かつてマイケル・ジョーダン全盛期の1990年代に日本でのNBAブームが巻き起こったことを知っている中年男子は多いと思います。
ここ最近日本のNBA「マニア界隈」では八村塁のレイカーズ移籍や渡邊雄太の活躍などで当時以上の大興奮で大変な盛り上がりになっているのですが、マニアでない「普通」の人にとって今のNBA人気はかつての輝きを失っているように映るかもしれません。
なぜならマイケル・ジョーダン引退後にコービー・ブライアント、レブロン・ジェームズ、ステフィン・カリーと新たなスーパースターが次々と現れていますが、日本のNBA中継はNHK-BSからwowowに移り、現在では楽天がNBA配信権を獲得し原則的にアプリ視聴のみで「(お金を払って)本当に見たい人しか見れない」からです。
それでも世界的に見ればNBAの人気が衰えたとは言えず、例えば選手年俸は30年前と比べて10倍になるなど大成長を遂げています。※1
※1 選手年俸はどれほど高騰した?30年前はレジェンドクラスも今季の新人と同程度【NBAサラリーランキング・PG番外編】〈DUNKSHOOT〉
そこで今回このティネクトブログでは、なぜこれほどNBAがビジネス的に成功しているのか、ChatGPTにNBAのマーケティング戦略やその変化の要因について尋ね、それが本当に正しいのかを人間を代表してマーケター業務9年兼NBAマニア30年の私(楢原)が、検証しつつ成功の要因を明らかにしていきます。
まずChatGPT先生にこのように質問しました↓
すると先生は4つの視点で回答してきましたので、それぞれ検証していきたいと思います。
1.スター選手のパワー
なるほどw
「スター選手のパワー」とは、スター選手たちがNBAの人気を引き上げたということだと思います。
これは確かにそう言えます。
バスケットボールはチームスポーツですが、NBAの魅力=スーパースターの魅力と言っても過言ではありません。(バスケ部出身者やファン歴長くなれば多様な視点で楽しむことができることを承知の上で言ってます)
NBAファンになる典型的なパターンは、「人間離れした凄まじいプレー」を見て「こんなことできるんだ!?」と興味を持つ場合が最も多いからです。
私自身がまさにその例で、ご多聞に漏れずマイケル・ジョーダンによってNBAの魅力に引き込まれました。
私たち世代がNBAの魅力に引き込まれるきっかけを作ったのは、間違いなくマイケル・ジョーダンだったと言えます。
マイケル・ジョーダン凄すぎw
というのは簡単なのですが、NBAのスーパースターが魅力的に見えるのは、バスケの視聴方法も大いに関係しています。
バスケットボールはプレイヤー10人でコートも比較的狭く、攻守がはっきりしていて得点シーンが多い特徴があります。
例えば世界最大のプロスポーツの1つであるサッカーはコート上に22人で得点シーンは1試合につき3-4回程ですが、バスケは両チーム合わせて200得点以上入ります。
これはつまりハイライトシーンが取り上げられる状況が多く存在し、故にスーパースターのスーパープレーを目にする機会が圧倒的に多いのです。
レギュラーシーズン中は毎日7〜8試合ほど行われていますが、日本では滅多に見れないポスターダンク(用語1)は試合ごとに発生し、ブザービーター(用語2)も毎日のようにあります。
用語1:相手からの接触をものともせず頭越しに決めるダンク。正式にはポスタライズドダンク。やられた相手をポスターにしてやったという意味。
用語2:試合終了間際に勝ち越しシュートを決めること。最近ではクォーターごとの最後のショットが入った場合もブザービーターと呼ばれる
ただし回答にはChatGPT特有の本当っぽい嘘が一つだけ見受けられます。それは、
