個人的に、企業のオウンドメディア立ち上げに関する悩みをよく耳にします。 オウンドメディアって何?
という方も多いかもしれませんが、要するに企業のオフィシャルブログ/メディアの類と思って差し支えないでしょう。
一時期「オウンドメディアは下火」などと言われていましたが、Googleトレンドで動向を調べてみると
(Googleトレンド「オウンドメディア」より)
下火になった、と言うよりは一定の需要を保ち続けている、という状態でしょうか。
広告の単価が上昇し、競争が厳しくなっている現在、なんとか固定ファンを獲得して、販促につなげたいという企業の思惑が見て取れます。
個人的に頑張っている担当者の方を知っていることもあり、また、企業の中には素晴らしい知見がたくさん眠っていることから、企業がもっと面白いブログを書くようになるといいな、とも思います。
さて、その一方で残念ながら
「つまらない」
と言われてしまうオウンドメディアも少なくありません。
いえ、「つまらない」と反応があるのはまだマシな方で、殆どの企業ブログは無視され、殆どは読まれることすらありません。
一体、「つまらない」「読まれない」企業ブログは何が課題なのでしょうか。
観察をすると、多くのオウンドメディアは次の課題を抱えています。
1.質の高い書き手の不足
2.リスク回避のための過剰な編集
3.短期的成果の追求による記事の質の劣化 一つ目は、「書き手」に由来するものです。
オウンドメディアには一定数の記事が必要です。ですが、外部に記事作成を依頼できるほどの原資はない……
多くの企業はそう考えます。
そこで、彼らは「社員」の持ち回りで記事を書こうとします。
一ヶ月に一記事、必ず記事を書く、と言った具合です。
ですが単に文章を書くだけであればともかく、「読まれる」「おもしろい」記事を書くためにはある程度の訓練とセンスが必要であり、それに該当する人の数はそれほど多くはありません。
結果としてオウンドメディアは、「社内の宴会」や「ランチの様子」、あるいは「社長のつぶやき」的な記事で溢れ、外部の人にとっては、価値のないものとなっていくのです。
二つ目は「リスク」に由来するものです。
大企業にありがちですが、「炎上」を恐れるあまり、なんの主張も、批判も、強い思いもない記事ばかりが掲載されているオウンドメディアが数多くあります。
その結果として「検索エンジン」を向いた記事ばかりが量産され、「メディア」と言うよりはむしQ&Aサイトのようなオウンドメディアが散見されます。
しかし、こうした手法は結局、「どれだけ大量の記事をアップできるか」という不毛な競争を生み出し、大量の「読まれない」「つまらない」サイトと、「アクセスはある」「つまらない」メディアが生まれるのです。
また、そうした競争は「パクリサイト」「内容の信頼性が著しく低いサイト」が生まれる土壌を作ります。
三つめは「成果への圧力」に由来するものです。
オウンドメディアを初めて半年もすると、社内のあちこちから、「それだけお金と人を使って、どれだけの成果があったのか」という圧力がかかり始めます。
その成果の指標は多くの場合、「PV(ページビュー)」と「CV(コンバージョン、問い合わせ件数)」の2つです。
しかし、上の2つであれば要するにそれは「広告」と何ら変わりはありません。 結局、成果への圧力がかかれば、記事はどんどん「広告」ぽくなっていくのです。
ここで改めて考えてみましょう。
果たして読者はわざわざオウンドメディアに「広告」を見に来たいと思うでしょうか?
そんなことはないですよね。
「広告をわざわざ見に行く」という人は少ないでしょう。
したがって、「見られない」「つまらない」けど、「記事の量だけは多い」サイトが出来上がってしまいます。
いかがでしょう。本当にオウンドメディアとして愛されるには、
1.質の高い書き手の確保
2.リスクの許容
3.短期的な成果ではなく、長期的な、定性的な成果の定義を考える必要があります。
また、余談ですがこのようにお話をすると、「本当に費用に見合う効果はあるのですか?」と質問をする方がいます。
それに対しては「直接的な売上」や「記事からの問い合わせ」だけを目的とするならば、費用対効果は合いません。
広告をガンガンやるべきです。
「信用の獲得」「ファンの育成」「ブランド構築」などの、定性的な成果を定義するならば、費用対効果は高いでしょう。
とお答えしています。