このコンテンツは有料note「webライターとメディア運営者の、実践的教科書(安達裕哉著)」より転載しています。
「副業で月に数十万、数百万を稼ぐ人は、何をしているのか」というテーマで、マイナビさんに寄稿した記事が、大変よく読まれました。
副業で月に数十万から数百万円を稼いでる人たちは、いったい何をしているのか(マイナビバイト ナレビ)結論としては、稼ぐ副業者は「本業」での能力を活かし、自らが勤務する会社以外の企業の手伝いをして稼いでいるのです。単純に言えば、企業にとっての「外注先」となる。これが一番稼げます。
種明かしは非常に簡単で、副業で稼ぐにはとにかく、「企業の外注先」になることが最も近道です。
「まあ、そうだろうな」という方も数多くいるでしょう。
本来であれば法人に発注するような仕事を、個人に出してもらうことができれば、多少「個人向け」ということで値切られたとしても、非常に大きな金額の仕事ができます。
また、企業側にとっても「信用できる個人」を見つけることができれば、下手な法人に発注するよりもはるかに安上がりだというメリットがあり、双方にとって、有意義な取引となるでしょう。
実際、上で紹介した記事の中でも書きましたが、弊社でも
・AIコンサルタント/アドバイザー
・webメディアのメンテナンス(WordPressへの記事のアップ、記事の修正、Twitterへの投稿など)
・ライター
・デザイナー
・動画ディレクター
・SEOコンサルタント
といった仕事は、良い個人の方が見つかり、取引した実績がかなり多くあります。
特にコンサルタントをはじめとする、「知識労働」と呼ばれる分野は、法人との取引の場合でも「担当者」のパフォーマンスによってクオリティがまちまちであることも。
「それなら最初から個人に」という判断も、十分にあり得ます。
コンサル会社では「営業」が非常に重視される
そんなわけで、副業をやろうとしているのであれば、法人との直接取引を目指すことが、一つの目標です。
ただ、ここにハードルもあります。
「法人営業って、どうやるの?」
という疑問です。
ただ、こうしたノウハウはあまり表に出てきませんでした。
また、注目されることも、あまりありませんでした。
なぜなら「法人営業」は企業によって様々な形態をとる上に、個人にとってそれほど興味深い分野ではないのです。
ルートセールス、代理店営業、飛び込み営業、テレアポセールス……
ですから、私は漠然と、営業は「会社を一つ一つ回る」「下っ端がやるもの」「泥臭い」という、テレビドラマか、マンガで描かれるような古いイメージを持っていました。
そのため、個人的にも、新卒でコンサルティング会社に就職した時、「営業はどうやるの」にあまり興味がわきませんでした。
大抵の学生もそうだと思いますが、私は「コンサルティング」そのものには非常に興味がありましたが、「コンサルティングという仕事の獲得」には、まったく目を向けていなかったのです。
でも実態はまったくちがっていました。
コンサルティング会社では
・役職が上になればなるほど、営業の仕事が増える
・最も能力の高いコンサルタントは、営業にいる
・人事評価において「営業活動」の項目は重要
ということが、常識だったのです。
つまり、出世しようと思ったなら、必ず営業を憶えなければなりませんでした。
入社してすぐに、その現実を知った私は、「コンサルティング」を憶えると同時に、「営業」にも取り組むことになったのです。
新人はまず〇〇からやれ
そういうわけで、私が所属していた組織では、入社初年度から、コンサルタントの評価項目に「営業活動」の項目が入ってきました。
では人脈もコネもない新人に、どのような営業活動が期待されていたのか。それは、とても単純な、2つの行為でした。
このラインより上のエリアが無料で表示されます。
一つは、既存のお客さんの「上位者」に会うこと。
一般的には、役職が上がるほど、他社の知り合いが増えますから、この活動のためには、経営者と仲良くなる必要がありました。
そのため、コンサルタントは「意識的に口実を作って、経営者(大企業であれば、部長以上)に会いに行く」ことが、一つの重要なタスクになりました。
もちろん、まったく相手にされない事もあります。
が、中には若手をかわいがってくれる人や、外部の人間に興味を持ってくれる人もおり、活動をすれば、一定の成果は必ず出ます。
そこで、上位者が会社の成果をどのように考えているか、現状の課題は何かをヒアリングすることが「営業活動」とされました。
もう一つは、外部の交流会や、協会組織の勉強会などに出席し、知り合いを増やしていくこと。
それもただ出席すればよい、というものではなく、「自分の仕事」をアピールできるような場所に行くことでした。
つまり、単なる交流会ではなく、例えば勉強会、読書会、検討会といった「発表」の場が与えられるところが良いとされます。
