このコンテンツは有料note「webライターとメディア運営者の、実践的教科書(安達裕哉著)」より転載しています。
弊社が運営しているオウンドメディア、Books&Appsは、2013年に私の個人ブログから始まりました。ブログを始めたのは、我々が立ち上げた事業の集客にブログを利用しようと考えたからです。
当時はいち個人のブログであっても、大きなトラフィックを集めていることは珍しくなく、集客の手段の一つとして、頻繁にブログが用いられていたのです。
当時の書き手は私と共同創業者の2名のみでしたが、やるからにはサイトに大きなトラフィックを集めたいと思い、次の運営方針を設定しました。
1.日曜日を除き、毎日更新する
2.外注せず自分で書く
運営方針の1.は、当時成功していた「プロブロガー」(懐かしい響きです)の一人が、「ブログはどのくらいの頻度で書いたらいいのか」という質問に対して、「もちろん毎日書く」と回答していたのを、そのまま適用した形です。
正直なところ、「毎日更新が必要なのか」という疑問はありましたが、当時私が気に入っていたブログも、毎日更新されており、しかも面白かったので、「可能だろう」という判断をしました。
2.については、起業したばかりでキャッシュが手元にあまりなかったため、自分で書かざるを得なかった、というのが理由の一つです。
また、記事で集客をするノウハウを得たかった、という理由もありました。結局の所、自分で手を動かして試してみないと、真のノウハウは入手できないと私は考えていました。
結果、なんとかこの方針を守りぬき、2013年2月の運営開始から2016年の5月まで、3年間、約1000記事に至るまで、我々は毎日記事を更新しました。
その後は会社の成長とともに「外部ライター」を起用し、現在Books&Appsの、複数のライターによる寄稿という運用体制に移行しました。
なぜ「自分で毎日更新」が可能だったのか
我々は、「プロブロガー」ではありませんでした。
ブログだけに時間を割くことはできず、本業である、 webサービスと、BtoBの受託事業の合間に記事を書いていました。
その条件下で「3年間、日曜日を除いて毎日記事を更新」というのは、気が遠くなるような話と思われるかもしれません。
ではなぜ「毎日更新」が可能だったのか。そこには、「毎日更新」を少ないリソースでも、無理なく続けるためのしくみが、存在していました。
その「しくみ」とは、具体的に以下の5つから構成されます。
1.ネタを調達する「しくみ」
2.書く時間をつくる「しくみ」
3.執筆を効率化する「しくみ」
4.読者の反応をもらう「しくみ」
5.商売につなげる「しくみ」
では、順番に説明をしていきましょう。
1.ネタを調達する「しくみ」
記事ネタをどのように調達するかはブロガーだけでなく、すべての物書きにとって、重要な問題です。
では「記事ネタの入手」とは何か。要するにそれは記事の材料たる「情報源」の確保と同義です。いかに良い情報を広く深く情報を入手するか。そして、一度手にした情報を検索性高く保管できるか。
つまり「執筆」は「材料集め」も含めて、執筆なのです。ゆえに、そのしくみづくりは、物書き全員の必修科目と言っても良いでしょう。
テレビ番組などで、作家の家に、本が山積みになっている光景が紹介されますが、彼らは書籍を情報源としたしくみをを構築している、と言えます。
では、webメディアを運営する我々は何を情報源とすべきでしょう。
色々な考え方があるとは思いますが、我々は上から重要な順に、
【重要度:高】
・仕事の記録(例えば私ならコンサルタント時代のノート)
・自分の体験
【重要度:中】
・人と会話・取材
・書籍
【重要度:低】
・他者のブログ・論説
・ニュース(スマートニュース、日経、Googleニュース)
・TwitterなどのSNS
・キュレーションサイト(note、はてなブックマークなど)
となっています。
ご覧いただいてわかるように、「自分が体験したことのメモ」あるいは「過去の仕事のメモ」などの、1次情報が最重要であり、ついで取材や書籍などの2次情報です。
出典のわからないインターネット上のニュースやSNS上の情報などは、重要度はかなり低くなっています。
いったいなぜでしょう。
過去記事でも繰り返し述べましたが、1次情報こそが「情報」であり、それ以外はコピー情報に過ぎないからです。
実際、「すでにweb上にある情報を、記事に加工しても、希少性が低い」ので、あまり読まれません。
有用な情報はいつでも「現場」や「体験」の中にあり、まだweb化されていないのです。
