「役に立つ情報源」として見てもらうための技法

このコンテンツは有料note「webライターとメディア運営者の、実践的教科書(安達裕哉著)」より転載しています。


商売をする人なら、マーケティングの一環としての情報発信の重要性について、ご存知でしょう。
現代のマーケティングは以下のような、発信活動を非常に重視します。
・ブログを書く
・SNSアカウントを運用する
・メディアを立ち上げる
・セミナーを開催する
・ホワイトペーパーを作成する
 
では、一体なぜ情報発信をするのか。
目的はシンプルです。
これらはすべて、発信の主体(企業など)が、見込み顧客から
「役に立つ情報源」
として認識してもらいたいからです。
 
「役に立つ情報源」とはすなわち、専門家やインフルエンサー、あるいは新聞やテレビといったメディアのような位置にある存在です。
「広告」のように、こちらから叫ぶことで人を呼び込むのではなく、人が訪ねてきて、質問をするようにコミュニケーションを設計する。
その結果として、「情報を取りに来た人」が見込み顧客となり、商売に結び付く。これが商売における「情報発信」の主要な目標です。
 
ところがこの「情報発信」。
言うは易く行うは難しとはこのことで、マーケティングの担当者であっても、「何を発信したらよいか、よくわからない」という声をよく聞きます。
 
例えば、あなたが仮に、駆け出しのライターだとしましょう。
どのようなことを情報発信すれば、ライティングの仕事がもらえるでしょう?
あるいは、新規開業したラーメン店の店主だったとしたら。
果たして何を情報発信すれば、お店にお客さんが来てくれるでしょう?
 
これらの問いに答えることは、それほど簡単ではありません。
「情報発信によって、役に立つ情報源だとみなされる」ことは一つの技術であり、実践しないと身につかないことでもあります。
本稿では、この「「役に立つ情報源」として見てもらうための技法」について、述べます。
 

「情報源」と「広告」の違い5点

情報源と対照的なのは、実は広告です。
反対のことをしているといっても過言ではありません。
そこで、。情報源と広告との違いを挙げました。

以下の5点です。

 

1.ノウハウを発信する行為は「情報源」、商品情報を発信する行為は「広告」

読者の印象の話です。
一般的に読者は、商品情報を発信している主体を「売り込み」ととらえます。
そして、売り込みをかけてくる主体が発信する情報はすべて、「広告」です。
例えば仮にあなたがライターだった場合
「ライターの実績」
「ライターのスペック」
「得意分野の記事」
などの情報発信は、すべて「広告」と捉えられます。
では逆に、ライティングのノウハウについて記述したらどうでしょう。例えば
「タイトルのつけ方」
「SEOライティングの方法」
「バズる記事の作り方」
といった具合です。これは「広告」に見えませんから、読者から「情報源」とみなされます。
 
ではラーメン店の店主だったらどうでしょう?
「新メニュー」
「うちのラーメンへのこだわり」
「お客様の声」
などの情報発信は、商品情報なので「広告」です。
逆にラーメンに関するノウハウ、例えば
「家庭でもできるラーメン店の味の出し方」
「プロがやっているネギの切り方のコツ」
「鶏ガラの処理の方法」
などについて発信すれば、これは「情報源」とみなされます。
 

上のYoutubeチャンネルは、ラーメン店の主人が「情報発信」をしていますが、すでに200万回再生されています。
もちろんこれは、「商品情報」ではなくノウハウの発信であると見られているからです。
 

2.良しあしの判断基準を提供するのが「情報源」、利点だけを紹介するのは「広告」

情報源は「中立性」「客観性」によって質を判断されます。
したがって、良いところだけを紹介する情報は、しばしば「広告」とみなされます。
いわゆる提灯記事というやつです。
 
それに対して、読者が情報発信の主体を「良い情報源である」と認識するのは、判断基準を提供した時です。
広告のように「良い」「悪い」だけを言うのではなく、「良い」「悪い」の判断基準を提供するのです。
 
