このコンテンツは有料note「webライターとメディア運営者の、実践的教科書(安達裕哉著)」より転載しています。
弊社はオウンドメディアの運営支援を行っている会社ですから、当然のように様々なオウンドメディアのご相談を受けます。
そうしたご相談の内容は本当に様々ですが、あえて類型化してしまうと、オウンドメディアの課題は以下の3点に集約されます。
1.良質の記事を作れない
2.読者が増えない
3.収益化できない
だから、ご相談の内容も、
「面白い記事をつくりたいとおもっています」とか、
「ページビューを増やす施策をしりたい」とか、
「コンバージョン率を上げたい」とか、
そのような施策の話になりがちです。
ですが、物事はそう簡単ではありません。実は、個別にボチボチ手を打ってもあまり望む成果が得られないことがほとんどです。
なぜなら、これらの課題は一見、独立している個別の問題に見えますが、実は根は全てつながっているからです。その「根にある問題」を解決しない限り、課題は解決しません。
では、その根にある問題とは何でしょうか。
それは、「集客を検索エンジンに頼り切っている」という点です。
逆に言えば、オウンドメディアにおける問題はほとんどすべて「検索エンジン以外の集客手段を持てない」ことに起因します。
「検索エンジン以外の集客手段を持てない」ので、良質の記事を作れない。
「検索エンジン以外の集客手段を持てない」ので、読者が増えない。
「検索エンジン以外の集客手段を持てない」ので、収益化できない。
そう言えるのです。
実際、Books&Apps読者の流入元構成は以下の通り、検索からは3割ちょっとにとどまっています。
検索結果ページは「Googleの一部」とみなされる
では一体なぜ、オウンドメディアが「検索流入」に頼りすぎると、問題が起きるのでしょう。
それは、検索エンジンを使う動機が、「調べ物」だからです。
例えば、インターネットがなかった頃の世界を想像してみてください。
ちょっとした調べ物をする時、何をしたでしょう?
一つは辞書をひくこと。そしてもう一つは本屋さんにでかけていって、雑誌などを立ち読みすることではないでしょうか。
そこで考えてください。
辞書を引いた時、その「項目の書き手」を意識したことはありますか?
ないですよね。
書店で雑誌をを立ち読みした時、この雑誌を定期購読しよう、と思いますか?
まあ、ほとんどないですよね。
実際には、調べ物をした雑誌の名前すら覚えていない人がほとんどではないかと思います。だから、たまたまその回の雑誌を買うことはあっても、「定期的に」雑誌を買うまで行くのはよほどのことがなければありません。
つまり「調べ物」をするときに、その情報が誰によって書かれたものなのか、あるいはどこに掲載されているものなのか、ということに関しては、我々はあまり注意を払わないのです。
オウンドメディア側が苦労して作ったページは「Googleの一部」であって、「◯◯というメディアのページ」とはならない。
「なにか面白い情報ないかなー」という理由で検索エンジンを使う人がいないので、「面白い情報を発信したい」「ファンを創りたい」メディア運営者にとっては大きな問題となるのです。
オウンドメディアは一見さんをいくら増やしてもダメで、「ファン」を作らなければならない
そう考えると、問題の全容が見えてきます。
例えば「良質な記事がつくれない」について。
「良質な記事」は、メディア運営者にとっては、「オリジナリティ」があることですが、Googleの検索結果の上位に表示させるためには、「現在の上位記事」に合わせて記事を網羅的にしなければならない。
結果的に、オリジナリティは失われがちです。
あるいは「読者が増えない」について。
「読者を増やす」ためには、サイトに訪れたひとを一見さんではなく、「ファン化」「リピーター化」する必要があります。
しかし「調べ物」をしている人は、メディアの記事をGoogleの一部だと思っているので、Googleのファンにはなりますが、メディアのファンにはなりません。
結果的に、記事をたくさん発行し続けないと、読者が増えない、となります。
あるいは「収益化できない」について。
「調べ物から収益化はしやすいのでは?」と思う方もいるでしょう。
たしかに「調べもの」から「購入」に至るケースは存在します。
ただし、多くの人は、購買に至るまで比較検討し、評判を調べて、ようやく購買に至ります。そのとき、「皆様のメディア」から買っていただける保証はありません。