そういった情報をwebに最初に掲載すれば、読者から「希少な情報の存在するメディアだ」と思ってもらえます。
したがって、「メモの習慣」が、ネタを調達する仕組み上、最も重要です。
可能であれば、後で検索可能なように、デジタルでメモすることを推奨します。
また、積極的に様々な人に会い、話を聞いて取材することも重要です。
「取材」と言っても、本職の新聞記者のような取材は必要ありません。重要なのは、いつもの交友範囲だけではなく、様々なネットワークを作り上げることです。
実際、ニュースやTwitterを「眺めている」だけでは、記事のネタはほとんど浮かんできません。
記事にするには「自分が何を得たか」「自分が何を体験したか」「自分がどう思ったのか」を言語化する必要があります。
だから「メモ」が重要なのです。
なお、「書籍」や「webのクリップ」、あるいは「RSS」などを通じて得られる情報は、垂れ流されるニュースや、次々流れていくTwitterなどよりも能動的に取得する必要があるため、若干「言語化」がしやすいように感じます。
困ったら本を読んで、そこで扱っているテーマについて、何かしら自分なりのメモをまとめてみると、行き詰まっているときにもたいてい、何かしらテーマが浮かんでくるものです。
2.書く時間をつくる「しくみ」
メディアを自分で運営する場合、最も重要なのは「記事を書く時間」を確保することです。
しかし、常に忙しいビジネスパーソンに、記事を書く時間など、捻出できるのでしょうか。実際、「時間がなくてかけない」という方は多いと思います。
これを解決するしくみを、私は2つ、設定しました。
一つは、「先取りスケジューリング」、そしてもう一つは「時間厳守」です。
当時私は、BtoBのクライアントを数多く抱えていましたので、どうしても日中に記事を書くことはできませんでした。
書くことに充てられるのは、お客さんへの訪問が終わった後です。
そこで、「時間がない」という言い訳ができないように、書くための時間を、あらかじめ確保しておくことにしました。それが「先取りスケジューリング」です。
具体的には16時から17時にかけては、「記事を書く時間」と決め、どこにいても必ず執筆に時間を使うことにしました。
スケジュール化することで、そこには予定が入らなくなり、リソースの確保ができるようになりました。
クライアントが少々遠い場合は、ノートPCで執筆できるように環境を整えました。
また、文献などは電子書籍、具体的にはKindleでできるだけ購入し、PCに入れていつでも参照できるようにしました。
しかし、一つ問題があります。
「たった1時間で記事が書けるのか」です。
正直なところ、1時間という時間は、たかが知れています。その程度確保したところで、本当に記事が書かけるのでしょうか。
結論から言うと、書けます。
この際重要なのは、「記事の質と量はそれほど重視しないこと」です。
感覚的にはTwitterに近いでしょうか。とにかくスピードをもって書いて、発信する。そのためには、「1時間で書けること」しか書かなくなりますし、ちょっとした隙間時間に、記事のネタを考える癖付けも促されます。
そして、何より重要なのは2つ目のルールである、「時間厳守」とすることです。
このルールは「16:00ピッタリに書き始める」ではありません。「17:00になったら、強制的に書くのをやめなければならない」というルールです。
これには大きなメリットがあります。
終了時刻を決めることで集中力が増すこと、そして「ダラダラ書かなくなる」ので、不毛な時間が減ることです。
書くのがつらく、不毛だと、毎日更新はとても無理です。
しかし、「たった1時間だけ」であれば、毎日我慢もできますし、継続もできる。
最初は、1時間で数百字程度しか書けないかもしれません。
でも、それでいいのです。
Twitterはたった140文字です。それよりは多いですし、短い記事だからといって、特に恥ずかしいことをしているわけではありません。
そのような事情もあり、2013年当時は、こうした「短い記事」が大量にアップされていました。
例えば、Books&Appsで一番読まれている記事は以下の記事ですが、文字数はたったの500文字少々、たったツイート4つ分にも満たないのです。
早く書くことは、書くスキルの向上とともに、ある程度の期間続ければ「そのうち」にできるようになります。
それよりも時間を決めて、特定の課題に正面から取り組むほうが、はるかに重要だと言えます。
3.執筆を効率化する「しくみ」