“マイケル・ジョーダン、シャキール・オニール、レブロン・ジェームズなど、ゲーム自体を超越したスーパースターを生み出しました。”
という部分です。
もしNBAを知っている「人間」がこの表現をするならば、マイケル・ジョーダン、コービー・ブライアント、レブロン・ジェームズとなるでしょう。
90年代、00年代、10年代を代表するスーパースターとして一般的にこの三者が挙げられます。シャキール・オニールも間違いなくスーパースターですが、各年代で一人ずつ挙げるとなると、この三者が最も一般的です。
なぜかと問われれば、これはNBAファンたちの間での暗黙の了解のようなものです。ここでその話をはじめると、この場所がNBAマニアの間でのGOAT(史上最高の選手)論争に巻き込まれることになりますwですのでこの場では控えさせて頂きます。
2.グローバルなアウトリーチ
この主張も間違っていません。
日本語では「グローバルなアウトリーチ」のような表現はあまり使われませんが、これはNBAのグローバル戦略を指しています。
NBAがグローバルな戦略を展開し始めたきっかけは、バルセロナオリンピックに初代ドリームチームを派遣したことでした。この出来事がNBAを世界的なブームへと担ぎ上げ、それ以降はファンを獲得するだけでなく、ヨーロッパ、アフリカ、アジア各地からNBAチームに入団する選手が増加しました。
この変化はNBA開幕時に発表される外国人登録選手数に如実に現れています。
NBAが公式発表している数値は以下の通りです↓
1995-96シーズン 24名(カナダ16名 その他8名)※2 ↓ 2022-23シーズン 120名(カナダ20名、オーストラリア10名、フランス9名、ドイツ6名、ナイジェリア、セルビア、スペインそれぞれ5名…日本2名など計40カ国)※3 |
※2 NBA rosters feature 108 international players in 2019-20, NBA.com, 2019年
※3 NBA rosters feature 120 international players from 40 countries, NBA.com, 2022年
リーグ全体で多くても年間500名ほどしかプレーできないNBAで約30年間で100名近く増えており、22-23シーズン開幕時の外国人選手比率は26.7%(120名/450名)4人に1人は外国人選手なのです。
実力面でも、今シーズンの優勝チームデンバーナゲッツのエース、ニコラ・ヨキッチはヨーロッパのセルビア出身、レギュラーシーズンMVPのジョエル・エンビード(76ers)はアフリカのカメルーン出身です。先日行われたドラフト1位指名選手はフランス出身のビクター・ウェンバンヤマです。
※NBAドラフトは事前に指名順位が決められチームが順番に指名していくウェーバー方式で30チーム各2巡目60名まで
またアジア選手は少ないものの、日本から八村塁や渡邊雄太が活躍しており、NBA下部組織Gリーグでは馬場雄大がプレーしています。
1つだけChatGPT回答の違和感をあげるとすれば下記部分↓
”特に中国やヨーロッパでのリーグの人気は非常に高い”
「中国」の人気に驚く方もいるかもしれませんが、実はこれには明確な根拠があります。
2002年ヒューストン・ロケッツにドラフト1位指名された中国出身の選手ヤオ・ミンがその後約10年間同チームで活躍したことにより、中国でのNBA人気が一気に高まりました。
3.デジタルメディアとテクノロジー
これも鋭い視点です。
デジタルメディアとテクノロジーとは端的に言うと「IT」のことです。
NBAはITの活用に関しては非常に先見の明がありました。
なぜ言い切れるかって?
