このコンテンツは有料note「webライターとメディア運営者の、実践的教科書(安達裕哉著)」より転載しています。
つい先日のことです。
「既存のお客さん向けの発信」をしたい、という会社がありました。例えばメルマガなどをやりたいようです。
相談に乗ったのですが、色々と示唆に富む話があったので、ここにまとめておくことにします。
*
「メルマガ」とか古くない?と思う方もいるかも知れませんが、
意外かもしれませんが、実は依然として健在で、世の中でそこそこ活用の度合いは高いのです。
実は、Books&Appsでも、こっそりとメルマガをやっています。
(そんなにアクティブではないですが(笑)、適当に登録しておくと、忘れた頃に何か届きます。)
登録者は約1.5万人。これはちょうどフェイスブックや、Twitterのフォロワー数と同等の数字です。
SNSをやっていれば、メルマガなんて必要ないのでは?
と思う方もいるかも知れなませんが、メルマガは重要な役割を2つ、持っています。
一つは、SNSを積極的に活用していない層へのアプローチ。
高年齢層のみならず、若年層にもSNSのアカウントは持っているけど、アクティブに使っていない、という人は少なくありません。
そしてもう一つは「ファンの方々」や、「知り合い」向けの情報発信、つまりクローズドコミュニティに向けての発信を担うという点です。
このように言うと、Facebookでも同じようなことができるのでは?
という方もいるかも知れません。
でも、実は全く異なります。
SNSに流すと、いかにクローズドなページであっても、そこには「他者」の存在があります。サークル的な状態、というべきでしょうか。
ところが「メール」は極めてパーソナルなツールであるとの認識がほとんどなので、「他者を意識した振る舞い」はほぼ皆無です。
したがって、公開情報であるブログやSNSなどでの発信とは異なる特性を持っているのです。
基本的には「迷惑」である
ではメルマガのように、クローズドなメディアを用いた発信をする場合、何がSNSにおける発信とは異なるのでしょうか。
まず最初に重要なのは、コンテンツ云々の前に
「メルマガ配信」は「営業電話」と同様に、基本的には迷惑
と認識することです。
なぜでしょう。
それは、「メール」というプラットフォームが、SNSと異なり「情報発信の受け口」としての利用を想定していないからです。
SNSはフォローを外すのは一瞬ですが、メルマガは「メルマガ解除」の申請をわざわざ送る必要が有ります。
自分の好みの情報だけを優先的に表示するロジックも、メールクライアントには実装されていません。
したがって、いかに中身が優れていようと、メルマガは基本的に「招かれざる客」となる可能性があります。
思い出してください。一度だけ名刺交換をしたような人から、いきなりメルマガが届いたときの気持ち。
「送ってくるなよ」と思いませんか?
そうなると、これは一種のスパムと言ってよいでしょう。
名刺をもらっているからと言って、そこに勝手に営業メールを送り付けて良いわけではないのです。
「でも、歓迎される場合もあるよ」という方もいるでしょう。
もちろんそれは、確率の問題なので、「ない」とはいい切れません。
しかし、多くの人に嫌がられるのと引き換えに、何名からに「喜ばれた」からと言って、それを堂々とやって良い理由にはなりません。
ですからメルマガをやる時は、基本的に「希望者だけ」に配信すべきであることは間違いありません。
コーポレートサイトや、オウンドメディアに「メルマガ登録」のフォームを作っておき、そこに登録した人に流すのであれば、上のような問題は発生しにくいです。
「そうは言っても、過去の名刺を有効活用したい」という方もいるでしょう。
その場合、必ずメルマガの冒頭に、「お詫びと、解除の方法」をきっちり明示し、出来得る限り「スパム認定」されないよう、最新の注意を払うしかありません。
「営業」は厳禁
そして、次にものすごく大事なことなのですが、「営業メール」まがいのメルマガを送りつけてくる企業がありますが、絶対にやらないでください。
確実に、即、スパム認定されます。
では何を書けばよいのかといえば、当たり前ですが「読み手が喜ぶ内容」に限ります。
といっても
「情報提供に徹するんでしょ?商品じゃなく、お客さんのニーズや悩みを解決する内容だよね?」
と早とちりする人がいますが、勘違いしないでください。
基本的に、メルマガの受け手は、あなたの会社の商品や、情報なんてほしくないです。
これは簡単に証明できます。
例えば朝、あなたがスマートフォンで見た情報は、他社の商品に関連する情報ではないでしょう?
「ニュース」とか「面白そうな話題」とか「話題になっていること」ではないですか?
会社について、PCのメールクライアントを立ち上げて、他社の商品に関連する情報を読みましたか?
読みませんよね。自分の業務のメールだと思います。
要するに、「情報提供」という名目で、営業しても無駄だ、ということです。世の中の大体のメルマガを送りつける側は、そこを完全に勘違いしています。
「じゃあ、読み手は何を喜ぶんだよ」と思いましたよね?
