webから問い合わせがほしいときの、「webコンテンツ」の作り方。

このコンテンツは有料note「webライターとメディア運営者の、実践的教科書(安達裕哉著)」より転載しています。


まず、webではない話からします。
発端は、ベイジの枌谷さんがシェアしていたこの記事です。

読んでない方のために説明をしますと、電通が3年をかけて通販広告のデータを解析し、「面白いCM」と、「ベタなCM」の比較をして、どっちが売上に貢献したかを比較しています。
で、結論としては「ベタな広告」のほうが、売上に貢献したよ、だから、「商品を直接訴える広告のほうがいいよ」というわけです。
ただ、この記事。
読んでも、調査の詳細もわからなければ、どんな商品を対象にしたかもわかりません。
そもそも「面白いCM」と「ベタなCM」の違いはなにか?ということすら、この記事では以下の程度にしか触れられていないわけです。
・注目度を増すことで商品の圧倒的刷り込みを狙った「面白いCM」
・商品の具体的役割を伝えることを意図した「ベタなCM」
もちろん、売上の差についても触れられていません。
こうした調査の詳細がわからなければ、主張の正しさも検証できませんので、元ネタの本を買って読みました。
結論としては「本は素晴らしい」のでぜひ読んだほうがよいと思いました。
広告マーケティングを生業にする方には、間違いなくおすすめの一冊です。「エモーショナルマーケティング」で知られる、神田昌典さんの本に通じるところもあります。
ちなみに、神田昌典さんの本は主に「チラシ」に軸足をおいた内容ですが、webサイトにも十分、応用可能です。
ただ、「ベタなCMのほうが良いよ」という話は、そのまま素直に受け取れない部分もあります。
というのも、「面白いCM」と「ベタなCM」の比較については、実はこの本の中でもあまり詳細が明かされてないからです。
書籍の中ではこの根拠を
「全く同一の商品を取り扱った2パターンのテレビショッピング番組」
において、
「個人の感想の変化」の部分を
「商品の効能の変化」に差し替えたところ
「平均購入者数が130%になった」
という部分におき、ここから

「視聴者が物を欲しくなる基準は「自分の困った状態を解決してくれるか否か」という商品の直接的な便益や価値にある」

ビフォーアフターのようなベタベタな表現で商品の必要性を見せつけなければ、人はモノを買ってくれない。この事実が意味するのは、モノを買ってもらう上では、単に「興味」や「関心」という薄い感情ではなく「この商品は自分のニーズを満たす、自分が求めているものなんだ」という明確で強い「認識」を持ってもらうことが欠かせないのだ、ということです。

といった結論を引き出しているのですが、これは一般化出来るほどの根拠としては少し弱いと感じます。
また、後段でも同様のことを述べていますが、ここには具体的な数値は示されていません。あくまで「傾向」と言っています。
例えば、商品名を連呼するなどの「目立つことに特化したCM」と、商品がもたらす効果や生活の向上を描いた「商品価値を意識したCM」の2タイプを放送したとします。その際にインターネット上の検索行動や販売数を調べると、図1のような傾向を示すことが多いのです。(中略)
「目立つことに特化したCM」は、放送することでインターネット上での商品の検索の数が大きく増加します。これは、目立つがゆえにCMを認知する人がより多く生まれることに起因すると考えられます。
ですが逆に、こういったCMの場合、実際の商品の販売数は検索数の伸びに比べて芳しくないことが多いもの。おそらく、目立つことに力点を置いた結果、肝心なニーズへの気づきや商品価値の理解がなされないことがこの背景にあるのでしょう。
一方で、「商品価値を意識したCM」の場合は、全く反対の傾向を示します。商品に関わる情報中心の映像的インパクトの少ないCMになりがちなせいか、インターネットでの検索数は「目立つことに特化したCM」のようには伸びません。
ですが、商品の販売における影響はこちらのほうが高く、最終的な販売数では「目立つことに特化したCM」を上回ることもしばしば見られます。
さらに著者は「バズっても売れない」と主張しますが、これは「バズ動画」のはなしであり、テキスト主体のコンテンツマーケティングの主流とは若干異なります。
実は、これと同じことが、数年前に流行したインターネットでのバズ動画(インパクトのある内容でSNSなどでの拡散を狙った動画)でも言えるのではないでしょうか。
このバズ動画という手法は、自然発生的に拡散されることでコストを掛けずに情報を広げられる画期的なPR方法として、広告、広報関係者の間で一時期大きな注目を集めました。
ですが、実際にやってみると、思ったほど動画が拡散されなかったり、仮に拡散されたとしてもなかなか商品の販売につながらなかったり、下手をすると炎上してしまったりなど、期待した結果になかなかたどり着けないものでした。
そんなせいもあって現在ではかなり下火になってきているのですが、この手法がうまくいかなかった根本的な背景には、商品の価値を「Identify(認識)」させる力の欠如という問題があったのではないかと思うのです。
ただ、著者は断言はせず、「経験則だ」と断っていますし、さらに「逆効果になる可能性もある」とも言っているので、あくまで仮説の粋を出ない、とは思っているのでしょう。

