このコンテンツは有料note「webライターとメディア運営者の、実践的教科書(安達裕哉著)」より転載しています。
人材不足は、高齢化社会の進行や若年労働力の減少、専門的なスキルを必要とするポジションの拡大に起因しています。
特にITや医療、教育などの分野では、熟練した専門家が不足している状況が深刻化しています。経済協力開発機構(OECD)の報告によると、日本は今後も人手不足が予想されるトップの国の一つとされています。
生成AIとは、機械学習のアルゴリズムを活用して、テキスト、画像、音声などの新しいコンテンツを創出できる技術のことです。例えば、自然言語処理(NLP)を用いて、人間が書いたかのような文章を生成したり、深層学習により新しいデザインの製品を提案することが可能です。
生成AIは、人の代替であることが騒がれがちですが、実は人的リソースが不足しがちな作業を補完することにより、企業が直面する人材不足の問題を軽減する可能性を秘めています。
【採用】
1.AIによる求職者とのマッチング最適化
例えば、採用の領域です。従来の採用プロセスは、多大な時間と労力を要しますが、AIを用いることで効率化が図れます。
生成AIは、大量の履歴書データから適切な候補者を素早く抽出するアルゴリズムを開発することができます。LinkedInやIndeedなどのプラットフォームは既にAIマッチングシステムを導入しており、その精度を上げる研究が行われています。
2.仮想面接官による採用効率化
AIによる仮想面接官システムは、面接プロセスの標準化と時間削減を実現します。例えば、HireVueのようなシステムは、候補者の返答から非言語的コミュニケーション能力を評価し、客観的なデータに基づいて採用判断を行うことができます。
さらに言えば、今までに採用された人物の履歴書とパフォーマンスをChatGPTなどの生成AIに学習させ、「わが社でパフォーマンスの上がりやすい人材」をAIに判定させることも可能かもしれません。
こうした「オリジナルのAIによる採用」試みはすでにいくつかの企業において実際に始まっており、今後は一般化していくことが予想されます。
【社員のスキル補完と育成】
1.生成AIによる指導
個々の社員のスキルセットに合わせたカスタマイズ研修が生成AIによって提供されます。
例えば、CourseraやUdacityなどのオンライン学習プラットフォームは、AIを利用してユーザーの学習過程を最適化するシステムを開発しており、これにより従業員個々の成長を促します。
これらを応用した「生成AIによる新人教育」の構想があります。
例えば、OJT中に新人が抱えた問題を「先輩」に聞くのがこれまでは一般的でした。
しかし、現場の忙しさや教えられる人の不足は、特に製造業でも顕著になりつつあります。
そんな時、社内にある資料をすべて生成AIに学習させ、AIに質問をして、問題を自己解決できるようにする、そして、質問の多かった内容を研修にフィードバックする、という事に取り組む会社が出てきています。
これが進むと「バーチャルメンターによる社員サポート」となります。バーチャルメンターは、生成AIを活用した社員のオンデマンドサポートシステムです。このメンターは24時間いつでも利用可能であり、労働者のキャリアアップやスキル獲得に随時協力します。
【ルーティン業務自動化】
1.AIによるメール業務の自動化
生成AIは、繰り返し行われるルーティン業務の自動化を可能にします。この自動化により、人間はより創造的かつ高付加価値な作業に集中することができます。ロンドン大学カレッジの研究では、AIによる自動化が仕事の生産性を25%以上向上させる可能性が示されています。
メールの処理は、ビジネスパーソンの生産性に大きな影響を与える要素です。日々の業務において、メールの自動応答と整理は、時間を有効に利用する重要な手段となります。例えばAIを活用することで、メールを即座に適切なフォルダに振り分けることが可能です。
AIは過去の行動パターンを学習し、着信したメールの内容を理解して行動を予測することができます。たとえば、`Fastmail`や`SaneBox`などのサービスは、メールの自動整理機能を提供しており、生産性を高めるために効果的なソリューションです。
あるいはスマートな自動返信システムを構築することで、メールの受信者に対して迅速かつ適切なレスポンスを提供できます。
