良い記事タイトルをつくる「要約」と「圧縮」の技術を紹介する。

このコンテンツは有料note「webライターとメディア運営者の、実践的教科書(安達裕哉著)」より転載しています。


前回は「どううまく書くか」ではなく、「なにを書くべきか」に焦点を当てた記事を書いた。
書き手を志すなら、「うまく書けない」より「書くことがない」ほうが遥かに深刻だ。

 

実際、内容さえ良ければ、書き方が多少まずくても、多くの人に読まれる。
だから重要度は
内容 >>>> 書き方(文章術)

と思って良い。

 

ただ、文章術が不要なのか、といえば、不要ではない。
webの文章は「ほぼ無料」かつ「浮気がかんたん」なので、難解な文章は敬遠される。「読まないといけない」という強制力が働きづらい。

 

だから、「読まれる文章」を書きたいなら、わかりやすい文章を書くに越したことはない。
いや、読まれないだけならまだ良い。
文章を誤読されてしまうと、なお悪い。
誤解からくる辛辣なコメントを見て、「いや、そんなこと言ってないんだけど……」と
やるせない気持ちになりたくはないだろう。

 

「誤解なく伝わる、わかり易い文章」を書く技術が身につけば、「著者の主張」をより広くつたえることが
できる可能性が大きく上がるのは間違いない。

タイトルは、極限までわかりやすく

そして、webでは特に「わかりやすさ」が求められるのが「タイトル」である。また、タイトルは短文のため、技術介入の余地も大きい。
要は、「タイトルづけの技術」は「うまい文章を書く技術」よりも重要だし、身につけやすいのだ。だから、あえて技術に序列をつければ、以下のようになる。
何が読まれるかを知る >>> タイトルづけ >>>> 記事の書き方
タイトルに強く引き付けられれば、中身が多少読みづらかろうが、ある程度読者は我慢してくれる。
ところが、タイトルがまずければ、「記事を読み始める」ことすらない。
実際webでは、殆どの読者はタイトルだけを見て読むか読まないかを判断するので、タイトル付けが悪ければ「良い内容」の記事でも、全く読まれないことが往々にしてある。

 

タイトル付けの技術

では、「タイトル付けの技術」とは、具体的に何か。
タイトルは、3つのステップで作られる。
1.読解 → 内容を正確に理解する
2.要約 → 仮タイトルをつくる
3.圧縮 → タイトルを作る

 

読解

まずは、読解。
学生時代、国語の試験問題で「問題文から著者の主張を抜き出せ」と言った読解問題があったが、やることは同じだ。
タイトルは内容を正確に反映していなければならない。
内容と異なるタイトルは、「釣りタイトル」と批判され、メディアや著者の信頼を損なう行為となる。
ただ、必要以上に恐れる必要はない。
著者が自分自身の記事にタイトルを付ける場合は、国語の試験問題と異なり「読解」をする必要がない。
私はライターの方々へ「タイトルから書き始めよ」とアドバイスをしているが、それを実践していれば、なおさらだ。
端的に言えば「読者を釣ってやろう」などと邪な気持ちを抱かず「読者に誠実であろう」とすれば、自然に読解はクリアされるだろう。
したがって「読解技術」は、もちろん必要だが、次の「要約」に比べれば、重要度は低い。

 

要約

ここから本題に入る。
問題は「要約」だ。
これは比較的、難易度が高い。
著者の主張を、数十文字の「仮タイトル」に圧縮するには技術が問われる。
では要約技術をどのように鍛えればよいか。実は、良い教材は「論文」に存在している。
論文は「アブストラクト」と言われる要旨をまとめた文を冒頭に置くことが慣例となっており、「アブストラクトの書き方」については、文献が有り余るほど存在している。
例えば、個人的には名古屋大学の戸田山氏の書籍が参考になる。
3–6でも触れたが、アブストラクトとは、論文の内容を一段落くらいで手短に要約・紹介した「論文概要」のことだ。(中略)
アブストラクトにはつぎの項目が含まれる。論文の性格によっては、すべての項目を含んでいなくてもよいし、分野による違いもある。そこで、かならず入れなければならない項目を★で示すことにしよう。

