Webマーケティング、どこから手を付けたらよいかわからない人のための話。

このコンテンツは有料note「webライターとメディア運営者の、実践的教科書(安達裕哉著)」より転載しています。


webメディアの広告費が、マスメディアの広告費を上回ったことに代表されるように、web抜きのマーケティングはもはやあり得ません。
 
ところがマスメディアに比べてwebメディアは多様であり、かつ「広告」以外の手段が多く、無料の手段も少なくありません。
ただ「無料」というと聞こえは良いですが、要はお金で解決できず、手間と知恵を要求されるので、使いこなすには難易度がむしろ高い、というのが現状です。
 
そのため「どこから手を付けていいかわからない」という企業のマーケ担当の方も依然として多数います。
あまりにも複雑なので、「従来通り、マスメディアに広告だしときゃいいや」という会社も少なくありません。
そこで今回は、「どこから手を付けてよいかわからない」という方のために、webマーケティングの始め方を書き起こしたいと思います。

webマーケティングの目的は3つしかない

webマーケティングで使える手段は、本当に様々です。
例えばコーポレートサイト。あるいはSNS、その他にもYoutube、ブログ、メルマガ、ウェビナーなど、手段は無数にあります。
ただし「手段」はあくまで、手段に過ぎず、最初に考えなければならないのは、あくまで成果である「目的」です。
 
webマーケティングを展開することで一体何を得たいのか。
それを定義することから始めねばなりません。
ただ、目的と言っても、難しいことはありません。
それは多くの場合、会社の事業の目的と合致しているため、ピーター・ドラッカーの言うところの、マーケティングの一般的な目的である「セールスを最小限にすること」の延長で考えれば、それほど難しくなく結局それは3つしかありません。
1.問い合わせを増やす
2.購入してもらう
3.知名度を高める
これはほとんどすべての企業で使えます。
逆に、これ以外の目的は殆どありません。
ただしこの3つは、マーケティングをやる上で、やるべきことが少しずつ変わってきますので、自分たちの組織が、どの目的を優先的に果たすためにwebマーケティングを展開したいのかを決める必要があります。
 

1.問い合わせを増やす

殆どのBtoBビジネスでは、商品のスペックが顧客との交渉できまったり、導入に際してサポートが必要であったりと、「いきなり購入」には至らないケースがほとんどです。
その場合、webマーケティングの目的は、良質な問い合わせを増やすことに向けられなくてはなりません。
 

良質な問い合わせとは

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では良質な問い合わせとはなにか。
それは、「予算があり、商材や考え方に価値をすでに感じていて、コンペがない状態」の問い合わせです。
つまりこれは、「会社のファンからの問い合わせ」に他なりません。
まだ購入に至っていないので「商品やサービスのファン」ではありません。あくまでも「会社の魅力」によって、ファンになっていただいた潜在的な顧客からの問い合わせが、最も価値があるのです。
ではwebマーケティングにおいて「ファンづくり」をどのように進めれば良いのでしょう。
 

ファンづくりの進め方

結論から言うと、「ファンである」状態とは、
・役に立つ情報を発信している主体である
・面白い情報を発信している主体である
と認識され、
・積極的に、毎度発信を見に来てもらえる
状態と言うことができます。
 
これは要するに、
ブログ・コーポレートサイトならブックマークに入れてくれること。
SNSなら、フォロワーになってくれること。
Youtubeなら、チャンネル登録者になってくれること。
メルマガなら、メーリングリストに入ってくれること。
と、ほぼイコールです。
 
Youtubeで「コメント・高評価・チャンネル登録お願いしまーす」というアカウントが多いのは、それが「ファン化」の証であり、かつGoogleがその数値を見て、様々な人の「おすすめ」に表示するかどうかを決定しているからです。
質が高い発信にはファンが付く。
たったそれだけのことですが、webマーケティングをうまく接続することで、「質の高い発信にはファンが付き、逆にファンからの問い合わせは質が高い」という好循環を生み出すことができます。
 

メディア運営のカギはファンの固定化

そのため、「問い合わせをもらうwebマーケティング」で重要なのは、
「どこにファンを固定化するか」という話になってきます。
 
ブックマークに入れてもらうか。
SNS・Youtubeでフォロワーもしくはチャンネル登録者になってもらうか。

メルマガ登録をしてもらうか。

あるいは、上の組み合わせ(ブックマーク+SNSフォロー など)なのか。
それを決めるのが、「問い合わせをもらう」ために決めなくてはならないことです。
 
そしてここからがようやく、「メディア運営」の話になります。
メディア運営の目的は、「ファンの固定化」の話と、同値だからです。
・ブログやコーポレートサイトをブックマークに加えてもらうために、どのように運営すべきか。
・SNSでフォローをしてもらうために、SNSをどのように運営するか。
・Youtubeでチャンネル登録をしてもらうために、チャンネルをどのように運営するか。
・メルマガ登録へどのように誘引するか
 

