このコンテンツは有料note「webライターとメディア運営者の、実践的教科書(安達裕哉著)」より転載しています。
「コンテンツマーケティング」という言葉があります。
Googleトレンドによれば、日本ではだいたい2014年ごろから認識され始め、2016年ごろにかけて盛り上がったテーマです。
(出典:Googleトレンド https://www.google.com/trends)
トレンドを見る限りでは、現在では「コンテンツマーケティング」という、曖昧模糊としたワードは徐々に使われなくなっており、死語になりつつあるように見えます。
ただ、コンテンツマーケティングが衰退しているのかと言えば、おそらくそうではありません。
例えば、コンテンツマーケティングの一部を成している「コンテンツSEO」、あるいは「動画マーケティング」「オウンドメディア」やといった、具体的な施策にかかわる用語は、継続的に使われています。
とくに「オウンドメディア」はコンテンツマーケティングという用語よりも検索回数が多いのです。
これはおそらく「コンテンツマーケティング」という言葉がカバーする範囲があまりにも大きく、かつ分かりにくいからでしょう。
具体性のある言葉のほうが、好まれているのです。
正確にコンテンツマーケティングを知れば、成果はもっとあがる
ただ、コンテンツSEOや動画マーケティング、あるいはオウンドメディアを実施するうえで、「コンテンツマーケティング」と言う概念を正確に知っておいたほうが良いのは間違いありません。
というのも、SEOや動画、あるいはオウンドメディアは、それぞれを単発で実施するよりも、複合的に実施するほうが相乗効果があり、成果につながりやすいからです。(なぜなのかは後述します)
したがって、それらを正確に表現する「コンテンツマーケティング」という概念を知っているのと知らないのとでは、成果に大きな差が出ます。
ただし「コンテンツマーケティング」と言う言葉は、前述したとおり、曖昧模糊としており、提唱者によって意味も内容にもばらつきがあります。
また、抽象的な概念であるため、「定義」を聞いてもピンとこないものも多いでしょう。
そこで本稿では「コンテンツマーケティング」をよりシンプルに理解するために、「コンテンツマーケティングにまつわる、よくある誤解」を一つずつ取り上げ、それを訂正する試みを行います。
コンテンツマーケティング実施の一助となれば幸いです。
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誤解1.
見込み客に「情報(コンテンツ)提供」をすれば、リード(引き合い)を獲得できる
正しい理解
見込み客に「有用な情報の発信者だ」と認識してもらえれば、効率よくリードを獲得できる。
最も多い誤解の一つは、「情報提供」すれば、リードが獲得できるとの認識です。
これは、プロですら認識を間違えているケースも多いのですが、現実的には、単なる情報提供では、購買にはほとんど至りません。
要は「記事を見て、そこから問い合わせる人」はほぼ存在しないのです。
購買に至らせるのは、情報提供ではなく、直接の営業、あるいは販促活動や広告で「これを買いなさい」と明確に勧められたときです。
つまり「買ってください」と、きちんとお願いしない限り、コンテンツマーケティングを一生懸命やったとしても、「無償の情報提供者」で終わってしまいます。
では、余計な情報発信などせず、「これを買いなさい」と言う発信、つまり広告に特化したほうが良いのでしょうか。
これもまた、間違っています。
人はよほど欲しい時以外は、「売り込み」を嫌うからです。
その証拠に、あなたは普段「広告」を熱心に見ている時間よりも、「情報」を見ている時間のほうが長いですよね?
ではコンテンツマーケティングにおいて行われる、「情報提供」の主たる目的は、いったい何なのでしょうか。
実は、情報提供の主たる目的は「有用な情報の発信者」との認知を獲得することにあります。
あのTwitterアカウントは面白いな
あのブログはいいな
あの会社の社長の発信は興味深いな
あの会社のメディアは専門性が高いな
と言った具合です。
一体なぜでしょうか。
実は「情報」自体は、腐るほど身の回りにあります。
しかし、その情報がどこから出ているのか、普段私たちはほとんど意識をしません。
Googleの検索結果も、Twitterの発信も、ニュースアプリに掲載されているノウハウも、誰かが発信をしているものではありますが、「発信者」が誰であるかを意識することは稀です。
逆に、その中で「あそこはいい情報源だ」と認識されることは、商売を行う上での大変な強みとなります。
何か購買の必要があるときに、思い出してもらえるからです。
したがって、情報提供の第一の目的は
「情報を見てもらう → 買ってもらう」ではありません。
「情報を見てもらう → 良い情報を発信している企業/人/アカウントだと、認識される」なのです。
では我々が、誰かしらを「発信者」を認識するのは、いったい、どのような時でしょうか?