とはいえ、1日に1時間しか執筆に時間がとれなかった私は、執筆を効率化する「しくみ」を必要としました。
そこで考えたのが「早く書く」ためのテンプレ化です。これは過去記事に詳しいので、そちらを参照していただくと良いと思います。
記事の中にもありますが、究極的には、記事は以下の3種類しかありません。
1.「共感する」記事
2.「面白い」記事
3.「ノウハウ」記事
当時のテンプレは、上の記事にあるほど洗練されてはいませんでしたが、まあ、やっていることは今と同じでした。
「今日はどの記事を書く」さえ決めれば、テンプレに従って構成をつくり、書き出すことができるので、これは大変重宝しました。
また、言い回しや文体については、私が前職でつかっていた、執筆のルールが役立つと思います。
このあたりも、文章の推敲であまり時間を使わないようにするための工夫でした。
後は細かい話、作業環境などです。
例えばアイキャッチ画像を探すのは、結構面倒な作業なので、早いところ無償で写真をつかえるサイトを見つけてしまいましょう。
Frickrは、検索した後、クリエイティブコモンズや、商用利用可能など、フリーで使えるライセンスを選択してください。
unsplashは、検索してそのまま使えます。
本質的には、アイキャッチは意味のない写真なので、さっさと選んでしまいましょう。
あるいは、テキストエディタです。
ワードプレスのエディタは、視認性が悪いので、私は直接ワードプレスに執筆せず、外部のエディタに一度書いてから、それをコピペしてワードプレスに移植しています。
この辺は好みもあると思いますので、好きなエディタを使えばよいと思いますが、私が良く使うのは、Googleドキュメントと、Evernote、あとはたまにOmmwriterというアプリをつかいます。
Ommwriterはシンプルすぎるエディタですが、集中して書くときには重宝します。
後は体調も、執筆の効率に非常に大きくかかわります。
夕方は疲れていることも多いので、そこで無理やり机に向かっても、書けないことも多いのです。
そういう時は、15分から20分程度、仮眠をとることをお勧めします。
仮眠をすることで、モチベーションが回復し、書くことが非常に楽になります。
4.読者の反応をもらう「しくみ」
記事を書いたあとの「読者の反応」は重要です。
数多く読まれれば、執筆を継続する動機づけになりますし、読まれなかったとしても「このネタは読まれない」と学習できるからです。
ただ、いずれにせよ「読者の反応が得られない状態」で、書き続けるのは動機づけの観点からも、ネタ作りの観点からも、非常に難しいと言わざるを得ません。したがって「書いたらとりあえず公開」することが、フィードバックを得る、最初の一歩です。
ただし「ブログ」のような場所は、立ち上げた当初はほとんど人が来ないため、直接の反応が得られにくいという欠点があります。
そのため、我々はブログの立ち上げ当初から、SNSへの記事放流を積極的に行いました。具体的にはFacebookとTwitterです。
FacebookとTwitterにはある程度、知人友人のつながりが存在しているため、その反応の良しあしをフィードバックとすることができます。
しかし、最も早く、適切なフィードバックがもらえるのは、実は「身近な人」たち、つまり社員や家族です。
私は記事を書き終えたらすぐに社内でそれを共有し、コメントを述べあいました。
「もうすこしここが知りたかった」とか。
「ここの意味が分からなかった」とか。
「つまらない」「面白い」だけでもいいのです。
また、社員だけではなく、家族に見せても、また違った反応が得られます。
webでは様々な人が読むため、思わぬ炎上を防ぐことにもつながるでしょう。
私は妻によくブログの記事を見てもらいました。
「面白いか?」だけではなく、「独自性を感じるか?」「役に立つか?」など、直感的に答えてもらうことで、記事の改善のヒントがもらえるものです。
そういう意味で、記事はまず「身近な人を楽しませるために書く」ということを目標にすると、反応が得られやすく、webの向こうの人を相手にあれこれ想像するよりも、うまく回ります。
5.商売につなげる「しくみ」
最後に「商売」という観点からです。
どれほど高尚な目的であっても、「リターン」が得られないことを継続するのは難しいです。
したがって、ブログであれ、何らかのメディアであれ、運営する以上は「商売」を考えねばなりません。
これはとても重要なことなのでもう一度書きます。
「商売」を考えていないブログやメディアは、すぐに継続が困難になります。