ブログ・コーポレートサイトをブックマークしてもらう

結論を言いますと、ブックマークされるきっかけとして最も大きいのは、「再訪問」です。
 
検索にしろ、SNSからのジャンプにしろ、何かしらの調べ物や興味を引く記事にあたった時に、「このページ、前にも訪れたことがある」と認識されると、次回から再訪問の手間を省くために、ブックマークされるのです。
そのために最も気を配らなくてはならないのが、ブログやコーポレートサイトに掲載されているコンテンツの専門性とボリュームです。
専門的な記事は、調べ物をしている検索エンジンユーザの意図に合いやすくーマ内で幅広く話題を網羅すればするほど、再訪問の可能性が高まります。
 
また、サイトのコンテンツのボリュームも大きな要件の一つです。
コンテンツが豊富で、「このサイトには参考になることがたくさん書いてあるけど、読みきれない」と判断されると、ブックマークされる対象になります。
 
あるいは更新頻度が高く、「来るたびに新しい情報が掲載されている」と、ブックマークの対象となります。
また、「チャットでの問い合わせ」で、質問へ回答したり、や「ホワイトペーパー」などの資料をダウンロード可能にしたり、あるいは定期的にウェビナーなどを開催するすることで、「知恵袋」としての役割を確立させることで、ブックマークの対象となります。
 

SNSやYoutubeでフォロワー、チャンネル登録者になってもらう

ブログやコーポレートサイト以外への固定場所として、Twitterなどの「SNS」やYoutube、あるいは本稿などが掲載されているnoteなど、外部サービスのフォロワーや登録者になってもらう、という手段があります。
なお、Twitterに関しては、詳しい運用マニュアルを以前に記事化しましています。
 
ここに記載している通り、SNSやYoutubeも含めた「外部サービス」の運用は、基本的には、上の記事にも書きましたが
 
1.自社発信のインプレッション数を伸ばす(→ 発信者として認識してもらう)
2.フォロワーを増やす(→ 固定の読者を増やす)
3.ブログ・または自社サイトの訪問者を増やす(→ 外部に誘導する)
の3つが運営方針となります。
 
ただし、ブログやコーポレートサイトと大きく異なるのが、「外部サービスには、外部サービス独自の、方針がある」という点です。
 
例えば、Twitterであれば、インプレッションを増やすためには「話題」と「投稿の頻度」が重要になってきます。
また、Youtubeであれば、「滞在時間」と「コメント」がチャンネル登録者を増やすためのキーファクターになります。
 
なお、TwitterやYoutubeに比べて、noteやFacebookなどの活用の重要度は劣ります。
これはnoteが検索エンジンに引っかかりにくいこと、Facebookは記事が拡散しにくいことが要因として挙げられますので、BtoBビジネスではTwitterとYoutubeへの対策をしておけば良いでしょう。
 
なお、最も重要なのは、コーポレートサイト、およびブログ(オウンドメディア)への記事の投稿であり、外部サイトはコーポレートサイトやブログに投稿した内容を、ダイジェスト化して掲載し、拡散を狙う、という方針を取ることが望ましいです。
これは、TwitterやYoutubeなどの外部サービスは仕様がコロコロ変わる上に、「外部にユーザを出さないようにする」というアルゴリズムに翻弄されないためです。
 

メルマガ登録へ誘引する

BtoBビジネスでは、メルマガは現役のマーケティング手段です。
メルマガはSNSやブログと異なり、「私信」にあたるため、心理的に問い合わせに繋がりやすいためです。
なお、「名刺をもらったら勝手にメルマガを送りつける」のは辞めたほうがいいですが、「自発的にメルマガに登録してくれた人」は、上述した「ファン」の方なので、積極的に会社の商売についての発信をしていただいて全く問題ありません。
 
例えばあるホテルのメルマガの登録者の、「季節の商品案内」の開封率は40%、あるシステム開発会社の登録者の「発注のポイント〜RFPの書き方〜」の開封率は25%と、スパムに近いメルマガの開封率(1%以下)に比べて、圧倒的に開封される率が高いのです。
したがって、コーポレートサイト・ブログや、SNSでのフォロワーに対しても、積極的に「メルマガ登録」を推奨していく運用を行ったほうがベターです。
 
コラムや、セミナーなどの案内が届きます。
 
ここで重要なのは頻度と内容です。
メルマガの頻度は週1回以下にしてください。それ以上送付すると、メルマガの解約率が高まります。
内容については、「読み物」的な内容を月に1回程度、「セミナーや相談会などの営業・販促」については月2〜3回程度、という割合で送ると、ちょうど良い配合になります。
 

