Books&Appsは、なぜ運営母体の本業と関係のない記事ばかり発行しているのか。

このコンテンツは有料note「webライターとメディア運営者の、実践的教科書(安達裕哉著)」より転載しています。


webメディアBooks&Appsの運営母体は、ティネクト株式会社という会社です。
10年ほど前にBooks&Appsとほぼ同時期に立ち上げた会社で、主たる業務は「オウンドメディアの運営支援」および「記事・動画などのコンテンツ制作」です。
しかし、ご覧いただいてわかる通り、Books&Appsの内容は、運営母体である、ティネクトの業務内容と直接は関係ありません。
 
一方で、オウンドメディア支援などを行っている同業他社の事例を見ると、ほぼすべての会社は「マーケティング」や「メディア」、「コンテンツ制作」など、業務に直接かかわる情報発信ばかりをしています。
 
そのため、我々はお客さんから「なんでマーケティングの記事を書かないの?」と言われることがしばしばあります。
なぜBooks&Appsは自社の業務に、一見すると無関係な記事を発行し続けているのでしょう。
 
 
一方、実はBooks&Appsは多くの営業案件を生み出しています。
事実、Books&Appsは、年間2000件近くのコンバージョンを生み出し、その1/3以上の会社が、3年以内に、営業案件化しています。
したがって、究極的には「自社の事業にプラスだから、やっている」と言えるでしょう。
ただし同業他社のようなやり方ではありません。
 
例えば、昨年12月に、私は以下の記事を出しました。
しかし、普通に考えて、以下のような記事を読みに来た人にオウンドメディア支援やコンテンツ制作のニーズはないはずです。
 
採用をしていると、「この方は、「仕事やってるフリ」ばかりしてたのでは」と感じるときがある。
特に、仕事の成果について聞くとき、これは顕著だった。
 
対照的なのが、本noteマガジンです。
こちらで発信している内容のほうが、はるかに本業と重なります。
むしろ、このnoteマガジンの内容を、Books&Appsで公開すべきだというご意見をもらう時もあります。
 
つまり、話の核心は、「なぜ、本業と無関係なコンテンツばかりのBooks&Appsから問い合わせが発生するのか」という話になります。
 

なぜBooks&Appsから問い合わせが発生するのか

結論から申し上げますと、以下の話が、とても分かりやすいと思います。
流れてきたツイートに「バズったら宣伝」と紹介されてたお菓子があまりにも美味しそうで、母に見せたところ「買おう!」とノリノリだったので衝動買いしてしまった。「バズったら宣伝」にホントに釣られたのは初めてだなあ
— メケコ (@mekeco_mix_in) January 17, 2022
Twitterは、ツイートがバズったら、それとは無関係に、自分の宣伝をして良い、という不思議な文化があります。
それと同じです。
つまりBooks&Appsは「バズったら宣伝」を、地でやっているメディアなのです。
 
実際、Books&Appsの記事の下部には、必ず以下のような「宣伝エリア」が設けられています。
そしてこれは、必ず弊社の本業に関わるものです。
 
 
上で紹介した、”「仕事やってるフリ」ばかりしてた人の話。”は、20万回近く読まれましたので、この広告エリアも10万回以上、表示されています。
その中で、0.1%でもこのセミナーに興味を持った人がいれば、それだけでこの広告は100回以上クリックされるわけです。
 
もちろん、これくらい大きくバズる記事は1か月に数回程度ですが、Books&Appsの記事は1日2記事、平均でも2万PV程度を生み出していますので、0.1%、つまり1日当たり、20回のクリックが発生している。
しかも、このコンテンツは広告と異なり、インターネット上に永遠に残り続けます。一度出せば、広告と違って、人を集め続けるのです。
広告であれば、「費用を投じている間」だけ、問い合わせが発生しますが、メディアの記事であれば、記事を投入するのをやめても、成果を生み出し続けます。
 
これは、広告を運用している人なら、どれだけすごいことなのか、分かるはずです。
これが、我々がBooks&Appsを運営している、一番の理由です。
 

なぜ「マーケティングメディア」を運営しないか

しかし、「バズったら宣伝」はわかるが、直接「オウンドメディア支援」や「マーケティング」に興味を持った人を集めるほうが効率が良いのでは?と考える人もいるかもしれません。
しかし「バズったら宣伝」メディアは、直接マーケティングメディアを運営するメディアに比べて、以下の利点があります。
 
