかを
見てみましょう。
3列ありますが、左から
・検索キーワード
・2021年2月~4月のアクセス数
・2020年2月~4月のアクセス数
となっています。
赤とオレンジは、アクセスが下がったキーワード、青が成長したキーワードです。厳密には、
赤……前年比でアクセス10%未満になったキーワード
オレンジ……前年比でアクセス10%~100%未満となったキーワード
青……前年比でアクセスが100%以上となった(伸びた)キーワード
となっています。集計すると
赤  24キーワード
オレンジ 20キーワード
青  6キーワード
となり、全体の約5割のキーワードが、1年間でSEO上の「寿命を迎え」、全体の4割のキーワードが右肩下がりということになります。
これは、SEOのアクセスを保つためには、検索経由アクセス上位記事のほぼすべての入れ替えを検討せねばならないことを意味します。
 
ただ、これだけを見れば、「Books&Appsは検索流入が低下したから、ほとんどのキーワードの入れ替わりは当然」という見方もあるでしょう。
 
でも、本当にそうでしょうか?
では、以下からは「検索流入の成長しているメディア」の事例をいくつか見てみましょう。
 
 

事例2 システム開発企業

次に、システム開発業を営む、とある企業のメディアです。
・毎日1~2記事更新
・業界トレンド、専門コラム中心
・検索流入が全体の9割以上を占め、SEO対策を施している
・記事のリライトは無し
 
Books&Appsと異なり、ほとんどすべてのトラフィックを検索エンジンに依存しているため、ガチガチのSEO対策を施している企業のメディアですが、全体の推移は以下の通りです。
2021年は2020年比で5%程度の成長と、堅実な数字で、現在、月間のPV数は約16万PVです。
では、このようにPVが微増しているメディアの場合、どの程度上位キーワードの入れ替わりが起きているのでしょう。
それが以下です。
こちらもBooks&Appsと同様に集計すると
赤  15キーワード
オレンジ 24キーワード

青  11キーワード

となります。
驚くべきは、アクセスの変動がほとんどないサイトですら、上位キーワードの8割にアクセス低下がある点です。
結果として、全体の約3割のキーワードが、1年間でSEO上の「寿命を迎え」、さらに全体の5割のキーワードが右肩下がりとなりました。
これも、Books&Appsと同様に、SEOのアクセスを保つためには、検索経由アクセス上位記事のほぼすべての入れ替えを検討せねばならないことを意味します。
 
 

事例3 トイレタリー製品の製造・販売業

では、3番目の事例です。
こちらはトイレタリー製品の製造・販売を行う企業メディアです。
・週に3記事更新
・専門コラム中心
・検索流入が全体の3割を占め、ニュースサイトからのリファーラルが多いが、SEO対策も施している
・記事のリライトは無し
 
こちらは他メディアからのリファーラル獲得に注力する一方で、堅実にSEO対策を施し、アクセスの下支えを行っている企業メディアです。
ご覧の通り、1年間でアクセスが3倍以上の伸びを見せ、現在検索流入が著しく伸びています。
では、このように著しく伸びているサイトのキーワードの入れ替わりは起きているのでしょうか。
こちらも上の2つと同様に集計すると
赤  16キーワード
オレンジ 22キーワード
青  12キーワード
となります。
ご覧いただいた通り、アクセスが大きく伸びているサイトであっても、上位記事は安定しているわけではありません。
上位キーワードの8割にアクセス低下が見られます。
結果として、全体の約3割のキーワードが、1年間でSEO上の「寿命を迎え」、さらに全体の4割以上のキーワードが右肩下がりとなりました。
これは2番目にご紹介したサイトとほぼ変わらない挙動です。
 
 

事例4 不動産業

では最後に、不動産会社が営む企業メディアです。
・毎日1~2記事更新
・専門コラム中心
・検索流入が全体の9割以上を占め、SEO対策で流入を伸ばす方針
・記事のリライトは無し
 
こちらのサイトもガチガチのSEO対策によって、大きく流入を伸ばしてきたサイトです。
1年間でサイトのアクセスは約10倍となり、現在も成長中です。
特に、表示回数の増加も著しいですが、クリック率(CTR)も大きく伸びたことで、流入10倍を実現しました。
 
では、このように圧倒的な成長を見せるサイトにおいても、キーワードの入れ替わりはあるのでしょうか。
こちらも上と同様に集計すると
赤  6キーワード
オレンジ 13キーワード
青  31キーワード
となります。
アクセスが10倍以上になったサイトであれば、上位記事はほぼ固定ではないかと推測していましたが、どうやら大きく伸びているサイトであっても、上位記事は安定しているわけではないと言えます。
圧倒的に伸びたこのサイトですら、上位キーワードの約4割にアクセス低下が見られるからです。
 
結果として、全体の約1割のキーワードが、1年間でSEO上の「寿命を迎え」、さらに全体の3割のキーワードが右肩下がりとなりました。
ただし、このサイトはアクセス上位4キーワードを守り切っただけではなく、さらにアクセスを伸ばせたため、10倍という大きな成長ができたのです。
 

実は、SEOで「安定」はない

では、この結果はなにを意味するかと言えば、明らかにこれは「SEOで安定はない」という事実を示します。
伸びているサイトであっても、
・上位キーワードの1割~3割は、1年もたたず、寿命を迎える
・上位キーワードの3割~4割は、1年程度でアクセスが減少に転じる
ということになります。
 
まとめると、
〇4割の上位キーワードは、1年以内に入れ替わると考えたほうが良い
〇常に新規の話題とキーワードを模索すること。
〇記事のアクセスを維持するなら、上位記事は長くても半年程度でメンテナンス
という活動が必須であることがわかります。
「アクセスが伸びにくくなったから」と言って、新しい記事の発行を止めてしまったり、上位記事を放置していると、検索エンジンからの流入は徐々に減っていくのです。

 

【お知らせ】
現在ティネクトではChatGPTを活用したマーケティング業務の内製化をテーマとして社内勉強会を行っております。


【概要】
様々な使われ方をされているChatGPTの事例を紹介しわかりやすく分類した上で、実際にマーケティング現場で活用されている実践例を紹介

【目的】
マーケティング業務にChatGPTを活用するためのヒントを与える

【内容】
1.ChatGPTの使い方4つの分類(10分)
2.Webマーケティングの役割は2つしかない(5分)
3.オウンドメディアコンテンツ作成にChatGPTを使った事例 (15分)
4.3.ChatGPTを経営課題の解決に使う:「顧客理解」のための9steps(15分)
4.Q&A(15分)


お申込み詳細・ご相談は こちら「ChatGPTを活用してマーケティングを内製化するための勉強会のご案内」ページをご覧ください

(2024/2/22更新)