このコンテンツは有料note「webライターとメディア運営者の、実践的教科書(安達裕哉著)」より転載しています。
最初に断って置くと、本記事は「文章術」ではない。
文章術は、偉大な先人たちがたくさん出しているので、そちらを参考にすればよい。
では、本記事で提供するのは何か。
それは「仕組み」に関するものであり、「バズ記事」のテーマ設定、つまり話題の作り方に関するものだ。
平たくいえば「バズるためには、何を書けばよいか」を仕組みで解決してしまおう、という記事である。
なぜか。
記事がバズるかどうかは、ほとんど「テーマ」によって決まるからだ。
文体や、文章の巧拙、わかりやすさなどのテクニック的な部分の影響はないとは言えないが、
影響としては微小であり、バズるためには「何が語られているか」の影響が圧倒的に大きい。
そして、バズ記事を生み出す事の本質が
「文章力」ではなく「テーマ」である以上、属人性を排除して、機械的に再現できる余地がある。
無論、我々はそれを用いてメディアのオペレーションを回している。
ライターを登用する際にも、この基準を用いる。
また、我々はAIによる記事テーマの自動生成も活用しており、本記事で紹介されるロジックを実装している。
「バズらせるなら「共感」が重要なので、人間の感覚が重要だよ、テーマ選定は、センスだよ」という方もいるかも知れない。
だが、「共感」はコンセプトとして漠然としすぎており、実用に耐えない。
一体何が「共感」を生み出すのかを説明しなければ、再現性がない。
では、以下はタネ明かしだ。
具体的にどのように、バズるテーマを生成する仕組みを作っているのか。
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実は、我々が採用しているのは、フィルタリングをつかった、バズ記事のテーマ生成手法である。
具体的にはシンプルに、以下の6つのフィルターを順番に通して生き残ったテーマだけ記事とする。
1.多くの人の「興味」があるネタだ。
2.多くの人が「実感」が持てるネタだ。
3.多くの人が「ひとこと言える」ネタだ。
4. 多くの人の「常識と違うこと」が言えるネタだ。
5.多くの人の「願望」を叶えてあげるネタだ。
6、裏付けとなる「データ」が利用できるネタだ。
では、順番に解説していく。
1.多くの人の興味があるネタだ。
まずは、最も基本的なことから。チェックする。
今、書こうと思っている記事は、「多くの人の興味があるネタか」と。
これは本マガジンの最初の記事【1】インターネットで読まれる記事と、読まれない記事の決定的なちがい。に詳しく書いたため、それを引用する。
究極的には、自分(もしくは自分の利害)にしか興味がない人が世の中の大半を占めています。だから、記事も「自分に関係のあること」しか読まれない。このように言うと、「じゃあ、皆が関心がある話題しか書けないの?お金とか、健康とか、モテとか。」と聞かれることがあります。身も蓋もないですが、結論から言うとそのとおりです。広く読まれたいのであれば、「皆が関心のあるテーマ」で書くしかありません。これは、書き手の問題ではなく、マーケットの問題です。
実はこの話。
note社長の加藤氏も、同様のことを述べている。
加藤(前略)10万部とか20万部くらいの部数ならば、ある程度狙って作ることが出来るなっていうことがわかってきた気がしていました。でも、100万部ってどうやったら作れるのかなと思って、過去のミリオン・セラーを調べたりしていました。ちなみに、ミリオンセラーって年に1冊でるかでないかなんですよ。そしたらこういう結論が出てきて。要するに「一億人が共感するテーマじゃなきゃミリオンには届かない」。そしてそのテーマは限られていて、「家族」「健康」「お金」「恋愛」「青春」これくらいなんです。このあたりなら、全員が関係あるから、1億人が共感しうる。
要するに「マーケットのあるネタにせよ」というシンプルな話だ。
ただ、それは必ずしも記事は上の5分野をテーマに書かなくてはならない、ということにはならない。
実は【1】で述べたように、腕のあるライターは、どんなテーマでも「バズらせる」事ができる。
これは「どんな話題でも、みんなが興味を持つ話題に結びつけてしまう」テクニックを持っているからだ。