1.SEOに頼らず、コンテンツ力で勝負ができる
マーケティングに関連するメディア運営は、検索エンジンからの流入が8割以上を占めるという性質上、「SEO中心」のため、「先発有利」「大手有利」「総合サイト有利」という、制約があります。
後発、小規模、特化型のティネクトが、これと勝負をしていくのは、あまり得策とは言えません。
 
特に、webマーケティング系は、有象無象の企業がひしめき合う領域であり、生半可に記事を作っていても、ほとんど「検索上位」を取れることはありません。
この「Google検索」に依存する状況ですと、どうしても「良いコンテンツ」が埋もれてしまう可能性が高いのです。
 
では「SEO」ではなく、純粋な「コンテンツ力」で勝負するにはどうしたら良いのでしょう。
それは、SEO中心の単なる「マーケティングメディア」ではなく、バズのある、SNSやニュースアプリからの流入も見込める、「多くの人が楽しめる、読み物サイト」を目指したほうが良い、という判断になります。
 
2.広告に依存したくない
後発企業は、SEOが弱いため、どうしても、トラフィックを集めるために「広告」への依存が増えていきます。
私の知る、ある「オウンドメディア支援」を掲げる会社は、たった数記事を作り、そこに「Facebook広告」や「リスティング広告」を使って、人を集める手法を取っていました。
要するに、記事は単なる「ランディングページ」であり、記事自体が人を集めてくるわけではない、という状況です。
 
これは決して悪いことではありませんが、「広告費」をかけ続けないと、人の流れが止まってしまう、という点で、欠点があります。
また結局「広告運用」で、他社と競争しなければならないため、結局、案件化に大きな費用を伴います。
結局、儲かるのはGoogleとFacebookだけ。
そんなメディアを運営して、何が「オウンドメディア」でしょう。
 
オウンドメディアというのは、「広告」に頼らず、自分たち自身で読者を集めてくることができるから、オウンドメディアと呼べるのです。
 
3.潜在客から、顕在客まで広く集客可能
マーケティングには、「潜在顧客」という言葉と、「顕在顧客」という言葉があります。
潜在顧客とは、「悩み・不満」があるが、まだはっきりとした解決策やニーズを抱えている状態ではない顧客のこと。
企業から情報発信・アプローチを続けることで、ニーズがはっきりし、顕在顧客に変化することがあります。
対して、顕在顧客とは、「悩み・不満」をどのように解決したらよいかについて、はっきりとした方針とニーズを持ち、それを解決するサービスを探している状態の顧客のことです。
 
わかりやすく言うと、
潜在顧客 → そのうち客
顕在顧客 → いますぐ客
というわけです。
 
「マーケティングメディア」に日々訪問する人は、多数が同業者か、「今すぐ客」であり、ここに対する営業活動は、極めて競争的です。
なぜなら、多くの会社が、「営業」をかけている状態だからです。
また「広告」によって訪問する人も、「いますぐ」サービスを探している人が多いです。
 
逆に「Books&Apps」に日々訪問する人は、ほとんどが「そのうち客」であり、すぐに営業案件に結び付くわけではありません。
しかし、1年、2年とお付き合いを続けるうちに、かなり多くの「そのうち客」だった方々が、案件を持ち込んでくれます。
しかも、競合抜き、排他的に、案件化するのです。
 
それだけではありません。
いくら顕在顧客の割合が少ないとはいえ、特化型メディアよりも圧倒的に多数の訪問者がいるので、結果的に「今すぐ客」がその中に含まれているのです。
したがって月間数十万PVの「マーケティングメディア」を作るよりも、月間数百万PVの「読み物メディア」を作るほうが、圧倒的に営業上も有利です。
 
4.オウンドメディアの運営サンプル
とはいえ、いくら上のように「オウンドメディアは、すぐに営業案件を生み出すのではなく、潜在顧客を生み出すものですよ」
と言ったところで、実際に自分たちで、言ったとおりのメディアを運営していなければ、まったく説得力はありません。
また「マーケティング」と全く関係のない記事をアップしていても、営業案件になりますよ、と言っても、「本当に?」と疑いを持つ人も多いでしょう。
それらの質問に対して、我々はBooks&Appsを実際に運営することで、
「両方とも本当です」
と言い切ることができるので、良い運営のサンプル、実例として、サイトを運営しています。
 