はい。ですから、上に書いたとおりです。
「ニュース」とか「面白そうな話題」とか「話題になっていること」
です。
メルマガの内容はまさにそれを書かなくてはならない、ということになります。
営業しないメルマガとは
例えば、私がそれなりに楽しみなメルマガの一つに、海外のwifiルータのレンタルをやっている、グローバルwifiのメルマガがありました。
ちょっと前まで取締役の中本さんという方が自ら(?)書いていたメルマガがなんというか、味があったのです。
こんな書き出しでした。
いつもグローバルWiFiをご利用いただきましてありがとうございます。株式会社ビジョン 取締役兼コールセンターオペレータ兼メルマガライター中本新一で御座います!いつも大変お世話になっております。さて、安達裕哉 様普段のご旅行・ご出張の際のお楽しみは、皆様それぞれかと思いますが、私、結構機内食が楽しみです。17歳で初めて海外に行ったとき、感動しました。空でご飯が食べれるなんて(*´ω`*)いきなりですが中本がお贈りする機内食特集に突入させていただきます!フィリピンに行った時の、チキン!とても美味しいです♪少し辛めのソースが絶妙です♪
で、機内食の写真がずらずらと並び……
こんな感じでメルマガが終わります。
※弊社スタッフの移動は社長含め原則エコノミーです!-失礼しました。色々機内食の思い出を語らせていただきましたが(というか没頭してしまいましたが)、私以外にも、現地通信会社との交渉や、機器の調達など、多くのスタッフが世界中を飛び回っておりますが、、海外へ出張へ行くスタッフには、メルマガをご覧いただいている皆様にお土産を買ってくるようにと、常々伝えてあります( ̄ー+ ̄)時には皆様へのプレゼント企画を開催させていただくかもしれないこのメルマガ、次回からもどうぞお楽しみに!(していただけたら嬉しいです^^)
全然営業してない……!
すると、まあ何のために送ってきたのかという話なんですが、最後に少しだけ
毎度お馴染みの、メルマガ特典(ご利用総額から5%割引+受渡手数料系540円無料)、もちろんご継続でございます!特典付きのお申込みはこちらから!http://global-wifi.jp/stp6bzemail
という、営業の一文があって、これでおしまいです。
実際、このメルマガは結構楽しみしていて、実際に海外に行くときも、ここからクーポンを発行して、申込みをしていました。
ただ、そのあと、中本さんが忙しくなったのか、しばらくはクーポンだけを送りつけてくるようなメルマガが続き、購読しなくなってしまい、今ではスパムフォルダに行くことになってしまいました。
ただ、中本さんのメルマガはほんの一例に過ぎないのですが、メルマガの本質を示しています。
それは営業してはならない、そして「個人」を感じるものにしなければならない、ということです。
それに比べれば、中身の話は些細なことです。
正直なところ、メルマガの文章は、「ずば抜けて面白い」必要は全くありません。
それよりも「この人、マガジンを一生懸命面白くしようとしているな」とサービス精神を感じれば、それで良いのです。
メルマガは「学級新聞」
ただ、グローバルwifiのメルマガにも良くないところが2点あります。
一点目は、タイトルが全部、
”こんにちは、グローバルwifiです!”だということ。
中身がわからないと、わざわざ開ける気にはならない人も多いでしょう。
メルマガのタイトルは記事のタイトルと同じく、めちゃくちゃ重要なので、良く練ったものにしなければなりません。
二点目は、話題の選定についてです。
前述したように、メルマガのコンテンツはずば抜けて面白い必要はありませんが、「読者の興味」の対象でなくてはなりません。
海外に行く人にとって、機内食は興味がないわけではないですが、朝の忙し時間にわざわざ読むようなものではありません。
では何を書けばよいのか?
例えば、海外に行くような人に喜ばれる情報だと
「鉄板で喜ばれるお土産」や
「現地でのトラブルを解決した話」もいいかもしれません。あるいは
「空港の中のお勧めスポット」などもアリです。
メルマガは要するに「学級新聞」と考えてください。
タイトルは新聞の「見出し」です。
中身は新聞の「記事」です。
そう考えて運営すれば、自然とメルマガのコンテンツは決まります。
ちゃんと読んで貰えるメルマガの頻度は「月1〜2回」
最後に頻度の話です。
ちゃんと読んでもらえるメルマガの頻度は、だいたい月1回〜2回です。
それ以上は、読者に「煩わしい」と感じさせてしまう可能性が高く、おすすめできません。
手抜きのメルマガを週に何通おくっても、どうせスパム扱いされるだけです。
思い切ってメルマガの数を減らし、一筆入魂のメルマガを、きちんと運営することを、強くおすすめします。
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【著者プロフィール】
安達裕哉
元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。
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