逆に、ライティングの腕に自身がなければ、素直に上の5分野にストレートにアプローチすることから始めることが望ましいだろう。
また余談だが、Books&Appsがライターを雇う時には、その人がバズ記事を生み出せるかどうかを見極めるために、「書いているネタ」を精査している。
逆に言えば、色恋沙汰、お金でしか記事を出していない人は、一昔前に乱立した「拝金主義のプロブロガー」なる人々のように書く力が低い、と判定できる。
逆に「数学」「哲学」などのニッチでバズ記事を生み出す人は、相当のライティング力があるとみなしてよい。
2.多くの人が「実感」が持てるネタだ。
多くの人が「興味」を持ってはいるが、「実感」を持てないテーマ、というものがある。
例えば、具体的には、「副業」や「転職」だ。
実は、副業や、転職の記事はバズりにくい。
(バズらないわけではない、理由は後述)なぜかといえば、副業や転職を頻繁に経験している人が少ないからだ。
また、転職をしている人でも「経験を思い出してくれ」と言われたら、細部はうろ覚えだろう。
だから「実感」が得にくい。
仮に「興味はある、だが実感はない」
というネタをwebに投下した場合、何が起きるか。
単純に、「ふーん」で終わる。
シェアやいいね、などの次のアクションがないのだ。
ちょうど、検索エンジンから提出される結果のようである。
検索エンジンの結果をシェアする人がほぼ皆無なのは、
それが「調べもの」であり、実感を伴わないからである。
副業や転職の記事をバズらせたいなら、「実感」が伴うように、テーマをひねる必要がある。
例えば、テーマとして
「今の会社で、市場価値を上げまくった人の話」は「年収アップの転職の秘訣」よりも、バズりやすい。
それは、単純に「自分の会社に残って市場価値を高めようとする人」のほうが、「転職する人」よりも、実感を持ちやすいからだ。
よりシステマチックにバズを狙うなら、「皆が毎日経験するようなこと」にテーマを絞る必要がある。
3.多くの人が「ひとこと言える」ネタだ。
「興味があり」
「実感が持てる」
記事であっても、バズらない記事がある。
それは「記事に一言言いにくい」記事だ。
単純に言えば、シェアしたり、いいねを押したりすることがはばかられるテーマはバズらない。
代表的なものは、エロ、コンプレックス系などだ。
例えば薄毛に関しての記事は、バズりにくい。
あたりまえなのだが、「それを拡散することで得られるメリット」があまりに小さいからだ。
逆に「シェアすることで、自分が頭が良さそうに見えるネタ」は
拡散されやすい。
言い換えると「みんなが専門家になれるような気がするネタ」
具体的には、教育、子育て、人間関係、評価などの「一言、知的っぽいことが言えるネタ」を書くべきである。
ただし、批判、あてつけ、皮肉などの「ネガティブな記事」は、注意が必要だ。
Twitterやはてななどの、匿名プラットフォーム上ではネガティブな記事も拡散されるが、
Facebookなどの実名プラットフォーム、あるいはTwitterであっても実名アカウントはよほどのことがない限り、それを拡散しない。
ネガティブな意見を広めるアカウントは、ネガティブな人々を集めるため、
実名でそれを行うのは、リスクが高いからだ。
したがって、記事のテーマはできれば「ポジティブな記事」に仕立て、
「やってみたい」
「頭いい」
「読めてよかった」
といった、ポジティブな意見を集めること。
逆の
「俺もクソだと思ってたよ」
「本当にムカつくよな」
「怒りが湧いてきました」
といったネガティブな意見を回避すること。
長期的には、批判しかできない発信者は、読者を疲れさせるので、淘汰される。
4.「常識と違うこと」が言えるネタか
裏を返せば、「オリジナリティを出せるテーマか」
をチェックすること。
「記事は当たり前のことを言わない」という、誠に当たり前の話をしているだけなのだが、重要である。
このあたりは、電通のコピーライターであった田中泰延氏が、著書「読みたいことを、書けばいい」の中で強く主張している。