5.市場を広げる
「マーケティング特化型のメディア」は、どうしても、話題が小さく、ネタ切れを起こしがちです。
その行先は、
「細かいキーワードについての記事を作る」
「インタビュー記事を作る」
「事例記事を作る」
「商品説明記事を作る」
「社員紹介記事を作る」
など、ますます扱うテーマが、微に入り細に入り、という形になりがちです。
これは、もともと「webマーケティング」に興味を持っている人には良いですが「市場を広げる」ことにはなりません。
 
例えば、任天堂は、「ゲーマー向け」のゲームを作るのではなく、「ゲームをやった事のない人」「ゲームを普段あまりやらない人」むけに、広くターゲットを取って、ゲームを作っています。
これは、彼らのミッションが「ゲーマーの中でのシェアを取りに行く」ではなく、「ゲーム市場を拡大する」ことだと認識されているからです。
 
我々も同じです。
Books&Appsを運営することで、我々は、デジタルマーケティングやwebマーケティング、オウンドメディアの運営に興味を持つ人を、増やそうとしているのです。
 

メディア+メルマガ+セミナー+対面営業で案件化する

とはいえ、「顕在顧客」と異なり、「潜在顧客」を案件化するには、それ相応の努力が必要です。
そのため、われわれはオウンドメディアを
メルマガ
セミナー
相談・対面営業
の3つの活動とセットでとらえ、すべてをまんべんなく実施することで、潜在顧客を、顕在化するように日々、努力しています。
 
その中でも、最初に影響力を発揮するのが「メルマガ」です。
Books&Appsは、メルマガ登録を促すように、サイトをデザインしていますが、非常に重要な意味を持っています。
 
メルマガ登録者は、ある意味Books&Appsのファンです。
ファンになっていただいた方でなければ、メルマガを購読しよう、とは思わないはずです。
しかし、その方々はメルマガを期待して登録しているのであって、営業をかけられたいわけではありません。
したがって、基本的にはメルマガは、Books&Appsには掲載されない、運営側の裏話が掲載されています。
 
が、その一方で、同じリストに隔週で「セミナーの案内」をお送りしています。これを我々は、新聞の折り込みチラシのように機能していることから、チラシDMと読んでいます。
このセミナー案内は、「Books&Appsのファンの方々」を対象としているため、営業活動でありますが、開封率も通常のメルマガと同等の開封率を誇り、月間100件以上のコンバージョンが発生する、重要な活動になっています。
 
そうして「メルマガ」から「セミナー参加」へと進んだお客様は、潜在顧客から顕在顧客の一歩手前まで、進んだとみなしてよいでしょう。
 
第二段階であるセミナーは、我々の商品を説明し、オウンドメディアの運営ノウハウを余すところなく公開するものになっています。
これを通じて「商談」になるケースは極めて多く、セミナー出席者の20%は、すぐに案件の相談になります。
そして、その後の1年から2年で、全体の約半数以上の方が、案件を持ち込んでくれるのです。
 
案件化した顧客に残すは、相談・対面営業です。
これらは完全なる提案活動、営業活動であり、我々の技術者、アナリスト、ライターをいかに信用していただくか、具体的にどのようにプロジェクトを勧めれば、お客様のご要望を実現できるかを、細かく詰めていく段階です。
ここまで説明すると、「オウンドメディアを運営すれば、すぐに営業案件が発生する」という認識は、かなり間違っていることがわかると思います。
 
実際には、
オウンドメディアで、読者を大量にサイトに集める
 
 
多くの読者の中から、メルマガ登録やセミナー出席に至る、「潜在客」もしくは「顕在客」を集める
 
 
潜在客に対しては、メルマガでの案内や、イベントへの招待、noteでの発信などにつなげ、長期的に弊社への興味を維持し続けていただく。
 
 
顕在客に対しては、セミナー出席や勉強会を通じて、弊社のサービスを紹介し、対面営業や、勉強会などの開催、イベントへの招待などを通じた、メディアの提案活動を行う
という流れを、地道に繰り返すことで、弊社は存続しており、Books&Appsの運営は、その入り口として、最も優れているやり方だと考えています。
 

 

【お知らせ】
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【著者プロフィール】

安達裕哉

元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。

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