むしろ、すでに住所情報もクレジットカード情報も入れている、Amazonや楽天で買うのではないでしょうか。
オウンドメディアの目的が「アフィリエイトで稼ぐ」のであれば、検索流入が多く、SEO対策をバリバリ施したサイトを運営するのは、合理的です。
しかし多くの「オウンドメディア」はAmazonや楽天のアフィリエイトで稼ぐのではありません。
オウンドメディアによる収益化は、自社のブランディングや、商品やサービスの購入が生じて、はじめて成立します。
理想的な流れは、
1.オウンドメディアの記事を読む
↓
2.メディアのファンになる
↓
3.メディアの運営元が出している商材/サービスの見込み客となる
↓
4.購買の発生
という流れでしょう。そのためには「Googleに好かれる記事」ばかり作っていてはダメです。
「お、面白そうな記事」と思ってくれた人を惹きつけ、
「このサイトの記事は質が高いので、ブックマークしておこう」
「SNSのアカウントをフォローしておこう」
「メールマガジンに登録しよう」
と、リピートのきっかけとなる行動を起こしてもらわなければならないのです。
そのためには「検索エンジン」ではなく、ファンを固定しやすい「SNS」からの流入を増やさなくてはなりません。
SNSからの読者を増やす手法
ではSNSからの読者を増やすのに、最も重要なことは何でしょう。
下の図を見てください。これは「一般人」が「ブランドを感じる」までの過程を示しています。
一般人が、メディアのコンテンツに触れ、納得感があれば潜在顧客となり、何回もメディアのコンテンツに触れているうちにファンになり、購買にいたり、リピート購買をするうちに「ブランド化」するという流れです。
【ファン化の流れ】
では、次に重要なことを聞きます。上の図のうち、メディアのだす情報を最も「拡散」してくれそうな人は誰でしょう?
↓
↓
↓
↓
↓
↓
当たり前ですよね。「ブランド」を感じてくれている人。すなわち購買客の中心にいる人達が、最も情報を拡散してくれます。
アップルで言えば「信者」と言われている人々です。
結果的に、我々の発信する情報は、中心から外に向かいます。要するに「ファン化」の逆です。
【情報の流れ】
だとすれば、我々の発信する情報は、まずは「ブランドを感じてくれている人たち」を喜ばせるようなものでなければなりません。
そうです。メディアの記事は「一般の人たち」に焦点を当てるのではなく、社員や熱烈な既存顧客、知り合いや家族に向けて、熱を持って書くべきなのです。
これが、どこぞの誰が見るかわからない「SEO記事」との本質的な違いです。
もちろん、第一回の記事(【1】インターネットで読まれる記事と、読まれない記事の決定的なちがい。)で紹介したように、拡散をしやすくするために、「多くの人が興味を持ちそうな話題」にする必要はあります。
が、その中でも「顔が思い浮かぶ知り合い」に向けて書くようにすると、「自分ごと」がよりリアルになり、圧倒的な勢いで拡散されます。
実際、私の記事に「知り合いの話」が多いのは、そのためであり、例えば、以下のような記事です。
私は常に、「Books&Appsの記事を楽しみに待ってくれている人」を想定して記事を書いており、その外側に広がるかどうかは、一旦記事を出したあとは、あまり気にしません。
だから、私は同じ記事を1日に複数回拡散することはしません。ファンの方々の評価次第だと思っているからです。
オウンドメディア運営者は「社員」「家族」「友人」と「既存顧客」に向けて、濃い記事を出せ。
ということで、SNSで本当に効果がある手法は、間違いなく
1.SNSで記事を出していることを、既存顧客と社員、家族に向けて発表すること
2.彼らが喜ぶ記事を出すこと
3.彼らからフィードバックを受けること
の3つです。
もちろん「SEO記事」のような一般的な話ではなく、「濃い記事」を出すことが重要です。
「メンバーの◯◯さんは面白がってくれるかな?」
「得意客の◯◯さんは、どう思ったかな?」
「妻は読んでくれるだろうか?」
「友達に気に入ってもらえるだろうか?」
そういった事を考えて運営するのが、オウンドメディアの真骨頂なのです。
そういった目的で書かれた記事は長期的に、貴社のメディアに大量のファンをつけ、ひいては会社の繁栄をもたらすことでしょう。
ぜひ、「想定読者」を変えて試してみてください。
(了)
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