他人と同じことを書いてネットの世界に放流すると、あなたのもとに寄せられる反響は「○○さんが言っているのと同じですね」である。他人の真似をして書いたもので原稿料をもらおうとすると、あなたのところにやってくるのは賞賛ではなく、警察である。もしくは著作権者からの内容証明郵便である。「わたしが言いたいことを書いている人がいない。じゃあ、自分が書くしかない」読み手として読みたいものを書くというのは、ここが出発点なのだ。
田中氏の主張通り、「すでに誰かが言っていること」を改めて主張する必要はない。
読者の時間を無駄にするだけの記事になるばかりか、バズとは程遠い記事になってしまうので、絶対にやってはいけない。
逆にいえば、内情を知っており、その領域に知見がある専門家は、バズる記事を書きやすい。
私がコンサルティングの経験をもとに書く記事がよく読まれるのは、現場を知っており、「常識と異なること」が現場で行わていることを、見知っているからだ。
そう言う意味で、「体験談」を組み込むことができるネタについては、「逆張り」にリアリティが増すので、バズを起こせる可能性がさらに高まる
5.多くの人の「願望」を叶えてあげるネタだ
「常識と違うこと」を書くのは良いが、あまりに常識を外れると、記事は嫌悪されてしまう。例えば、
・悪いやつが幸福になる話。
・理不尽が許されてしまう話。
・身勝手さが利益を生む話。
そういった記事は、理屈が正しいかどうかとは無関係に、黙殺されるか、炎上する。(大抵は、不愉快なので黙殺される)
そんなに迎合する必要あるの?と思う方も多いかもしれないが、
それについては、Books&Appsに寄稿いただいているfujiponさんの
論説が詳しい。
そもそも、「フィクション」には、「現実で多くの人が抱えている矛盾や、ままならないことを、架空の舞台の作品にして観客にみてもらう」という役割もある。その一方で、現実では善い人が幸せになるとは限らないし、因果応報なんて嘘だ、とみんな実感しているからこそ、「フィクションの中でくらいは、正義の味方に勝ってほしい、悪いやつらを成敗してほしい」という期待もあるのです。現実が変わらないのなら、せめて、映画や小説では「スッキリ」させてほしい。なんかどんよりとした「不快玉」みたいなものを投げつけられるために、1800円と2時間を提供するなんて虚しい、僕もそう感じたことは一度や二度ではありません。
上のfujiponさんの話は特に「フィクション」に限らない。事実を突きつけても、大半の人は「感情に合わない」ことを受け入れない。
マシュー・サイドは「多くの場合、人は自分の信念と相反する事実を突きつけられると、自分の過ちを認めるよりも、事実の解釈を変えてしまう」と述べている。これを、心理学の分野では「認知的不協和」と呼ぶ。
認知的不協和を起こした人は、批判の矛先を、自分自身ではなく作品に向ける。
「この記事はつまらない」
「作者は馬鹿だ」
と言い捨てることで、自分自身の不快感を解消しようとする。
したがってバズる話は、「不愉快な結末」を用意してはいけない。
たいていこうあれば良い、と願っている人が大勢いるオチにすること。
例えは悪いが、これは基本的にフェイクニュースの構造と同じと考えて良い。
昔、「フェイクニュースは、フェイクであるということを除けば、完璧なニュースだ」という言説を見た。
まさに皆が望むものを、望んだままに提供するからこそ、フェイクニュース読まれる。
それは、真実にとって脅威なのだ。
6、裏付けとなるデータが、利用できる
とはいえ、荒唐無稽な話はいくらなんでも許されない。
フェイクニュースを書いて許される道理はない。
したがって、可能な限り書いたことについては、「客観的な裏付け」をとるべきだ。
また、その裏付けは、書籍や学術論文など、文献として価値のあるものからとることが望ましい。
もちろん、データがないときもある。
そういったときは、「私見だが」「経験の中では」という説明を加えるべきろう。
裏付けとなるデータがきちんとした研究結果に基づけば、
「思い込み」だけでは動かない人々まで動かせる。
それこそ真の意味での「バズ」となるのだ。
—
以上が、当社で採用している「バズ記事」を生み出すための仕組みだ。
バズの解析についてはまだまだ途上であるが、可能な限りこの場で共有していこうと考えている。
(了)
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