2.購入してもらう

「問い合わせをもらうこと」ではなく、「購入してもらう」ことを目的とするwebマーケティングは、以下の場合が有効です。
・BtoCビジネス(物品・有形・少額)
・BtoBビジネス(少額)
逆に、商品のスペックが顧客との交渉できまったり、導入に際してサポートが必要であったり、あるいは高額の購入である場合は、前述した1.問い合わせをもらう に準じてください。
そのような層は、そもそもすぐに購入には至りません。
 

購入を目的とするマーケティングの目的

なお、購入を目的とするマーケティングを行う場合は、
・「購入に必要十分な情報を提供すること」を目的とすること。
・「今すぐ欲しい」と思っている層に当てること。
の2つに、リソースを振り分けねばなりません。
したがって、購入を目的とする場合のマーケティングは、広告を使い、できるだけターゲットを購買層に絞り込んで行うことが必要です。
 

プラットフォーム最適化

さらに言えば、購入はそれぞれのプラットフォーム上で行われます。
 
例えばAmazonや楽天などの物販EC、一休やじゃらんなどの旅行サイト、食べログやGoogleローカルなどのリアル店舗サイトなどです。
したがって、ここで重要なのは「プラットフォームごとの最適化」になります。
Googleローカルをどのようにハックするか、Amazonをどのようにハックするかという話、あるいは、プラットフォーム内での広告の運用の話になります。
したがって、これらの施策は一般的に「何をすればいい」という話ではなく、プラットフォームに適した細かいチューニングの話になります。
 
なお、購入プラットフォーム上の広告ではない広告、たとえばFacebook広告や、Googleのリスティング広告などは、「直接購入に至る」ケースよりも、
1.のファン化の施策に寄っているケースが多いので、1.の施策に準じ、「どこに顧客を固定化するか」を考えねばなりません。
 

リピートしてもらうために

なお、ネットで一度購入した顧客にたいしては、リピート購入を促すための情報発信を行わねばなりません。
これについても、1.の施策に準じます。
 

3.知名度を高める

知名度を高める目的

知名度を高める行為は、一般的には「認知拡大」という言葉で知られています。
 
商品名を覚えてもらう行為、ブランドを告知する行為、会社の存在意義などを広く発信する行為などが挙げられます。
もちろん最終的には、1.問い合わせをもらう 2.購入してもらう
に接続させなければならないのですが、そもそも
・商材が新しすぎる
・企業がまったくの無名
・既存商材に対するアンチキャンペーン
・(自社社員に対する)インターナルブランディング
 
などを行いたい場合には、1.や2.の施策では、十分な効果を上げることができません。
 
それは、webは「目的があって、情報を取りに来る人」がほとんどだからです。
上のように「検索しない」「それに対する興味が存在しない」場合には、webマーケティングは無力です。
これは、能動的に情報を取りに行かないと情報が取れない、webマーケティングの宿命です。
 
そもそも、認知拡大の最大の目的は、上のように「広く薄く、情報を発信する」ことを優先し、「どこかで聞いたことがある名前には親しみを覚える」という単純接触効果を期待することです。
 
したがって、ここで扱うコンテンツは、名前を連呼したり、視覚に訴えて形や色を覚えてもらったりと、購入ではなく「とにかく記憶に残す」という施策になります。
 
あるいは「笑えるコンテンツ」を用意し、顧客層とは関係なく「話題作り」を優先して行うことも手段の一つとなります。
 

webマーケティングは「認知拡大」にあまり向かない

したがって、本質的には、webマーケティングを「認知拡大」を目的とすることはあまりありません。
本誌的には、webマーケティングの強みは、リストを作成できることにあり、そこに対してこちらから特定の情報を当てられることにあります。
 
逆に、旧来のマスメディア、とくにテレビの利用が、webに比して圧倒的に認知拡大のパワーは強いです。
あるいは、繁華街は公共交通機関への広告の掲示も、同様の目的に叶います。リストづくりの工程を犠牲にする(つまり、ファン化、固定化を諦める)代わりに、単純な知名度(聞いたことある)を優先することが、認知拡大のマーケティングの主たる目的です。
 

webマーケティングで「認知拡大」を取りに行くとき

ただし、そういった状況でも、ある一定の条件下では、webマーケティングで「認知拡大」を取りに行くケースがあります。
 
それは「マスメディアを見ない層」への認知拡大を取りたいときです。
例えばテレビの視聴者は、世代が若いほど少ないことが知られています。
その場合、ひたすらサービス名を連呼する動画や、おもしろコンテンツでとにかく人を集める、といった手法が取られます。
 
最近ではYoutubeでUberやゲームアプリなどのナンセンス動画が広告によく使われていますが、これは「マスに認知を拡大する」ことを地道にやろうとした結果です。
 
以上が、webマーケティング、どこから手を付けたらよいかわからない人のための話でした。
webマーケティングの「最初の一歩」をどこに置くかを判断するためにお使いいただければ幸いです。
 

 

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(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)

 

【著者プロフィール】

安達裕哉

元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。

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