商品によって解決できることが明確でない場合、例えば競合製品との特徴の差があいまいな場合などは、このやり方は逆効果になるケースもあります

ここは誠実な態度を感じます。
とはいえ、面白い仮説であることは間違いありません。
枌谷さんがおっしゃっていますが、この法則はテレビショッピングだけではなく、webサイト、つまり
「コーポレートサイト」
「オウンドメディア」
「SNS」
あるいは各種の「ネット広告」の運営などにも、拡張可能かもしれないからです。

テレビショッピングとwebコンテンツはなにがちがうのか?

しかし。
私のサイト運営の経験から言うと、「バズっても売れない」はいくらでも反証をあげることができます。
というのも、私が運営しているBooks&Appsは「バズる」=「問い合わせが増える」だからです。
なぜ電通の主張と私の経験とが異なるのか?
これが、この記事の核心の部分です。
もちろん、比較実験ができませんので、ここからは私の仮説ですので、そのつもりでお読みください。
私が一番引っかかったのは、データが「テレビショッピング」における話だという部分でした。
テレビショッピングとwebコンテンツには以下のような決定的な違いがあります。
1.テレビショッピングは視聴者を能動的に集める必要がないが、webはまずコンテンツを見てくれる人を集めなければ何も始まらない。
テレビは、放映しさえすれば「ある程度の視聴者」を集める事ができますが、webのコンテンツはそもそも「閲覧者がほぼ0」ということもあり得えます。
したがって、webではコンテンツを見てもらうために
「自力で読者を集める」か、もしくは「ネット広告」を使う必要があります。
ただ、仮に広告を使ったとしても、読者がクリックしなければ広告は見られないため、その内容は、テレビショッピングとは比べ物にならないくらい無視されてしまいます。
Youtubeですら、読者が広告を見るのは最初のたった数秒です。
そこでは「商品の価値を理解させる」など、とても無理です。
つまり商品を説明する前に、「そこそこ聞いてくれる・見てくれる」読者・視聴者を、とにかくかき集める必要があるのがwebです。
2.テレビショッピングは一過性のコンテンツであるが、webはストックされる
テレビは、フローコンテンツであるため、「成果」を出せる期間がwebに比べて短いでしょう。
したがって「成果が出る/出ない」を比較的短期間で判断しなければなりません。要するに「一発勝負」なのです。
ところがwebは「コンテンツをずっと貯めておける」ので、何年も経ってから成果を生み出すことがあります。
例えばBooks&Appsでは、セミナーに申し込みを頂いた方全員にアンケートを取り、「問い合わせのきっかけになった、印象に残っているコンテンツ」を上げてもらっています。
その中で、「驚くほど昔のコンテンツ」をあげる方が多数います。例えば2019年の12月に開催したセミナーへのお申込みを頂いた方が、「問い合わせのきっかけになった」と言っている記事は、2016年のこちらの記事です。
この記事は我々の商売と関係がないばかりでなく、記事が公開されたのは