 

【アブストラクトに書くべきこと】
★論文の目的(どのような問いに取り組んだのか/何を明らかにしようとしたのか)
★論文の結論(問いに対しどのような答えを出したのか/調査の結果何がわかったか)
★論文の本体でどのように論が展開されるか

 

(太字は筆者)
「論文」を「記事」と読み替えれば、要約を作成する時にそのまま適用可能だ。

 

あるいは「理科系の作文技術」でおなじみの木下是雄氏は要約を
「目標規定文」とし、次のように書いている。

主題をはっきりきめたら,次に,自分は何を目標としてその文書を書くのか,そこで何を主張しようとするのかを熟考して,それを一つの文にまとめて書いてみることを勧める。そういう文を目標規定文ということにしよう。

目標規定文に含まれる内容は、以下の通りだ。
「主題に関してあることを主張し,または否定しようとする意思を明示した文(センテンス)」

 

(太字は筆者)
これは上に掲げた、戸田山氏のアブストラクトの内容とほぼ同一だ。
具体的に、木下是雄氏は2つほどの例を上げているが、以下、太字で書かれた目標規定文はまさに「仮タイトル」である。
例1
たとえば,学生が「日本の春は寒くなりつつあるか?」という課題でレポートを求められたとしよう.

 

彼はまず,過去60年間の気象データを調査して,ここ10年間の春の気象のデータをそれ以前のものと比較する.この種のデータには年ごとのかなり大幅な変動がつきものだが,そのことを考慮して統計的な検定をこころみてもやはり,「平均的にみると,ここ10年間は,春先に暖かくなりはじめる時期がおそく,また春の平均気温も低い」という結論に到達したとする.

 

そこでレポートをまとめるわけだが,そのときに,本文を書きはじめるより前に,自分がそこで主張するつもりのことを,まず,たとえば次のような目標規定文にまとめてみるべきだ――というのが私の考えなのである.

 

このレポートでは,ランダムな変動を考慮に入れても,1970年代にはいってからは春がくるのがおくれ,また春が寒くなりつつある10)ことを示す.
例2
技術部員が「あき缶を資源として活用する方法」の調査研究を命じられたとする。
これはなかなか大変な調査で1年以上かかるかもしれない。その報告の執筆は,調査結果を整理・熟考して,たとえば次のような目標規定文をまとめることから始めるべきである:
この報告は,「いま最も有望なあき缶利用法は,あき缶を,銅鉱山でバクテリア・リーチングによって鉱水から銅を回収する際に必要な鉄スクラップとして使うことだ」と主張するために書く。
このように「要約技術」は先行している知見が数多くあり、「論文の書き方」などの文献をあたることで、技術の各論を詳しく知ることができる。
なお、余談であるが、本記事の仮タイトルは
「良いタイトルをつけるための、記事の要約技術、圧縮技術を論文と新聞から学ぼう」だった。

 

圧縮

ただ、注意も必要だ。
「アブストラクト」や「目標規定文」は、タイトルにしては長すぎるのだ。
そこで最後、「圧縮」をかける。
ヤフー・トピックスはニュースをたった13文字に圧縮しているというが、
これぞ「タイトル芸」の極みと言ってもよいだろう。
もちろん、ここまで短くする必要はないが、
「同じ内容なら短いほうが良い」と考えておくことは重要だ。

 

例えば木下是雄氏の1つ目の事例
「このレポートでは,ランダムな変動を考慮に入れても,1970年代にはいってからは春がくるのがおくれ,また春が寒くなりつつあることを示す。」
という目標規定文について。
仮に、私が記事のタイトルを生成するのであれば、以下のような操作を行う。

 

