このコンテンツは有料note「webライターとメディア運営者の、実践的教科書(安達裕哉著)」より転載しています。
弊社ではメディア運営の際に、大変多くのライターの方々にご協力をいただいています。
お願いしているライターの方々は、非常に多様性があり、年齢、居住地、性別はもちろんのこと、職業や
専門性、経歴も非常に多岐にわたっています。
しかし、ライターさんを探すのは、それほど簡単なことではありません。
なぜなら、「商用レベルの文章が書ける人」の絶対数が少ないうえに、重ねて「ニーズのあるテーマで書
ける人」は、きわめて希少だからです。
そこで今回は、我々が行っている「ライターさんの探し方」と、そこで得られた「良いライターさんの見極め」をどのように行っているかについて述べたいと思います。
逆に考えれば、メディア運営者が「依頼したくなるライター」とは、どのようなライターさんなのかを知ることができるはずです。
「実績重視」だが……
ライターさんを探すときの第一方針は、多くの企業やメディアと同様に「実績の重視」です。
したがって、私たちはまず、すでに取引のあった過去のライターさんをあたります。そこで私たちが書いてほしいテーマに沿った方が見つかれば、それが一番簡単だからです。
しかし、そうそう都合の良いことは起こりません。
特に専門的な記事は、特定の「職業」や「経歴」を持つ方にしか依頼ができませんので、そうした経歴を持ち、かつ「書ける」方を探す必要があります。
そこで、次に私たちは世の中から広く、ライターを探します。
これは大変、手間のかかる作業なのですが、良いライターさんを探すのであれば、必須の作業です。
具体的には、以下の4つのことをします。
1.他媒体で執筆中のライターを探す
2.SNSやブログなどで発信しているライターを探す
3.既存のライターさんからの紹介を受ける
4.クラウドソーシングを見る
1.他媒体で執筆中のライターを探す
まず1.についてです。
他媒体で執筆中のライターさんは、すでに実績が世の中に出回っているので、見つけやすい部類に入ります。
ただし有名な媒体で執筆しているライターのほとんどは、よほどのメリットがない限り、新しい依頼を受けることはありません。
原稿料が高いか、メディアの知名度があり、セルフブランディングにプラスの価値があるとみなしたとき以外には、こちらの誘いはほぼ無視されます。
これは、ライターという仕事の性質上「一か月に生産できる記事の数」に厳しい制約があるためです。
例えば、ある程度有名なライターが「質の高い記事」を書くために、どの程度準備が必要かといえば、1週間に1本書くのがやっと、という方がほとんどです。
ほかのすべての仕事を放り出して、記事だけにコミットしても1週間に2本が限界でしょう。つまり生産できる記事の上限は1か月あたり8本です。
この8本を、どのメディアで書くか。これはライターにとって重要な意思決定です。
したがって、ライター側としては「1か月に20本ほどかけますか?」と言われても、「無理です」としか言いようがないでしょう。
ライターの月商の1/8が原稿料としての最低ラインですから、有名ライターの月商を80万円見積もると、原稿料は1記事当たり10万円ほど必要です。
1記事に10万円払えるか。
これが、有名ライターに依頼をするときの一つの基準です。
ということで、多くのメディアにとって、この選択肢はあまり現実的ではありません。
実際、いかに人気のライターであっても、そのライターが書くだけで収益性が高まる、という都合の良いことはないからです。
有名ライターというのは、ある程度収益性の高いメディアが、広告を使うつもりで起用する、という存在なのです。
2.SNSやブログなどで発信しているライターを探す
したがって、ライター探しの基本は三国志の「在野武将」のように、プロライターではないが、書く力のある人をどう探すか、という話になります。
ここで再度、基本方針である「実績重視」に立ち戻ると、SNSやブログ、特にブログを書いている方の中から探すのが効果的です。
事実、Books&Appsで記事を書いているライターさんのほとんどは、私が普段読んでいたブログの主の方に声をかけ、執筆にご協力いただいた形です。
しかし、彼らは正確に言えば「ライター」ではありません。
どちらかといえば、「ブロガー」や「インフルエンサー」といった立ち位置であり、生活が懸かっているわけではないのです。
それゆえ、プロライターと彼らは異なるニーズを持っています。
思い切って単純化すればそれは、「楽しく書けるか」。
