ライターが「説教臭い文章」を書かないために留意しなければならないのは何か。

このコンテンツは有料note「webライターとメディア運営者の、実践的教科書(安達裕哉著)」より転載しています。


皆の興味があるテーマで、言っていることは正しく、もっともらしいのになぜかweb上では「読まれない」記事がある。
その一つの原因として大きいのは「説教臭さ」だ。
 
具体的に言う。
例えば、説教臭い記事を掲載しているメディアの一つは新聞だ。
下の「社説」をお読みいただくとわかるように、全編にわたって

「説教臭さ」が漂う。

国境を越える感染症問題に、国々がばらばらに取り組んでも限界がある。世界的な「鎖国」の風潮を改め、結束する理性を取り戻さねばならない。
これについては、内田樹氏の昔の論考が、非常に的を射ている。
母親の家は朝日新聞である。ふだんは毎日新聞なので、その違いに驚く。
朝日新聞には強い「指南志向」がある。
メディアが国民に進むべき道筋を提示するのはその本務であるから、異とするには当たらないが、三日ほど読んでいるうちに、だんだん腹が立って来た。
「無理でしょ、それは」というつぶやきがもれる。
今朝の新聞の一面は「できる子伸ばせ」という記事で、科学五輪のような「世界レベルへ選抜合宿」している「できる子」たちの様子が報告されていた。
いったいなぜこのような記事が一面トップに置かれるのか。
その理由については何も書かれていない。
国産のトップアスリートやトップアーティストやトップスカラーを大々的に顕彰することは国民全体の士気を鼓舞することになるという信憑がおそらく定着しているせいだろう。
けれども、ジャーナリスト諸君はその「チアーアップされる感じ」をご自身で実感されているのであろうか。
私はされない。
世界的な活躍をしている同胞の姿は「たまに見る」と「よし、オレもがんばらねば」という気分になることが私にもある。
でも、そのような鼓舞的な効果があるのは、飽くまで「たまに見る」からである。
そんなものをのべつ見せられて、「ほれ、こんなに頑張ってる人もいるんだぞ」と言われると、私はしだいに「うっせーな」という剣呑な気分になってくる。
説教臭さの強い文章を読むと、まさに「うっせーな」という気持ちになる。
もちろん記事をシェアすることもない。
 
もちろん、新聞に限らない。
webメディアでも「説教臭い記事」は、頻繁に見うけられる。
社会的地位があり、専門性も高い人々が、説教臭い文章を書く。
例えば、弁護士や医師、大学の先生。
 
彼らは驚くほど「説教臭い記事」を書き、炎上させておきながら、なぜそれが炎上したのかわからず、記事をあわてて取り下げる、という行為を私は幾度も目にした。
 
また「駆け出しのライター」であっても、説教臭い文章を書く人がいる。
一生懸命調べて記事を書いているのに、読後感がよくない。
「なんでこの人はこんなに説教臭いんだろう?」と思ってしまう。
「元雑誌の編集でした」という方が、説教臭い文章を書く。
それを指摘すると、逆に怒り出してしまう、なんてこともよくある。
 
「上から目線だから説教臭いのでは?」という方もいるかも知れない。
が、必ずしも「上から目線」=「説教臭い」ではない。
例えば、日経ビジネスでコラムニストをしている小田嶋隆氏のコラムは、
「上から目線」でありつつも、決して説教臭くはない。
うまく納得させられてしまうのだ。
例えば2016年のコラム「蓮舫議員は別に好きじゃないが」をお読みいただきたい。
バカな記事に引っ張られてバカな話をしてしまった。
 
 ただ、心配なのは、バカな人たちが筋違いな言いがかりをつけているに過ぎないにもかかわらず、その愚かな彼らの陋劣な言いがかりが成功しつつあるように見えることだ。
 
 もちろん、バカないいがかりをつけている人たちは、自分のバカさを世界に向けて宣伝しているだけの話なのだからして、たいしたことにはならない。放置しておけばよろしい。
 
 が、残念なことに、民進党の面々が、このバカないいがかりにまんまとひっかかっている。
 これは、本当に残念な展開だ。
思いっきり「上から目線」の文章であるにも関わらず、この文章からは「説教臭さ」は漂ってこない。
 
同じようなことを書いておきながら「説教臭い」文章を書く人と、そうでない人がいる。
その差は、一体何なのだろうか?
 