例えばライターであれば
「良い文章と悪い文章のちがい」
「品質の基準」
「読まれた文章と、読まれなかった文章の実例」
などに言及すれば、情報源だとみなされるでしょう。
ラーメン店であれば、
「見てわかるスープの質の良しあし」
「繁盛店と、閑古鳥が鳴いている店のやっていることのちがい」
「良い麺、悪い麺」
といったテーマは、「広告」ではなく、情報として歓迎されます。
単純に「うちのスープは最高だよ」「うちは繁盛しているよ」「うちの麵はツルツルもちもちだよ」と発信するだけでは、情報源とはみなされません。
 
また、似たようなケースですが、複数の会社の商品を比較する行為は「情報源」であり、特定の会社の商品だけを紹介するのは「広告」です。
 

3.「情報源」には余談があり、「広告」に余談はない

広告は「枠」に対して課金されますから、一般的には売り込み以外の活動に利用されることはありません。
要は「費用対効果」がある程度説明できる行為なのです。
それに対して「情報源」は、「枠」ではありません。
費用対効果として計算できない情報も流せるのです。
 
つまり、情報発信の中の「余談」は。発信者は広告アカウントではないですよ、というシグナルとなります。
この好事例が、料理研究家の土井善晴さんのTwitterアカウントです。
彼のツイッターのフォロワーは55万人。
料理研究家なので、日々のツイートは献立に関するものが多い。

ただし、これだけでは「広告アカウント」感が否めません。

ファンの中には、「土井善晴の人となり」に興味を持つ人もいるし、ノウハウを公開して人を引き付ける、という1.の手法に飽き飽きしている人もいるからです。
そこで発信に「余談」を混ぜ込む。

効率ではなく、効率を無視する行為が、結局のところ「広告臭さ」を無くすのです。
 

4.「情報源」は読者を楽しませるのが目的、「広告」は読者を不安にさせるのが目的

情報源は何よりもまず「エンターテインメント」でなくてはなりません。
いくら役に立つ情報でも、人間はつまらないものを継続して見に行くことはないからです。
面白いことは、役に立つことよりも圧倒的に人を引き付ける。
これはすべての発信者が知っておくべき事項です。
 
例えば少し前に話題になった、NHK教育テレビの番組である「テキシコー」。
 
番組名の由来は「プログラミング的思考」。その名の通り、この番組のテーマは、分解、組み合わせ、一般化、抽象化、シミュレーションの5つです。
 
高度な内容なのですが、テーマがエンタテインメント化されており、小学生でも楽しめる内容になっています。(webから閲覧可能です
プログラミングの学習はどうしてもハードルが高いように感じてしまいますが、この番組はうまく情報を楽しめるように作られています。
 
ただ、これはNHKが「プログラミング学習を売りつける気が全くない」からこそできたことかもしれません。
最終的に商品を買ってもらうことが目的になる動画は以下のようになります。
 
どちらかというと「プログラミング面白そう」というエンタテインメントではなく、広告は「不安にさせる」「不足していると思わせる」ことが中心になります。
一過性であればこれでよいのですが、「情報発信者」の発信を見るたびに「不安」になったら、うんざりしますよね。
ですから、「発信はエンタテインメント」というのが基本になるのです。
 

5.「情報源」は読者層を広くとり、「広告」は読者層を狭くとる

広告で何より重要なのは費用対効果ですから、無制限に打つことができません。
したがって、「その商品を買う可能性の高い人」だけに、絞り込んで広告を打つことが広告の前提条件となります。
 
ところが「情報発信」は違います。
むしろ、それが無制限に拡散してくれたほうが良いのです。
ということは必然的に、広告の話題は狭く、深くなります。
逆に情報発信の話題は、できるだけ多くの人が興味を持ち、拡散してくれるような内容が中心になります。
なので、実は「広告マン」ほど、情報発信が苦手、という面白い現象が発生します。
 
情報発信をしたい人は、「ターゲットは」とか「ペルソナは」などを考えるよりも、「できるだけ多くの人が興味を持ちそうな話題は何か」を考えたほうが、結果として成功するでしょう。
 
 

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