プロライターであれば、こちらの依頼は「こういうスペックの記事を書いてくれ」になり、ライターはそれに対して、「スペックを満たすように書く」という、きわめてビジネスライクな関係となります。
しかし、ブロガーやインフルエンサーは、そうではありません。
彼らにとって寄稿は「書く行為」そのものが楽しく、裁量があることがまず前提であり、スペックを満たすかどうかは劣後順位となります。
したがって、こちらから原稿のスペックについてあれこれ指示を出すと、「いや、面倒だし、それだったら書かなくていいや」となってしまいます。
それゆえ、彼らとの付き合いは、ある意味プロライターよりも難しいといえるでしょう。
いうなれば「いつでも転職できる、優秀な社員を引き留めておく」のと同様のマネジメントが要求されます。
そのためのポイントは以下の2点です。
・やり方、スペックは相手に任せる
・成果は(勝手に)見える化する
これは「優秀な、自律できるエンジニア」への接し方と、ある意味同じであると言えます。
つまり、マイクロマネジメントはせず、方向性の共有だけするのです。
そのうえで、成果品に対する評価は、相手が勝手に確認できるようにしておくことです。
とくに「成果」の部分については、書き手のモチベーションに直結するのが「読まれたかどうか」が非常に重要であるため、ある時期からBooks&Appsのビュー数や、SNSでのシェア数を公開状態でメディアに表示したのはそのためです。
もちろん、公開するかどうかはメディアの方針によりますが、書き手の方にビュー数などをフィードバックするのは、重要です。
では、彼らをどう探すか。
現在効果的なのは、Twitter、はてな、そしてnoteです。
流れとしては、Twitterのプロフィール欄で「ブログ」を探し、そこから飛んでブログをチェックし、文章のクオリティを見ます。
その際に重要なのは「人気記事」です。人気記事を見れば、その方の文章の方向性を見ることができますし、どの程度アクセスを期待できる方なのかがわかります。
一旦、記事を書いていただくことになると、彼らにはあれこれ指図できないため、ここで記事の質を念入りにチェックしてください。
また、「いつからブログをどの程度の頻度で書いているか」も重要なチェック項目です。
なお、Books&Appsでは、例外もありますが、基本的には5年以上のブログ歴を持つ方にしかお声がけをしていません。
というのも、ある程度継続的に記事を書かないと、メディアの雰囲気に合わせて記事を書くことができないからです。
事実、長期間書けば、書き手の力量も上がっていきます。
したがって、「記事を注文通り仕上げてもらう」というよりも、ビューを見ながら、少しずつ調整してもらう、というのが、彼らとの付き合いかたです。
ブロガーやインフルエンサーを登用する際には、「人気記事」と「執筆歴」の二つを見ること。きわめて、シンプルな方法です。
3.既存のライターさんからの紹介を受ける
2.と関連しますが、既存のライターさんからの紹介は、ライター探しに効果的な手段の一つです。
例えば上でご紹介した、Books&Appsで永いこと連載をしていただいている「しんざきさん」ですが、しんざきさんからご紹介をいただいたのが「patoさん」でした。
また、そのしんざきさんも、シロクマ先生からのご紹介です。
このように、良いライターさんは、良いライターさんを知っていることが多いです。
さて、紹介を受けるときには、ちょっとしたコツがあります。
それは「直接紹介してもらう」のではないこと。ブロガー同士は面識もないことが多く、関係性は強くないためです。
したがって、これは通常の「顧客紹介」と同じように「顔見知りを紹介してもらう」と考えるべきではありません。
ではどのように紹介をしてもらうのかというと、「普段読んでいるブログやフォローしていて、面白いと感じるTwitterアカウントを教えてください」でOKです。
例えば、しんざきさんにお会いした時に、「しんざきさんがよくご覧になっているブログはありますか?」と聞いたところ、「多目的トイレ」というブログが面白い、というお話をいただきました。
実はこれこそ、patoさんのブログだったのですが、ブログのタイトルが意味不明なので、検索では絶対に引っ掛かりません。
ですので、こうして教えていただくのが一番近道です。
もちろん、ご紹介をいただける人数はそう多いものではありませんし、ご紹介をいただいた方が、必ずしも「書いてくれる」わけではありません。
しかし既存のライターさんからの紹介が非常に役に立つのは、なによりも「品質」という点においてある程度保証がされている点です。