「説教臭さ」の根源はなにか

「説教臭さ」の原因は明らかで、しかも簡単に直せる。
実は……
 
「説教臭い」文章は、「反論を考慮していない」文章なのだ。
もっと言えば、丁寧な文章ではなく、乱暴な文章だ、と言っても良い。
 
例えば冒頭の朝日新聞の社説。
なぜこれに「説教臭さ」が漂っているのかと言えば、この文章を読んで当然の反論に答えていないからだ。

世界的な「鎖国」の風潮を改め、結束する理性を取り戻さねばならない。

と社説にはあるが、世界中の国々は「鎖国」をしているのではなく、感染者を国に入れることで、感染の爆発を防ぎたいと思っているだけではないのだろうか。
それを「鎖国」と言ってしまうのは、いくらなんでも乱暴だ。
 
確かに感染を防ぐ枠組みには問題があったかもしれない。米欧日、そして中国の責任が重いのもそのとおりだろう。
だが何の具体的な指針も示さず、反論にも答えず「理性を取り戻せ」と言われても「え?」と、キョトンとする他はない。
つまり「乱暴さ」=「説教臭さ」なのである。
 
思い出してみてほしい。上司や親の説教を。
嫌な思い出となっている説教は、相手が自分の話を聞かず、一方的に何かを押し付けられたときではないだろうか。
そこには「対話」は存在せず、「指南」があるのみであり、正しさは上の立場にいる人の身に存在している。
 
これが「説教臭さ」の真の正体だ。
 

「説教臭さ」を文章から消すには

だから文章の中に「自信の主張に対しての、想定される反論」を入れるだけで、説教臭さはかなり消すことが出来る。
 
小田嶋隆氏のコラムが優れている理由は、非常に丁寧に「反論」に対応している点だ。
タイトルにもあるように「お前は蓮舫が好きだからだろう」という反論を想定して、丁寧に答えているし、「国籍法の解釈の違いではないか」という想定される反論に対しても、「国籍法を調べた」と述べている。
この丁寧さが重要なのだ。
 
余談だが、以前にも、本マガジンで紹介したかもしれないが、まだダイヤルアップだった時代に、個人で驚異の100万PVを達成した、「ムーノーローカル」というサイトがあった。
毎度、人をくったような、上から目線の文章並んでいるのだが、不思議とその文章には、嫌な感情を抱かなかった。
 
その記事制作の方針、種明かしが、サイト閉鎖後に作者によってアップされた、「解題・ムーノーローカルの作り方」だ。
このマニュアル(?)は実によくできていて、私も記事づくりの指針の一つとして用いている。
 
そして、その中に、今回の話と関連する、重要な3つの条件がある。
・あらゆる報道とは客観的な正しさに基づいて表現されているし、当然そうされるべきである」という読み手側の盲目的でしかも無意味な誤謬と、それが何か自分たちの美点であるように感じて祭り上げてしまっている書き手に対するアンチテーゼ。
 
・つねに読者からの批判を想定して、その批判に対して答えの提出できることだけを書く。
 
・反論の余地を放置しない。それは文章として美しくないからである。どうしても文章から反論の余地を消せないなら、その余地を隠蔽するために、読者の視点を別に逸らすべきである。
 
つまり、記事を書くときに、
「自分たちが「当然正しい」と思うな」
「批判を想定しろ」
「反論には丁寧に答えるか、隠せ」
と言っている。この丁寧さが、記事を面白くするのだと、サイトの運営者は見抜いていたのだ。
 
もちろん、誤解のないようにしていただきたいのだが
私は「説教臭い文章を書いてはいけない」と主張しているわけではない。
新聞の書き方は「権威」を感じさせなければならず、あえて反論を無視しているのかもしれない。
また「指南志向」が、人を説得するのに必要であるという可能性もある。
オピニオンリーダーには、自信が必要だからだ。
 
とはいえ、「webで読まれる」ことを指向した場合には「説教臭さ」は、余計であるし、一般的には説教は好まれない。
また、教化的すぎれば、炎上を招く可能性もある。
 
ライターが「読まれる記事を書きたい」と思うのであれば、「説教臭い文章」を極力、書かないために留意しなければならないのは当然の話だ。
 
 

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(2024/2/22更新)

 

【著者プロフィール】

安達裕哉

元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。

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