これは「ことあるたびに、特定の発信者を、繰り返し目にした時」です。
例えば、1か月前に目にしたブログが面白かった、そして偶然、今日面白いと思った記事も、そのブログだった、といった場合です。
ブロガーのちきりん氏は、次のように言語化していますが、まさに「情報発信」の極意は、ここにあります。
私もヒットエントリがでた翌日は、なんとかそれを超える価値のあるエントリを書こうと頑張りました。二回続けて「おもしろい!」と思われたら、非常に高い確率で、「このブログはおもしろい」と判断してもらえるからです。
冒頭、「SEOや動画、あるいはオウンドメディアは、それぞれを単発で実施するよりも、複合的に実施するほうが相乗効果があり、成果につながりやすい」と記述したのも、そのためです。
検索エンジンでも、動画でも、ニュースアプリでも、同じ発信者の情報を見かければ、「この発信者の情報はフォローしておこう」と、認識されます。
そして、その認識は「プロモーション」を行った時に、発信者の話を聞いてくれる人が多い、ということになります。
つまり、「有用な情報の発信者だ」と認識してもらえれば、その後の営業・販促活動を円滑にでき、効率よくリードを獲得できる、というわけです。
したがって、コンテンツマーケティングとは、ブログ/オウンドメディア運営のことではありません。
メルマガや、セミナー、Youtube、コンテンツSEO、あるいは時に広告も含めた「質の高い情報の発信者である」との認識を得るための、あらゆる活動なのです。
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誤解2.
自社、および自社商材に関係のない情報は発信すべきでない
正しい理解
「良質な情報の発信者」として認識される限り、どのような情報を流してもよい
これもよくある誤解です。例えば、
「不動産業」なので、不動産の情報しか流してはいけない
「システム開発業」なので、ソフト開発の情報しかながしてはいけない
「ホテル業」なので、ホテルに関する情報しかながしてはいけない
といった認識です。
が、これらは「全部ウソ」です。
誤解1.で述べた通り、「記事から問い合わせがくる」と言うことは、まずありません。
ですから、発信する情報がすべて「問い合わせをもらう」ことを意識したものになっていると、「売り込み臭」が強くなりすぎて、かえって逆効果です。
また、特化すればするほど、「発信される情報」にバリエーションが少なくなってしまうので、退屈な発信者となってしまいます。
新聞も、「ニュース」だけではなく、社説やテレビ欄、マンガやコラムなど、数多くのコンテンツが掲載されています。
経営者が運営するTwitterで人気があるアカウントは、自社商品だけではなく、ジョークやグルメ、趣味やマネジメントについての発信が混ざっています。
レストランの評価で有名な「ミシュランガイド」はタイヤメーカーのミシュランが発行しています。
したがって、自社、および自社商材に関係のない情報は発信すべきでない、と考えるのは悪手です。
情報発信はその、「個人」「メディア」「チャンネル」「アカウント」を気に入ってもらうためであり、そのためには何の情報であっても、発信してよい、としたほうが、結果的に見込み顧客を広く集めることにつながります。
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誤解3.コンテンツマーケティングは成果が出るまでに時間がかかる
正しい理解
コンテンツマーケティングはすぐに成果が出る
コンテンツマーケティングは「時間がかかる」と誤解をしている方がいますが、間違いです。
コンテンツマーケティングは、やり方次第で、分かりやすくすぐに成果が出ます。
例えばオウンドメディアですが、月間500PV程度もあれば、そこからリードを取れる可能性は十分にあります。
むしろ、オウンドメディアのページビューを「10万PVに伸ばしたい」というほうが、よほど時間がかかります。
ただ、この誤解がどこから生まれているのか、わかります。
それは、「情報発信をしても、問い合わせがこない」からです。
例えば上述したオウンドメディアの例ですが、大体、担当者は以下のような思考回路になっています。
数本記事を出しても、問い合わせが来ない
↓
もっと記事を出して、もっとトラフィックが増えないと、問い合わせが来ないのでは?