ただし、ここで重要なのは「仕事の獲得」ではなく、「他の人の役に立つこと」が目的とされていた点です。
「会合」の出席者に対して価値あるアウトプットを提供することで、会合のなかで、役に立つ人間だと認識されることが、重要だとされました。
また、知り合いが増えれば増えるほど、「つなぐ」行為には価値が出ますから、自分の知り合いと知り合いをつなぐ行為も推奨されました。
コンサルタント2年目から3年目に求められた営業活動
コンサルタントとして2年目から3年目になると、上のような「人に会うこと」だけでは評価されなくなります。
この時期になると、さらに2つの行為を「営業活動」として評価されるようになりました。
一つは、「既存のお客さんに、他社の紹介をお願いすること」。
仕事である程度の実績を出すと、お客さんに「お知り合いを紹介していただけないでしょうか」ということができます。
仕事をきちんとやってさえいれば、これを言うことで嫌がられる、ということはまずないため、お願いをすること自体は、必ず実施するように徹底されました。
ただ、仕事の満足度が高いからと言って、紹介してくれるとは限りません。
本質的に人間のネットワークは、知り合いが圧倒的に多い「ハブ」的な人と、ほとんど知り合いがいない、孤立した人が混ざっています。
SNSで言うところの、フォロワーを数多く抱えている人が「ハブ」ともいえるのですが、その中で、かつ「紹介が好きな人」を探し当てるのが、この活動の本質です。SNSに当てはめると「よくリツイートする人」と言っても良いかもしれません。
そしてもう一つは「クロスセル」を実行するよう求められました。
クロスセルとは、自社の他の商材を、お客さんに買ってもらうことです。
例えば私は新卒で入社した当時から、「品質管理」の仕事をしていましたが、顧客にシステム開発業が多かったため、「プロジェクトマネジメント」や「人事評価」のコンサルティングをクロスセルしていました。
クロスセルをするためには、初年度で求められた「経営者に会うこと」や、コンサルティングの満足度をあげること、そして客のニーズをつかむことなど、1年目にやらされた営業活動の多くが役に立ちました。
コンサルタント4年目から5年目に求められた営業活動
この時期になると、「クロスセル」や「紹介」などの、営業実績が認められ、私はマネジャーになりました。
前述しましたが、営業活動で一定の成果がでないと、コンサルティング会社ではマネジャーになることができません。
ただ、マネジャーの仕事は、それまでのコンサルタントとしての仕事と大きく異なる点がありました。
それは「新規開拓営業」のタスクです。
それまでの営業活動は、主に「既存客」や「知り合い」に向けたもので、まったくの新規のお客さんに向けた営業活動は、免除されていました。
ところがマネジャーになったとたん、「新規開拓営業」のタスクを課せられ、成果を出すように促されるのです。
しかも「個人で開拓できる量」をはるかに超えて、部門全体の数字を作っていかなければなりません。
これは、それまでの発想を一回リセットして、「新しい法人客を開拓するしみ」を作らねばならない、ということでした。
そこで、先輩たちが主に何をしていたのか、というと、「ダイレクトメール」+「セミナー」です。
「品質管理に関するセミナーを行いますよ」
「人事に関するセミナーを行いますよ」
「情報セキュリティに関するセミナーを行いますよ」
といった、案内を、郵送もしくはFAXを使ったダイレクトメールを用いて行い、セミナーに集まってくれた人に対して、フォローアプローチを行う。
これが、基本的な法人営業の手続きでした。
これは、今でもよく行われている新規開拓営業の手法です。
したがって、目新しいものではありません。
が、ここで私は3つ、大事なことを学びました。
・「名簿」の必要性
・「コンテンツ発信」の必要性
・確実な「フォロー」の必要性
この3つがそろってこそ、はじめて「法人営業」が可能になるのです。
逆に言えば、この3つをきちんと回せるようになれば、成果を出すことは、そう難しくありません。
「名簿」をどのように作るか
しかし、そのころの私には、めぼしい名簿が手元にありませんでした。
また、会社で用意できたのは、「既存客の名簿」だけ。
ただ、ここには何度もダイレクトメールを送っており、反応は芳しいものではありません。
そこで法人営業の仕組みづくりの手始めに、「名簿」を用意しなければなりませんでした。
名簿の用意の方法は、
〇他社から買う(商工リサーチなどから名簿を購入するか、ダイレクトメールサービスなどを利用する)
〇自分たちで作る
の二つしかありません。
私の予算はそう潤沢ではなかったため、よほどの時でなければ、「自分たちでつくる」ことを選択しました。(他部門では、名簿を大量に買っているチームもありました)