・「このレポートでは」は自明なので削る。
・「ランダムな変動を考慮に入れても」は、原文で統計的処理をしたことが記述されているので、「統計的には」と置き換える。
・「1970年代にはいってから」は、「1970年代から」と短くできるので、短くする。
・「春がくるのがおくれ、また春が寒くなりつつある」は、「春が」が重複しているので、「春が遅く、同時に寒くなりつつもある」と、一つにまとめる。
・「示す」も自明なので削る。
結果として、仮に記事のタイトル(論文ではなく)にするならば、
「統計的には、1970年代から春が遅く、同時に寒くなりつつもある」
と、かなり短くすることができる。
このあたりは「新聞記者」が見出しなどを作る時に用いる技術と同様に、
「同じ意味で、短い言葉はないか」と探す作業になる。

 

タイトルは「修飾語の順番」に注意を払う

さらに、短い文章は、誤解を招かないように、「修飾語の順番」に最新の注意を払う。
例えば、朝日新聞の新聞記者であり「日本語の作文技術」の著者でもあった本多勝一は、北海道大学の構内を歩いているとき、立て札の一文に「変だ」と思ったという。
「芝生をいためる球技等の行為は厳禁する」
この一文は、なんとなく変だと思った。「非文」とまではいわぬにしても、言いたいことと書かれたこととに論理的くいちがいがあるのではないか。
お読みいただいている方に、この違和感は察知できるだろうか。
「なにが変で」「どう直したらよいか」すこし思案していただきたい。

本多勝一の言葉を引用しよう。
すぐに考えつくのは、それならば「芝生をいためない球技」ならやってもいいのか、といった解釈である。

屁理屈だとは言えまい。

これは全くそのとおりで、論理的に反論できない。
日本語としては、
「球技等はすべて厳禁」なのか「芝生をいためる球技は厳禁」なのか、
どちらの解釈も成り立つからである。

 

タイトルはまさにこの「立て札」と同じだ。
一言で主張を伝え、行動を促すことを目的としているなら、
「どちらにも解釈できてしまうタイトル」が悪いタイトルであることは明白だろう。
では、この文章をどのように修正するか。
本多勝一は、2つの語が、平等に「行為は」を修飾してしまうからだ、という。
「芝生をいためる」↘
            行為は → 厳禁する。
「球技等の」   ↗
この場合「修飾語の順番を入れ替える」だけで、読みやすさが劇的に改善される。
「芝生をいためる球技等の行為は厳禁する」

 

「球技等の芝生をいためる行為は厳禁する」
とすれば誤解を招くことはない。

 

本多勝一氏は「修飾語の順序」に、続編の「実戦・日本語の作文技術」を含めて、最も多くのページを割いており、ルールに従って「語順」を変えるだけで、劇的に日本語がわかりやすくなる事例を数多く紹介している。

 

具体的には以下の4つのルールだ。
原則として抑えておくと、読みやすさの向上につながるだろう。

 

1.節(切り出しても文として成立する)を先にし、句(切り出すと文として成立しない)を後にする。
✕早くライトを消して止まらずに走る。
◯ライトを消して止まらずに早く走る。

 

2.長い修飾語は前に、短い修飾語は後に。
✕明日は雨だとこの地方の自然に長くなじんできた私は直感した。
◯この地方の自然に長くなじんできた私は明日は雨だと直感した。

 

3.大状況から小状況へ、重大なものから重大でないものへ
✕豊かな潤いをもえる若葉に初夏の雨が与えた。
◯初夏の雨がもえる若葉に豊かな潤いを与えた。

 

4.親和度(なじみ)の強弱による配置転換
✕初夏のみどりがもえる夕日に照り映えた。
◯もえる夕日に初夏のみどりが照り映えた。
(みどり、ともえる、がセットで使われるケースも多いので、誤解を招かないように離す)

 

このように修飾語の「語順」一つで、大きく可読性や印象が変わってしまうが、逆に「手間」がかからない割には効果の大きい技術と言えよう。

 

以上が「タイトル」を作る時に抑えておくと良い、テクニックの話だ。
「タイトルに含めるべき内容」という、タイトルの要素に係る話は、別に記事化しているのでそちらも合わせて参照いただくと良いだろう。

 

【2】Books&Appsが実践している、記事タイトルのつけかた。

 

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