↓
トラフィックを増やすのは時間がかかる……
↓
コンテンツマーケティングは時間がかかる……
これらはすべて、誤解です。
数本の記事でも、リードを生み出すことは十分可能です。
問い合わせが来ないのは、「営業・販促・プロモーションをしていないから」です。
「記事をメディアに出してほっとけば、引き合いが来る」という認識を、改めねばなりません。
オウンドメディアでは、記事を見に来てくれる人向けに、資料をダウンロードしてもらったり、メールマガジンに登録してもらったり、アンケートに答えてもらったりする導線や仕組みをきちんと整備しなければなりません。
こちらから「営業」をさせてもらえる個人情報を取り、ちゃんと販促をかけてはじめて、オウンドメディアでは成果を出すことができます。
ですから、メディア運営は、営業の方々との連携が必須です。
実際、我々の統計では、大体記事を見た方のうち、0.5%ほどはリードにつながります。すると、個人のブログのレベル、たとえば月間500PVのメディアですら、月間2.5人の人の個人情報が取れる。
商材にもよりますが、そこから成約につながるのが10%程度としても、4か月で成約が生まれます。
これは決して「半年も1年もかかる」という話ではありません。
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誤解4.コンテンツマーケティングは量より質が重要である
正しい理解
コンテンツマーケティングは量も質も重要である
前述したとおり、コンテンツマーケティングは第一の目的を「有用な情報の発信者だ」と認識されることにあります。
そのために重要なのはまず「情報の質」であることはもちろん、疑う余地はないでしょう。
しかし「情報の量」が重要ではないかと問われれば、それは誤解です、と言わざるを得ません。
いくら質が高くても、「発信者」の名前を覚えてもらわないことには良い問い合わせにつながらないからです。
そして覚えてもらうためには「量」が必要です。
むしろ、Youtubeの動画広告のように、「大した情報ではないけど、頻繁に情報発信している人/企業」は単純接触効果によって、好感を得やすいのです。
単純接触効果……繰り返し接触するだけで、好感度や印象が高まるという効果
メディア運営は、「毎日投稿」すると、必ずそれを習慣としてみる人が増えます。
また、Twitterも、一気にたくさんの投稿をするよりも、少しずつ投稿を繰り返したほうが、読者が増えると推奨しています。
したがって、例えばブログの運営では、「めちゃくちゃクオリティの高い記事を1本つくる」ことと、「普通のクオリティの記事を10本作ること」は、両方やらなければならないことです。
コンテンツマーケティングは量より質が重要である、という言葉は、「量」だけをやっている人に向けた言葉であり、そもそも仕事として絶対に成果を出さなければならない人への言葉ではありません。
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誤解5.「バズること」は重要ではない
正しい理解
「バズること」は重要である
「バズらなくてもいいんで」という担当者の方がいますが、コンテンツマーケティングを行うなら、どこかで必ず「バズ」を起こさなくてはなりません。
(なお、バズの再現についてはこちら 【22】弊社が、再現可能な形で、バズ記事を生み出している仕組みを解説する。)
ただ、「バズ」の手段は何でも構いません。
SNSでバズる、というのが一般的な理解ですが、SEOでバズるときもありますし、何かしらのニュースサイトやまとめサイトでバズるときもあります。
ただいずれにせよ「バズ」は必要なのです。
これはインターネットの性質によります。
インターネットのような、ごく一部のノードが、莫大なリンクを集めているネットワークは「フリースケールネットワーク」と呼ばれ、一部の記事が莫大なアクセスを集める一方で、ほとんどの記事は見向きもされない、という性質を持ちます。
「バズ」は、この「ごく一部の莫大なリンクを集めるコンテンツ」を作る行為だと言えます。
そしてこのフリースケールの性質上、このマガジンの以下の記事
でも書きましたが、新規のリード獲得には、バズが不可欠になります。
それは「読んでほしい人に記事を届けるため」には、「関係ない人」を経由しなければならないというwebの特性だ。
重要なのは「関係ない人」を経由しなければならない、と言う点です。
新規客は「関係者、友人、知人」の外におり、「バズ」は、発信した情報を「いつも読んでくれている関係者、友人、知人」の外に流通させる行為です。
だからコンテンツマーケティングにとって重要なのは、「バズ」なのです。
なお、旧来のマスメディアに対するマーケティングを行っていた人の中には、は『想定する読者(視聴者)』をできるだけ精緻に決めてから行わなくてはならない、「ペルソナ」を設定せねばならない、と主張する人が数多くいます。
が、インターネットの性質上「想定する読者」に記事を届けるためには、「想定していない読者」を経由させる必要がありますから、あまりにもターゲットが小さい、狭く、深く話題を掘り下げたコンテンツは、コンテンツマーケティングには向いていません。
それは、営業の時に、本当に興味がある人に見せるコンテンツです。
以上、コンテンツマーケティングに係る、よくある誤解を書かせていただきました。
正確な理解は、成果につながります。
ぜひ皆様も、試行錯誤し、研究してみてくださいませ。
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【著者プロフィール】
安達裕哉
元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。
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