例えば、`Gmail`の自動返信機能「スマートリプライ」や「スマートコンポーズ」は、実際の文脈に基づいて返信文案を生成します。
2.データ収集と報告書作成
ビジネスにおけるデータ処理は、時間のかかる作業であり、しばしば人為的なエラーの原因となります。しかし、AIの進化によって、今やデータ入力や報告書作成の負担を大幅に軽減することが可能です。
データ収集効率化のために、AIはデータ収集を自動化し、人的リソースの効果的な振り分けに貢献します。
企業は`web scraping`といったテクノロジーを用いて、必要なデータを効率的に収集することができ、手作業による収集作業に比べ、時間とコストを削減できます。
例えば私が代表を勤めるワークワンダースのメディアでは、AIがwebをクロールし、その日その日のAIの最新情報を集めて報告をするメディアを運用しています。このメディアは無人で運用され、日々の情報収集はAIによって完全に自動化されています。
また、AIはビッグデータを分析し、必要な結果を集約して報告書を生成します。これにより、経営層が迅速に意思決定を行うことをサポートします。
例えば上のメディアでは日々のニュースをダイジェスト化したメールマガジンを運用していますが、これらはAIの力によって自動化されています。
これらは実際に、社内の意思決定に使われる「調査報告」に応用することがすぐに可能な技術です。(技術に興味のある方はお問い合わせください)
2.記事作成・ソーシャルメディア運用業務におけるAIの支援
このラインより上のエリアが無料で表示されます。
生成AIは、デザイン、ライティング、音楽制作などのクリエイティブな作業においてもサポートを提供します。AIによる素案の生成や選択肢の提案により、人間のクリエイターはより幅広い選択肢から最適なものを選ぶことができるようになります。AdobeやIBMなどの企業は、既にクリエイティブ分野でのAI応用製品を提供しています。
例えば、AIツールを利用したコンテンツ作成では、過去のインタラクションデータをt分析し、エンゲージメントの高いコンテンツを生成します。
`Hootsuite`や`Buffer`といったツールではAIを駆使してユーザーの行動を分析し、効果的なポストを提案してくれます。
あるいは弊社で開発した「automagic」は、わずかなキーワードから自動で記事を生成することができ、コーポレートサイトのメディアの記事に実際に使われています。
さらに、これの応用として、ソーシャルメディアの効率的な管理があります。
ソーシャルメディアの運用は、個人や企業のブランド価値を高めるために不可欠です。AIを利用した自動化テクノロジーにより、ソーシャルメディアの影響力をさらに拡大することができます。
AIは、リアルタイムデータとユーザーの行動パターンを分析して最適な投稿時間を推奨します。これによって、各ソーシャルメディアプラットフォームにおけるエンゲージメントの最大化を図ることができます。
たとえば、`Sprout Social`のようなプラットフォームは、データに基づいた投稿スケジューリング機能を提供しています。
しかし、AIをソーシャルメディアに応用することの本丸は、やはり『生成AI』です。生成AIは、コメントやメッセージに対する迅速かつパーソナライズされた対応を実現します。
例えばコーポレートサイトの記事、もしくは商品紹介を気の利いたツイートにしてください、とお願いすれば、生成AIはそれをいとも簡単に実現してくれます。
【プロジェクト管理】
プロジェクト管理とタスクの割当は組織にとって、重要なプロセスです。
特に、生成AIを利用することにより、これらの処理を最適化し、効率を向上させることができます。
1.タスク分解と割り当て
AIは個々のメンバーのスキルと過去のパフォーマンスデータを分析して、最も適切なタスクを割り当てることができます。
外部ツールでは、`Asana`や`Trello`などのプロジェクト管理ツールは、これらの情報に基づいて自動的にタスクをアサインする機能を提供しています。
生成AIでは、「タスクを分解してくれ」とお願いをするだけでも、タスクの具体化と詳細化を自動で行ってくれます。
2.進捗管理
プロジェクト進行状況の自動監視は、リアルタイムでの問題発見や解決を可能にします。
