はじめに:地産地消とは何か
地産地消とは、地域で生産された農林水産物や加工品などを、その地域内で消費するという考え方です。日本各地で注目が高まっており、もともとは農産物を中心とした取り組みでしたが、現在では水産物や畜産物、加工品、さらにはエネルギーや工芸品など、生活に関わる幅広い分野へと広がっています。
この背景には、消費者が生産者の顔を直接知ることで得られる安心感や、地域経済を地元で循環させる意義があります。災害の多い日本では、長距離輸送に頼らず食料供給を維持できる仕組みとしても期待されています。新鮮な農作物が地域に行き渡ることで食料の無駄が減り、季節の移ろいを身近に感じられる点も特徴です。
また、地産地消は単なる地元産品の販売促進にとどまらず、地域経済や雇用にも貢献します。生産から加工・販売までを地域内で行うケースが増えると、収益が地域に還元されやすくなり、地元企業や生産者の意欲向上にもつながります。直売所や地域交流施設を通じて地域住民と外部の人々が交流する機会が増えることで、地域の魅力発信にも役立ちます。
さらに、加工技術の発展によって6次産業化が進み、新商品開発や観光振興も期待されています。こうした多面的な効果が評価され、地産地消は日本各地のまちづくりや農政の重要なテーマとなっています(参照*1)。
現在では、日常の買い物や外食産業、地域産業の発展政策に至るまで、地産地消の概念が幅広く取り入れられています。地域の食・文化・人を結びつける視点から、地産地消は持続可能な地域づくりを考える上で重要なキーワードとなっています。
地産地消のメリットと課題
新鮮さと安心感の提供
地産地消の最大のメリットは、新鮮な農産物や水産物を消費者が手にできる点です。地域で収穫された食材は、輸送距離が短いため鮮度が保たれやすく、旬の味わいを楽しめます。
また、生産者の顔が見えることで、食の安全性や信頼性が高まります。消費者が生産現場を見学したり、直売所で生産者と直接話す機会が増えることで、食材への理解や安心感が深まります(参照*2)。
地域経済と雇用への波及効果
地産地消は、地域経済の活性化や雇用創出にも寄与します。生産から加工、販売までを地域内で完結させることで、収益が地元に還元されやすくなります。
直売所やファーマーズマーケットの運営、地元企業との連携によって、地域内での雇用機会が増加します。さらに、地元ブランドの確立や観光資源としての活用も進み、地域の魅力向上につながります。
環境負荷の低減とフードマイレージ
地産地消は、環境負荷の低減にも貢献します。輸送距離が短くなることで、CO2排出量の削減やフードマイレージ(食材が消費地まで移動する距離)の縮小が実現します。
包装や保存の工夫も最小限で済むため、廃棄物の削減にもつながります。こうした取り組みは、持続可能な社会の実現に向けたSDGs(持続可能な開発目標)にも合致しています(参照*3)。
地産地消の課題と今後の展望
一方で、地産地消には課題も存在します。地域や季節によって品ぞろえが限られることや、価格が高めに感じられる場合がある点、流通インフラの整備や安定供給の難しさなどが挙げられます。
担い手不足や採算性の確保、輸入品との競争も現実的な課題です。今後は、地域間連携やICTの活用、消費者教育の推進などを通じて、より多様な地産地消の形が求められています。
地産地消の具体的な取り組み事例
学校給食と地域連携の推進
全国の学校給食では、地場産物の活用が進んでいます。例えば、千葉県では落花生を使ったピーナッツみそが学校給食の定番となっており、地域の食文化や生産者への理解を深める機会となっています。
令和3年度の全国平均では、学校給食における地場産物の使用割合が金額ベースで56.0%、国産食材は89.0%に達しています(参照*4)。
このような取り組みは、CO2排出量の抑制や流通コストの削減にもつながり、SDGsの達成にも貢献しています。
エネルギー分野での地産地消
地産地消はエネルギー分野にも広がっています。鳥取県米子市では、自治体と地元企業が出資して「ローカルエナジー株式会社」を設立し、太陽光発電や廃棄物発電など地域内で生産した電力を公共施設や一般家庭に供給しています。