ということで、既存のライターさんには紹介をもらうことは、顧客に紹介をいただくことと同様に、重要な活動なのです。
4.クラウドソーシングを見る
さて、最後のチャネルです。上の3つの手法でも適切な方が見つからなかった場合、最終的にはクラウドソーシングから募集します。
ただし、クラウドソーシングは玉石混交であり、優秀なライターさんを見つけることが非常に難しい領域です。
それゆえにトラブルも発生しやすく、周到な準備が必要でもあります。では、詳しく見ていきましょう。
募集要項テンプレート
まず募集要項です。弊社では応募者の質をある程度担保するために、募集要項を標準化、テンプレート化しています。
なお、実際の募集テンプレートはこちらです。
【募集の趣旨、メディアの方針】
【参考記事の提出願い】
【求める原稿のイメージ、サンプル】
【月間募集総本数の目安】
【パイロット記事の制作について】
【報酬に関する表記】
メディアに合わせて多少の違いはありますが、以上は全ての募集で概ね共通です。
無条件で選考から漏れる原因について
その上で、まず落とされる可能性が極めて高い応募のパターンがあります。
1.参考記事の添付がない
募集には全て「参考記事必須であり、ない人はよほどの理由がない限り選考に至らない」と明記していますが、参考記事を付けない人はとても多くいます。
このような人は、募集内容を見ていない可能性があるか、実績がない方の可能性があります。
応募者側としては、「とりあえず手あたり次第応募しておこう」という意図なのかもしれませんが、選考を行う手間が増えるので、スパム同然となることが多く、悪質な場合はそのユーザーをミュートしてしまうケースもあります。
2.無関係な参考記事を付けてくる
参考記事として、募集の趣旨と全く関係ない記事をつけてくる人も、高確率で選考から落とさせていただいています。
例えば「エネルギー」に関するテーマで募集をかけたところ、以下のような方が応募してきました。
執筆を任せる上で、
・大学などの専門が異なる
・仕事の専門性とも、何の関係もない
・過去の実績がカスリもしていない
ので、このような人は落とさせていただいています。
ただし、これらの場合は、募集のお願いに記載している要件を満たしているので、丁重にお断りの返事を出します。それが礼儀です。
3.YMYL(Your Money or Your Life)に抵触するライター
無資格者でありながら、過去の参考記事でYMYL関係を添付してくるライターは、落とさざるを得ません。
例えば得意なジャンルとして健康、法律、金融、ヘルスケア系を上げて実績を送ってくる人は、「権威性」という観点からは、必ず何かしらの関連する有資格者である必要があります。
無資格者でこれらの分野を得意分野として挙げてくるということは、ライティングに関しての規範が守れていない可能性があります。
4.専門外の実績が多いライター
関連する学習歴や勤務歴、資格がないにも関わらず、明らかに専門外の記事が多い人も落とします。
最悪の場合、剽窃行為を行う可能性があること。
そうでない場合でも、ただ単に人の著作物から取っているだけで、自分の言葉で書いていないことがほとんどだからです。
5.1記事当たりの制作時間が短すぎる人
「1ヶ月20本対応可能です!」
「週に5本は書けます!」
と売り込んでくる人も、落とされる可能性が高いです。
上にも書きましたが、熱の入った記事は、多くとも1週間に2本が限界だからです。
採用に至る人
採用に至る人は、結構シンプルです。
例えば以下は、金融機関のメディアで執筆をお願いした方の応募です。
・その記事を書く専門性がある
・職歴などから妥当性がある
・過去の実績記事の内容が、募集内容と一致している
・適切な形で、適切なエビデンスを引用し説得力をもたせる努力をしている
・読者の役に立とうという想いが感じられる
全てを満たしていれば、概ね採用となります。
また、いくつかの分野ではテーマを外していても、程度によっては試しに書いていただくケースもあります。
以上、ライターさんを見つける手段と、その時の判断基準について書かせていただきました。
ご参考としていただければ幸いです。
—
「成果を出す」オウンドメディア運営
5つのスキルと全48タスク
をプレゼント。
これからオウンドメディアをはじめる企業さま、現在運用中の企業さま全てにお役に立つ資料です。ぜひご活用ください。
資料ダウンロードページはこちら↓
https://tinect.jp/library/5skills48tasks/
メールアドレス宛てに資料が自動送信されます。