AIシステムは、プロジェクトの進捗とリソースの利用状況を監視し、逸脱が見られる際には自動的に調整を行い、プロジェクトを軌道に戻します。
これは実際に、タスク管理ソフト notionとChatGPTを組み合わせたシステムの事例です。
タスクの進捗に対して、遅れが見られればツッコミを入れ、達成していれば褒めてくれる、というシンプルな機能ですが、上司がいちいち見る手間を省き、アラートを上げてくれます。
また、AIアシスタントは、チーム内でのコミュニケーションを円滑にするための重要なツールです。たとえば、`Slack`のAI機能は、メッセージのコンテキストを理解し、関連する情報やアクションアイテムを推薦することで、チームメンバー間のコミュニケーションをサポートします。
個人の時間管理は、効果的な業務遂行において重要な要素です。AIを活用したスケジュール管理は、煩雑なタスクから時間を解放し、より重要な業務に集中することができます。
AIを活用したシステムは、参加者の予定を把握し、最適な会議日程を自動的に提案し、招待を送ることができます。`Acuity Scheduling`などのサービスは、会議やイベントのスケジュールを効率的に管理する手助けとなります。
【チャットボット】
1.FAQに対して回答
自然言語処理(NLP)を使用したチャットボットは、顧客の問い合わせに対応することでサポート業務の効率化に貢献しています。
具体例として、アメリカのオンライン小売大手アマゾン(Amazon)は顧客サービスにチャットボットを導入し、顧客からの問い合わせに迅速かつ正確に応答しています。チャットボットは、シンプルな配送状況の確認から、商品の返品手続きの案内、あるいは顧客の購買履歴に基づいたおすすめ商品の提示など、様々な対応が可能です。
さらにチャットボットの活用事例として、金融業界での積極的な採用が見られます。たとえば、銀行やクレジットカード会社は、顧客からの問い合わせに24時間対応するチャットボットを設置し、残高照会、最近の取引履歴の確認、請求書の支払い、さらにはセキュリティ関連の質問への対応などの機能を提供しています。
JPモルガン・チェース銀行は、自社の「COIN」というAIプラットフォームを使用し、複雑な法的文書の解析を行うチャットボットを開発した事例が有名です。このシステムは、以前人間が数時間かけて行っていた作業をわずか数秒で完了させることが可能であり、大幅な効率化がなされています。
あるいは、IBMのWatson Assistantなどの先進的なチャットボットは、ユーザーからの質問に対して情報のみならず、感情を読み取る機能を備えています。これにより、ユーザーがフラストレーションを感じた際には、より人間味のある対応ができるようになっています。
2.FAQなしチャットボット
一方で、チャットボットの導入にあたっては、その限界を理解し、ユーザー満足度を高めるための工夫が必要です。
例えば、現時点では世の中のチャットボットプロダクトのほとんどが、FAQやシナリオを作成する必要があります。
つまり、人の手で一問一答形式のドキュメントを作らなければなりません。
また、ルールが変わった都度、FAQを作り直すという、膨大な手間が発生し続けます。
これではチャットボットを気軽に導入ができません。
また、チャットボットが解決できない複雑な問い合わせについては、スムーズに人間のオペレーターにエスカレートする仕組みを整えることも必要です。
しかし、最近の生成AIの出現で、業界が様変わりする可能性があります。
というのも、ChatGPTなどの生成AIを用いたプロダクトでは、FAQをつくることなしに、チャットボットの導入が可能なものがいくつか出てきています。
以上、人材不足への対策としての、ChatGPTの応用事例と、AIを利用したwebサービスあれこれでした。
現時点でもかなりのAI関連サービスが出てきていますが、生成AIを中心として、業界地図はかなりこの先1年で変わりそうです。
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【著者プロフィール】
安達裕哉
元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。
◯X:安達裕哉
◯有料noteでメディア運営・ライティングノウハウ発信中(webライターとメディア運営者の実践的教科書)