これにより、年間約1000億円の電力代が地域外へ流出するのを防ぎ、地域経済の自立と環境負荷の低減を実現しています(参照*5)。
観光とガストロノミーツーリズムの活用
観光分野でも地産地消の推進が進んでいます。観光地域づくり法人(DMO)や地方公共団体、農業・漁業・飲食業・宿泊業などが連携し、地域の食材を活用したガストロノミーツーリズムを展開しています。
これにより、地域全体の経済波及効果が高まり、インバウンド需要にも対応した新たな地産地消メニューや食体験が生まれています(参照*6)。
自治体による再生可能エネルギー事業
豊岡市や宮古島市、葛尾村などでは、自治体主導で再生可能エネルギーの地産地消モデルを構築しています。営農型太陽光発電やバイオマス発電、地域マイクログリッドの導入など、地域特性を活かした多様な取り組みが進められています。
これらの事例は、観光活性化や災害時の停電対策、環境負荷低減など、地域課題の解決にもつながっています(参照*7)。
地産地消を推進するためのポイント
地域ブランドとマーケティング戦略
地産地消を推進するには、地域ブランドの確立と効果的なマーケティング戦略が重要です。地元産品の魅力を発信するためには、ストーリー性や生産者の想いを伝えるコンテンツ作りがポイントとなります。
SNSやオウンドメディアを活用し、地域の特色や旬の情報を発信することで、消費者や観光客の関心を高めることができます。
デジタル活用と業務効率化
限られた人材や予算で地産地消を推進するには、デジタル技術の活用が効果的です。生成AIを活用したコンテンツ制作や業務効率化ツールの導入により、情報発信や販路拡大を効率的に進めることが可能です。
データ分析や顧客管理システムを活用することで、ターゲット層へのアプローチやKPIの可視化も実現できます。
地域連携と持続可能な運用体制
自治体や地元企業、NPO、住民など多様な主体が連携し、持続可能な運用体制を構築することが求められます。協働によるプロジェクト運営や、地域資源を活かした新たなビジネスモデルの創出が、地産地消の定着と発展につながります。
まとめ:地産地消が描く持続可能な地域の未来
地産地消は、地域の食やエネルギー、文化を支える重要な取り組みです。新鮮で安心な食材の提供、地域経済の活性化、環境負荷の低減など、多くのメリットがあります。一方で、担い手不足や流通インフラの課題も存在しますが、デジタル技術や地域連携を活用することで、より持続可能な地域づくりが可能になります。
今後も地産地消の推進を通じて、地域の魅力や価値を高め、地方創生やビジネス成長につなげていくことが期待されます。
監修者
倉増 京平(くらまし きょうへい)
ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ&ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事
顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。
コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。
参照
- (*1) 地産地消(地域の農林水産物の利用)の促進:農林水産省
- (*2) イオン1%クラブコラム | イオン1%クラブ – イオン1%クラブコラムは、公益財団法人イオン1%クラブが運営する情報メディアです。実際に活動を行い、分かったことや様々な社会問題解決のための情報を発信し、地域社会の発展を目指します。 – 地産地消で地域を元気に!地産地消のメリットや取り組みを解説 – イオン1%クラブコラム
- (*3) 千葉商科大学 – 地産地消でSDGsをもっと推進。なぜ必要か、意味や事例、今すぐできることを紹介
- (*4) 2 地場産物等の活用の推進:農林水産省
- (*5) 環境省グッドライフアワード – 環境省グッドライフアワード
- (*6) 観光庁 – 地域の食材を活用したコンテンツの整備
- (*7) 再生可能エネルギー事業事例集:再エネガイドブックweb版│資源エネルギー庁
