Books&Appsが実践している、記事タイトルのつけかた。

このコンテンツは有料note「webライターとメディア運営者の、実践的教科書(安達裕哉著)」より転載しています。


Books&Appsの読者の方から、「タイトルをどうやってつけているのですか?」と聞かれることが、かなりあります。
率直に言うと、この疑問にたどり着いた方は「結構考えている人」ではないかと推測します。
タイトルの決定は簡単そうに見えるのですが、実は、記事を書く中で最も難易度が高い作業の一つであり、また記事のビュー数を大きく左右する、重要な作業でもあるからです。

 

ということで、今回は「Books&Appsが実践している、記事タイトルのつけかた」について書きます。
あくまで我々が実践しているやり方ですので、使う方に合わせてカスタマイズしていただければと思います。

 

さて、まず「タイトル」が記事において果たす役割ですが、これは料理で言う「盛り付け」と考えてください。
「なーんだ、盛り付けか」と思う方もいますが、責任は重大です。というのも、「タイトルがまずければ、せっかくの記事も台無し」になってしまうのです。
良い記事だったとしても、タイトルがまずいと読まれません。
煽っていない記事だったとしても、タイトルがまずいと炎上します。
誠実に書いても、タイトルがまずいと「釣り記事だ」と言われます。
書き手が魂を込めて書いた記事を、タイトル一つでダメにしてしまうこと、それは書き手にも読者にも大きな損失ですので、絶対に避けなければなりません。

 

もちろん、タイトル付けの重要性は、昔から知られていました。例えば新聞や雑誌の見出しや広告のキャッチなどです。
この業界では、キャッチを決めるためだけに、多くの人が議論を重ねており、「コピーライター」という専門の商売があるくらいです。
もちろん、インターネットの時代になっても、それは一緒です。例えば「ヤフー・トピックスの作り方」という本には、13文字という短い文字数で、タイトルを作らなければならない人々の苦労が綴られています。

 

しかし、「タイトルの付け方」が圧倒的に重要になったのは、やはりSNSが広く利用されるようになってからでしょう。
従来であれば、「どのメディアの記事なのか」「どの程度紙面が割かれているか」などの補足情報が、ある程度「読む」「読まない」の判断を補助してくれていました。
しかし、今では人々は、等しくタイムラインに流れてくるタイトルを一瞬見て、「記事のタイトル」だけで、読むかどうかを判断します。
したがって現在、webメディアに関わる人であれば、「タイトルのつけかた」に関心を払わざるを得ません。

 

昔、「人は見た目が9割」という本がありました。個人的には、私は「人は見た目」とは思いません。しかし、
「webの記事を読んでもらえるかどうかは、タイトルが9割」
というのは紛れもない事実です。

 

では、本題に入りましょう。
まず、この文章を読んでいる方の多くは、「タイトル付けの手法」に興味があるのだと思います。(もちろん、だからこの記事を読んでいるのでしょう)
しかし、です。
実はそもそも論から言えば、「どうやってタイトルをつけるか」の前に、「いつタイトルをつけるのか」を気にする必要があります。
なぜでしょうか。

 

端的に言えば、「何が言いたいのか、よくわからない文章」が、あまりにも多いからです。
「何が言いたいのか、よくわからない文章」は、たいてい主題が定まっておらず、キーワードから思いつくままに書きはじめてしまい、あとからタイトルをつけています。結果的に「タイトルと内容の不一致」も発生します。

 

ですが、主題が迷走している文章に良いタイトルを付けることはそもそも不可能です。結局の所、「まずい料理は、盛り付けを工夫してもまずい。」のです。

 

したがって、仮タイトルで良いので、「書き手」は極力、記事を書き始める前に、「タイトル」を決めましょう。
「文章を書く前から、タイトルを見ただけで読みたくなる記事」を目指すのです。そうでなければ、読まれる記事を書くことなど、できません。

 