私自身がその生き証人だからですw
私が大学に入学した1995年にそこで初めて触れたインターネットで探した情報はNBAのニュースでした。それはただ単にNBAの試合結果を見れるだけでしたが、TVや雑誌からしか情報を得られなかった時代に、リアルタイムで試合結果を知れることは非常にエポックなことでした。
さらに数年後、公式サイトNBA.comが開設され、RealPlayerというフォーマットで動画が視聴可能になりました。
その記憶が今も鮮明なのは、そのサイトで見たビンス・カーターの衝撃的なダンクを忘れられないからです。そのダンクは未だに伝説的ダンクとして度々取り上げられています。
そのダンクはこちら↓
(この動画のイントロの冒頭のダンクおよびtop2で紹介されているダンク)
NBAはSNSの導入も早く、インスタグラムでは早くから公式に試合のハイライトやランキングを配信しています。2014年からはNBAアプリのサブスクリプションサービスを通じて、全試合のライブ中継を提供しています
つい先日発表されたばかりのApple Visionのデモ画面でもNBAが登場し、その対応が発表されました。
NBAはそもそも他の米メジャースポーツのNFL、MLBと競合関係にあり、特にマイケルジョーダン出現以前はその人気が押され気味で最先端技術を積極的に導入し差別化せざるを得ない事情もあったようですが、今はIT活用がメジャースポーツで最も成功していると言ってもいい状況です。
このように、NBAは常に新しい技術を活用してファンとの繋がりを深めエンターテイメントとして常に進化していて、それによって人気を維持しさらに伸ばしていることは間違いありません。
4.マーチャンダイジングとパートナーシップ
この主張も正しいです。
この部分をより深く理解をするためには。まずはNBAの収益源を知る必要があります。
それは主に4つに大別されます。
(1)放映権料(2)広告スポンサー(3)チケット売上(4)グッズ売上げです。
(参考: NBAのチームって儲かるの? 知られざるNBAのビジネスとは, NBA Rakuten公式ページ)
放映権料は現在NBAはディズニー社及びタイム・ワーナー社とで9年間合計240億ドルの契約をしておりその巨額の収益は各チームに分配される仕組みです。チケット売上は、アリーナで行われる試合のチケット販売から生まれる収益です。
そしてグッズ売上げこそが「マーチャンダイジング」のことですが、より現代日本風に言うと推しのグッズ販売戦略でとでも言えばいいでしょうか。
NBAのジャージやキャップといったアパレル製品はもはや巨大ビジネスとなっていて、その一例として、マイケル・ジョーダンのエアジョーダンから始まったジョーダン・ブランドがあります。他にもアンダーアーマーやアディダスなどの有名スポーツブランドがNBA選手をサポートすることで、ファンとの結びつきを深め、NBAの人気をさらに高める相乗効果を生み出しているのです。
最後に「パートナーシップ」とは、赤裸々に言うとつまりは広告スポンサー獲得のことです。
NBAは多くの大手企業からの広告スポンサーを獲得しており、試合の中継やデジタルコンテンツ内に効果的に広告を組み込んでいます。特にサブスクリプションサービスによるオンデマンド視聴は全世界中に配信されるため、試合の合間に強制的に見せられる広告CMとは別に、様々な手法でスポンサー企業のロゴや商品名が表示されています。
スタジアム命名権からはじまりNBA各チームユニフォームへのスポンサーロゴ露出、コート上のスポンサーバナーなど、あらゆる場所でそれを見ることができます。(というか目にしなければスポンサーになる意味がない)
私がナイスアイデアと関心したのは、ゲームの終盤にその日最もカッコ良かったドリブルシュートが選ばれるのですが(通称:ドライブ)その賞の名前が「Honda drive of the game」です。もちろんスポンサーはホンダ技研です。(参考:八村 塁(ウィザーズ)、「コンニチワ!!」ダンクでピストンズを粉砕、月刊バスケットボールweb)
以上、ChatGPTの回答をNBAマニアの私が検証してきましたが、正直疲れましたw
私が言いたいと思っていたことを全て言ってきていて大体は合ってるなとは思ったのですが、その根拠とエビデンスを探すのは大変な作業でした。
ChatGPTの良いところは、それらを網羅的(これも必ずしも正確とは限らない)に吐き出して言語化してくれるところです。
つまり網羅性という点で非常に利便性がありますが、本当のこと言ってるのかどうかは結局「わかっている人」が確認しないといけないので、今後ChatGPTを使いこなすには今まで以上に専門性が求められるのではないかと思いました。
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【著者プロフィール】
楢原一雅(ティネクト取締役)
マーケティング担当