もう4年近く前です。

webでは「商材と無関係の、4年前のコンテンツから問い合わせが来る」。
テレビでは、こうしたことは殆どないと言えるでしょう。
3.テレビショッピングは「コンテンツの中で完結させなければならない」が、webはあちらこちらに飛んで、戻ってくることが出来る。
テレビショッピングは、メディアの特性上「再訪」ができません。放映は基本的に、その瞬間しか見ることができません。
「再訪」ができないということは、その中で意思決定させないといけないということですから、必然的に「商品説明まで」を一気通貫で行う必要があります。
ところが、webコンテンツは、競合サイトや以前に見たことがあるサイトを「思い出して再訪する」
「私が好きなあの人はなんと言っているかな」
「検索してみよう」
と、アチラコチラをつまみ食いできます。
さらに、面白いサイトであれば一つの記事を見終わったあと、「次はこの記事を読んでみよう」「運営会社はどんな会社だろう」「ひとまずフォローしよう」など、様々なアクションを取ることが想定されます。
つまり、webは読者・視聴者の動きに、かなりのバリエーションがあり、相当複雑な動きをしているのです。

問い合わせがほしいときの、webコンテンツの作り方

これらを踏まえると、「商品きちんと説明したほうが成果が出る」のは
「相当数の見てくれる人がすでにいるから」
「フロー型のコンテンツだから」
「一発勝負だから」
という、テレビショッピングの特性が大きく影響しているのではないでしょうか。
では、webにおいて。
問い合わせがほしい時、コンテンツはどうあるべきでしょう。
どのようなコンテンツを発信するのが、効果的なのでしょう。
これは、我々なりの仮説はすでにあります。
結論としては、webの特性を理解した上で、3種類のコンテンツを同時に運用してください、とになります。
1.「人を集める・バズる」コンテンツを作る。 
人と集めるための、バズるコンテンツは必要です。あるいは検索から大きく人を集める記事でも構いません。
とにかく、webでは広告を作る前に、まずテレビショッピングでいう「放送局」を作らなければなりません。
2.「広告」のコンテンツを作る。
人を集めたら、「広告」を作ります。
要するに、電通さんが言う「商品をきちんと説明するコンテンツ」を作るのです。
「バズっても売れない」との電通の指摘はたしかに正しく「商品をきちんと説明するコンテンツ」を作らない限り、問い合わせには繋がりません。
したがって、「人を集めるコンテンツ」に集まってきた人々に、効果的に見てもらえるように、「広告の役割をするコンテンツ」配置する必要があります。
例えば文末、あるいはサイドバーに。メルマガやSNSに。CMを流すような感覚で、「広告コンテンツ」を流すのです。
3.「再訪」を促すコンテンツを作る。
テレビショッピングと異なり、webは「再訪」に大きな意味があります。そのため、「視聴者に何回もアプローチできる」仕組みを持たなければなりません。
それに利用できるのがメルマガやSNSです。
メルマガやSNSは、「固定視聴者」を生み出す仕組みとして、不可欠です。
「単純接触効果」については、上で紹介した電通の書籍の中では「CMは3回流すのがコスパが良い」と述べられていますが、webでは3回ではなく、コンテンツを変えながら、5回、10回と接触することが可能です。
そうして得られた「評判」と「ファン」が、1年経っても、3年経っても、顧客をもたらしてくれるのです。
以上です。
もちろんこれは、我々が運営する複数のサイトにおける、限られたデータからの知見ですので、反証をあげることも可能でしょう。
しかし、我々は学術研究をしているのではなく、「実務」をしているのです。もし、webから問い合わせがほしければ、試してみる価値はあると思います。
ちなみに、コンテンツの作り方に関しては、個別のバックナンバーにかなり詳しい記事がありますので、そちらをご覧ください。

 

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