「タイトルを見ただけで読みたくなる」ようにタイトルをつけることができれば、記事の主張は明確になり、また「良い記事」となる蓋然性も高くなります。また、あとから編集者などがタイトルを検討しなおすのも容易です。
では、「タイトルを見ただけで読みたくなる」をどう実現するか。
Books&Appsでつけているタイトルは原則として、以下の6つの条件を満たすように検討されています。

1.どのような情報が得られるのか、タイトルを読むだけでわかる

現代文の試験を思い出してください。「著者がこの文で何を言いたいのか、50文字以内で書き出せ」という問題があったことを覚えていますでしょうか。
タイトル付けは、それと同じです。国語の問題です。
したがって、タイトルには、文章を読んだ方が得られる情報が過不足なく含まれていなければなりません。
ところが、個人ブログや、企業ブログなどでよくありがちなのですが、「◯◯について」というタイトルを付ける人がいます。
国語の問題からしてもこれはNGですが、実際これは読まれないタイトルの典型です。どんな情報が得られるのか、わかりにくいからです。
もちろん、有名人や大手メディアの書いた記事であれば、一定数は読まれます。
しかし、一介の些末なメディアやブログが「◯◯について」と書いたところで、読者は「何が得られるのか」がわからない。わからなければ、読まれない、それで終わりです。

 

そのため、「◯◯について」ではなく「◯◯について考えたら、◯◯だった」と、結論までタイトルに入れなければなりません。
同じように、「書評(本のタイトル)」や、「◯◯レビュー」なども、情報量が少なすぎて、タイトルとしては今ひとつです。
「◯◯を読んだら(観たら)、◯◯だった」までタイトルに含めなければなりません。
ただ、「タイトルを見ただけで、何の情報が得られるかかわかる」という条件は、プロであっても十分に守りきれていません。
例えば、日経ビジネスに小田嶋さんという有名なコラムニストがいます。この方の文章は非常に面白く、読み始めると止まらないのですが、「タイトル付け」にはいくつか失敗している記事があります。
6/12の記事のタイトルは「鳴らさなかった終了のホイッスル」ですが、このタイトルは意味不明で、小田嶋さんのコラムが面白いと知っている人しか、クリックしないでしょう。
4/26公開の「ジョークが苦手な人間は」という記事もタイトルだけ見ると読みたいと思えない。
実は、記事の後段にでてくる
「ジョークが苦手な人間は大真面目な言葉を粛々と申し述べていれば良い。何も恥じ入ることはない。面白くもないのに笑う必要はない。」
という言葉をそのままタイトルにしたほうが、タイムラインで見かけたとき、ずっと読みたいと思えるでしょう。
これは、裏を返せば、「タイトルは、無理に短くしなくていい」ということです。短すぎて、本来入れるべき情報まで削ぎ落としてしまったタイトルは、失敗です。
新聞や雑誌と異なり、SNSでシェアされる記事は、タイトルが長くても、十分表示されるスペースがあります。
したがって、現在では「短く」という条件は、必須ではないと考えています。

 

中には「Googleの検索結果に全文が表示される文字数(30字程度)まで、短くしなければならない」という方もいます。
ですが、Books&Appsは「情報のわかりやすさ」がまず先にあり、文字数の条件は制約条件の一つ、という程度に捉えておくと良いと考えています。

 

2.誰を対象とした記事か、タイトルだけでわかる

前回「自分ごとの記事しか読まれない」と書きました。したがってタイトルでは「あなたに関係ある記事です」とアピールする必要があります。
例えば簡単なところでは、
「日本人は〜」「男性は〜」などと、主語を大きく取るだけで、読む人を大きく取ることができます。
ただ、この方法はあまり多用できません。中身と相違があると、「釣りタイトル」と言われ、結果的に読者の信用を失ってしまうからです。

 

そこで、別の工夫をします。例えばこの記事。 https://blog.tinect.jp/?p=60174
タイトルは
「いくら頑張っても幸福になれない理由は、幸福の本質が「なる」ではなく「見つける」だから。」
なのですが、記事を書き始める前に、私がつけたタイトルは、
「幸せは、なろうとするものではなく、見つけるもの。」
でした。
どちらのタイトルが優れているかといえば、これは前者であることが明らかです。

