「人間より賢いAI」と働くということは、どういうことか。

このコンテンツは有料note「webライターとメディア運営者の、実践的教科書(安達裕哉著)」より転載しています。


11/22に、生成AI活用に関するカンファレンスを開催しました。
カンファレンスのテーマは大きく3つ。
1.生成AIは今後、どのように経営を変えるか?
2.生成AIに対する企業経営者・管理者の認識は?
3.生成AIの業務での実際の使われ方は?
内容に興味がある方は、私のTwitter(X)のアカウントで、ダイレクトメッセージをいただければ、個別にお話していますので、(https://twitter.com/Books_Apps)気軽に声をかけてください。
 
さて、そのカンファレンス後に話として大きく盛り上がったのが、「人間より賢いAIと働くとは、どういうことか」でした。
というのも、仕事でAIを使い込んでいる方々から「すでに局所的には、上司/部下よりもAIのほうが優秀だ」との意見が散見されたからです。
 

コンサルタントの仕事は9割、AIで代替化能

特に、コンサルタントのようなホワイトカラーの仕事は、かなりの部分、AIで代替可能になりつつあります。
例えば「コンサル一年目が学ぶこと」を引き合いに出してみましょう。
この中で、特に重要なのは2章です。というのも、コンサルタントの仕事において、最も価値を求められる部分が「仮説を設定すること」だからです。
求められた成果を上げるときに、コンサルタントはまず「仮説」をもとに「ストーリー」を作り、それを数字やインタビューの結果をもとに検証する、と言う手法を採用することが多いのです。
ではコンサルタントが仮にクライアントから「2030年に、生成AIはどのような影響を経営戦略と雇用に与えるか。それに対する適切な打ち手は」という宿題をもらったとしましょう。
なお、比較対象として、「ビジネスへの生成AIのインパクト」と言うテーマ対するマッキンゼーのレポートはここに提示されています。
マッキンゼーの提示したユースケースは際立ってはいませんが、妥当なものであると感じます。
 
 
では、ChatGPTに同じことをやらせてみましょう。

まずは最初の指示です。

このラインより上のエリアが無料で表示されます。
ChatGPTに仮説を設定させます。ここでは4種類を「シナリオ・プランニング」の手法を用いて考察させました。
ChatGPTによれば、4つのオプションが存在し、それらは同時に実現することも考えられます。
 
では、そのシナリオが実現した時、「マーケティング・セールス」領域はどのような変化を遂げるでしょう。ChatGPTに記述させます。
シナリオ2とシナリオ3にはあまり差は見られませんので、ChatGPTに再作成を指示することもできますが、初手でこのくらいのクオリティのレポートを上げることができれば、十分及第点と言えるでしょう。
 
では、このレポートをもとに、「コンサルティング業界にはどのような打ち手があるか?」を提案させます。
実際に、コンサルティング業界が行っていることは、ほぼ網羅されていることがわかります。
欲を言えば「面白さ」は足りないと思いますが、「もっとユニークな切り口を」と要求すれば、それなりのクオリティでChatGPTはアイデアを出してくれます。
シナリオ2で示された「AIを使って顧客から物語を生成、マーケティングキャンペーンに統合」はなかなか面白いアイデアです。
具体的な事例が伴えば、提案として通る可能性もあります。
 

ChatGPTはリリースされて「まだ」1年しか経っていない

上のChatGPTによる出力を見て、「それでもまだ人間のほうが上……」と思う方もいるかもしれません。
しかし、着目すべきは、ChatGPTがリリースされてから、まだ「1年」しか経っていないという点です。
 
例えば、2000年代の経済をけん引した、iPhoneを振り返ってみましょう。
iPhoneが発売されて1年と言うと、iPhone3Gが出た頃です。当時はまだスマートフォンは「物好き」が買うものであり、「フルブラウザが使える」という理由で購入に至った人が多かったと思います。
それから約15年で、スマートフォンがこれほど普及し、かつ生活の隅々まで入り込むと誰が予想したでしょう。
性能面や、使い勝手の良さ、普及の度合いやアプリケーションの豊富さなどは、当時と比べるべくもありません。
 