ブログやメディアを使った商売は、いくつかありますが、大別すると3つにわかれます。
1.広告
2.記事への直接課金
3.EC・オウンドメディア
昔の「ブログブーム」の時には、1.が主流でした。
Googleアドセンス広告と、アフィリエイト広告(成果報酬広告)で、ひと月に数十万円稼ぐ人もいました。
あるいは、現在のYoutubeはこれにあたるかもしれません。
しかし、現在は「個人ブログ」や「アフィリエイトメディア」はGoogleのアルゴリズム変更によって上位に出てくることはほぼなくなり、代わって上位に表示されるようになったのが、コーポレートサイト、もしくは比較サイトです。
そういう意味で、現在はすでにブログや文字メディアで商売をするときに、「広告」を念頭に置くのはかなり厳しいと言えます。
それであれば2.記事への直接課金はどうでしょう。
これは「個人」が行うのであれば、有望なやり方の一つと言えます。
本マガジンも有料化されたメディアの一つですが、多くのライターが、Google広告が立ち行かなくなった時に、「有料記事」「有料メルマガ」「有料サロン」を開始したのは記憶に新しいところです。
しかし、このやり方は「無料」で人気を集めた人が、そのコンテンツの一部を有料化するから人が集まるのであって、最初から有料化しても、ほとんど人が集まりません。
したがって「無料記事」もしくは「TwitterなどのSNS」である程度フォロワーを集めてから、そのファン向けに一部を有料化してサービスを提供する、という形が望ましいでしょう。
なお、お金を払ってくれる人の数は、大体「フォロワー」の1/5~1/10程度の数ですから、マガジンの単価を500円程度にすると、サラリーマンの給料(月額30万円)くらい稼ぐには、フォロワーを3万人から6万人程度、集める必要があります。
マガジンの単価を高くするのも一つの手法ですが、ある程度単価が高くても許されるのは、直接リターンが見込める、「金融商品」に関するネタ、もしくは「マーケティング」分野に限られ、あまり多くの選択肢はありませんので、注意が必要です。
収益化・マネタイズについては、この分野だけで語れることがかなり多いので、以下のバックナンバーもご参照ください。
最後に、3.EC・オウンドメディア で商売を考えるという手法です。
これは主に、法人や個人事業主向けの手法ですが、ブログやメディアは「集客」に特化し、商売を別に持つ、というやり方です。
有名どころでは「カインズホーム」がやっている、となりのカインズさんというメディアがありますが、この記事はいわゆるDIYをネタにした「販促記事」と、DIY関係なく集客目的のための「読み物」があり、カインズホームで買い物をするかどうかにかかわらず、楽しめる内容になっています。
Books&Appsも、弊社の本業はメディア支援と記事・動画の制作、そしてAIの開発ですが、直接それに関連する記事はわずかです。
人が集まれば、一定数の見込み客がそれに含まれる、という考え方でメディアを運営すると、メディアは単体で黒字を出す必要がなくなり、比較的収益化のめどが立てやすくなります。
最近では、弁護士や行政書士、ファイナンシャルプランナーなど、士業の方々がブログを書くことが増えており、「別に商売をもって、集客に寄与する」ことが一般的になってきています。
また、商売と関連させれば、メディアの内容も専門的になり、ほかにないコンテンツを生み出せることから、最終的には、ブログはすべて、この方向で運営するのが現在のところ「正解」ではないかと考えています。
以上、メディア運営を、少ないリソースで無理なく続けるための具体的なしくみでした。
1.ネタを調達する「しくみ」
2.書く時間をつくる「しくみ」
3.執筆を効率化する「しくみ」
4.読者の反応をもらう「しくみ」
5.商売につなげる「しくみ」
どれが書けても、運営には支障が出ます。
一つ一つ、ある程度の時間をかけて取り組みをされることを、お勧めします。
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【お知らせ】
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【著者プロフィール】
安達裕哉
元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。
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