 

後者のタイトルは、「誰に向けて」がわかりにくい。「幸せ」という一般的な言葉を議論するだけ、と読み手に思わせます。
それに対して、前者のタイトルは「幸福ではないと感じている人」を対象にしているので、よりターゲットとする読者が明確です。
前回も書いたように、記事は「いかに自分の話と捉えてもらうか」が勝負なので、このような工夫は極めて重要です。

 

3.謎掛けを含む

世の中には「ミステリ好き」が多いです。これは何も、みんなが推理小説が好き、ということではなく、「謎」が含まれているコンテンツは、好奇心から、先を読みたくなるのです。
「ハリー・ポッター」然り。
「進撃の巨人」然り。
「シックス・センス」然り。
つまり、謎を提示し、それを解くために読みたくなる、という心理を利用することが、タイトル付けにおいても重要です。

 

具体的には、「なぜ◯◯なのか?」というタイトルが代表例です。使い古されたタイトルの手法ですが、未だに有効です。
もっとも、こういったタイトル付けを嫌い、末尾に「?」がついている記事をスパムだとみなす向きもあります。

 

また最近では「なぜ◯◯なのか?」という記事が増えすぎて、「煽りではないか」「釣りタイトルだ」と言われることも多く、Books&Appsは「なぜ◯◯なのか?」というタイトルを付けることは、明確な理由がない限り避けています。
では、どうすべきでしょう。

 

例えば、7/4のBooks&Appsの記事
という記事は、「オススメの結果」を読みたくなるよう、読者を誘引しています。
あるいは6/19の記事
も「失敗したときに何が起きたか」を提示して、読者を記事に誘引しています。
このように「〜の結果」や「〜したときの話」、あるいは「〜の正体」「〜の理由とは」「〜の秘密」など、謎を匂わせるタイトルは、非常に使い勝手が良いといえます。

 

4.意外性を含む

「謎」と似ていますが、「意外性」もまた、人の好奇心を刺激します。
例えば以下の2/25の記事です。
記事には「定石」と書いてありますが、一般的に、仕事ができる人はできない人にそれほど優しくはありません。そこであえて「定石」と言い切ることで、意外性を含ませているタイトルです。
また、2/15の記事も同様です。
これも一般的には「今すぐ行動を起こす」→「結果が出る」→「充実する」という流れですが、あえて「結果にかかわらず」と断定することにより、意外性を含ませています。

5.余計な修飾は省く

4.で「意外さ」を強調するために、タイトルに「意外にも」とつける方がいます。
しかし、意外かどうかは、読者が判断しますので、これは間違い、というより余計な情報です。余計な情報はタイトルに含めてはいけません。
したがって「意外な」という言葉は、Books&Appsのほとんどのタイトルから排除しています。
強調しておきますが、これは「短くする」とは全く異なる発想です。「短くする」のではありません。「余計な情報は含めるべきではない」という発想です。
他にも、「絶対」「簡単に」「すぐにやるべき」「びっくり」「驚愕の」「圧倒的」などの言葉は、多くの場合、余計な修飾ですので、入れないと意味がわからないとき、あるいはジョークっぽく茶化したい時を除いて、極力省きます。
現代文の要約問題で、余計な修飾を入れてはいけないのと同じです。

 

また、タイトルには「◯選」「◯%」「◯人」などの数字を使うと良い、といった記事を散見しますが、Books&Appsではそこまで重要ではないと考えています。
また、「いまさら聞けない」「要注意」「ポイント」なども多用されていますが、読者にとっては見飽きている文言です。
記事の内容を正確に伝える際に「入れなければならない」言葉でなければ、省くほうが、読者が読みやすいでしょう。

 

まとめましょう。
「タイトル付け」は、現代文の要約問題と同じです。余計な言葉を含めてはいけません。
どのような情報が得られるのかが分かり、誰を対象とした記事なのかがわかり、好奇心を刺激するように作られている。
それがBooks&Appsが考える「良いタイトル」の正体です。

 

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(2024/2/22更新)