リリース1年でこの能力ということは、現在想像しうる、ホワイトカラーの仕事は、ほぼ完全に代替可能と考えるほうが、自然ではないかと感じます。
 

近い将来「AI管理者」や「AI先輩」に教わる日が来る

そもそも、AIは人間に比べて、はるかに大量の情報を扱うことができますから、人間に仕事を教えることも可能でしょう。
実際に私がここ3か月で60社程度へのインタビューをした結果、人材不足の業界では、もはや「AIが社員を代替する」ことは、夢物語ではないと感じます。
特に、以下のようなユースケースでは、すでに現場で利用の検討が始まっています。
・新人にきめ細かく教えたいが、人も時間も足りない
・案件が多すぎて、どのお客さんから行くべきかわからない個人の主観で決めている
・採用がむずかしい。パフォーマンス予測できない
 
例えば、愛知県の自動車部品メーカーでは、社内に蓄積された「カイゼン」のアイデアを、ChatGPTに吸収させ、Slackから質問をすると、それに対して適切な解答をする、というボットを作っています。
 
東京のAIプロダクト開発会社では、notionAIなどの、タスク管理ツールに設定されたタスクを、ChatGPTに読ませ、slackを通じて、「ツッコミ」を入れる、疑似的な管理者を社内に設定しています。
 
東京の神田にある、税理士事務所では、補助金申請を支援しています。
その事務所では「補助金申請のための資料づくり」をChatGPTに支援させています。
ChatGPTに、補助金の公式サイトを読み込ませ、そこから「満たすべき要件」をChatGPTにアドバイスさせるのです。
 
これらの事例は、一昔前であれば、「人間しかできないこと」とされていました。
しかし、現在は大量の情報処理を伴う、複雑な意思決定は、人間の専売特許ではなくなったのです。
ゆえに、「大量の情報処理」を得意としていたコンサルタントのような仕事が、真っ先に代替される可能性が出てきた……という事です。
 

「AI社長」はスタートアップなど、身軽な組織で必ず出現する

いや、コンサルタントだけではありません。近い将来「AI社長」が出現することも、全く想像の枠外ではなくなりました。
実際、大企業の経営者たちに匿名で話を聞いたところ、「自分の仕事もAIで代替可能だ」と吐露する経営者も少なくありませんでした。
(以下、経営者たちのコメント)
・目分量経営でなくなるのは、良いと思う。経営者たちの計算能力が追い付いていないだけ。
 
・過去問を解いて、パターン認知して、回答を出せるようになった人たちは、生成AI に対するリスキリングがキツイ
 
・短期の売り買いを中心とした金融領域では、1年以内に、人間が作ってきた勝ちパターンが崩壊する
 
・北半球の人口は減っていくので、代替はマスト
 
・経営陣そのものが、「自分の身を守る」ために必死になっている
 
・「人間しかできない仕事」は今のところないと言っても良い。
 
また、大手企業では、「人間優位」を押し通す経営者は残るでしょうが、スタートアップはそう言ったしがらみがないため、「合理性の塊」であるAIに指揮をとらせる会社は必ず出てくるでしょう。

「人間より賢いAI」と働くということは、どういうことか。

では、最初のテーマに戻りましょう。
「人間より賢いAI」と働くということは、どういうことか。
それは、「コンサルタント的な「情報処理」「パターン認識」」の仕事には価値がなくなり、AIが学習していない「現場」で生み出された、リアルタイムの知見が価値を持つという事です。働き方も大きく変わるでしょう。
試行錯誤と、現場での仮説検証のほうが、AIの生み出す「コンセプト」より価値がある。
これは覚えておいて損はないと思います。

 

 

 

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【著者プロフィール】

安達裕哉

元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。

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