手元に資金がない時にできることしては、以下のようなことを、すべて行いました。
・過去の名刺を掘り返す
・コーポレートサイトの改修を行う
・共催セミナーを行う
・雑誌・メディアへ寄稿する
・本を書く
コーポレートサイトや、過去の名刺については、何も目新しいことはありませんでしたが、最新の状態に保つことは、基本として重要です。
また、一昔前によく行われていたのは、「共催セミナー」でした。
セミナーコンテンツをすでに持っていたため、「名簿はあるけれども、コンテンツがない」という会社、例えば保険代理店や、パッケージソフトウェア会社などに声をかけ(飛び込みで声をかけることが多かったです)、こういうセミナーをできますが、貴社で開催可能ですか、と交渉するのです。
また、同時によく行っていたのが、雑誌や各種メディアへの寄稿、そして本を書くことです。
コンサルティング会社が本を書く目的はただ一つで、「名簿」の獲得なのです。
これらは出版社や雑誌社に対して細かくアプローチを行い、自分たちのことを売り込みながら、連載を書かせてもらう、という方法を取りました。
webを利用して「コンテンツ発信」と「名簿作り」は効率的になった
ところが、私がマネジャーになって数年で、大きな変化が起きました。
webサイトからの引き合いの急増です。
法人がweb上から情報を取ることが多くなり、webを充実させることで、極めて小さい予算で、名簿を作ることができるようになったのです。
ここにきて、
・ブログを書く(webで記事を公開する)
・メールマガジンを運用する
という手法が、大きく成果を出せるようになりました。
これは、コンテンツを発信することで、名簿の作成までできてしまう、という優れた手法であることがすぐにわかり、徐々にこちらの方がスタンダードになりました。
ブログでアクセスを集め、メールマガジンや、資料ダウンロードにつなげる。
メールマガジンや資料を読んでくれた人に対して、こちらから営業活動を行う。
このサイクルが回り出すと、名簿の作成からコンテンツ発信、そして営業活動までが一気通貫に回るようになります。
この辺りは、別途、詳細な話が本マガジンのバックナンバーにもありますので、ご覧ください。
「個人の副業」への応用
以上が、コンサルティング会社で私が行ってきた、法人営業の過程です。
「案外普通だな」と思った方も多いかもしれませんが、大手のコンサルティング会社においても、やっていることは対して変わらないのです。
それだけ法人営業という分野が、ある程度確立している分野だと言えるでしょう。また、「やり切る」ということが価値を持つ理由でもあります。
ではこれらの手法は「個人が副業先を獲得する」ことに応用可能なのでしょうか。
もちろん、可能です。
上の内容をまとめると、法人営業は非常に地味な活動の継続、具体的には
1.知人を増やすこと
2.既存の顧客へ、紹介をお願いすること
3.名簿を獲得すること
4.コンテンツを発信すること
5.見込み客へ継続的にフォローをかけること
の5つに集約されます。
1.については、当時のコンサルタントが皆やっていたように、様々な場所に顔を出すのは、現在でも有効です。
近年では「クラウドソーシング」という手法もあり、実績を積むことで、非常に多くの法人と接点を持つことが簡単になりました。
2.については、成果品や仕事のクオリティの話はもちろん重要なのですが、「紹介してください」と率直にお願いすることも、非常に重要です。
世の中には、意外にも「人と人を結ぶ」のがとても好きな人々が数多くいるのです。
3.4.は、費用をかけずにやるのであれば、ブログやSNSを通じての継続的な発信が良いでしょう。
ある程度コンテンツがたまってくれば、それを利用してセミナーを開催したり、他社のメディアに寄稿し、さらに多くの名簿を獲得することもできます。
また、短期で成果をあげたい、それなりに費用をかけられる、という状況であれば、メールサービスや、SNS広告、にリソースを投下してもかまわないと思います。
そして最後に5.が最も手間がかかり、最も重要なところです。
いくら名簿を収集しても、SNS上でバズっても、それだけで仕事を獲得できることはほぼありません。
仕事を獲得するには、こちらから「こういうサービスがありますが、どうですか?」と、営業をする必要があるからです。
以上が、「法人営業」を身に着けるために、コンサル会社でやらされたことです。
お役立ていただければ幸いです。
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【著者プロフィール】
安達裕哉
元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。
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