稼げないフリーランスwebライター。いったい何が原因なのか

このコンテンツは有料note「webライターとメディア運営者の、実践的教科書(安達裕哉著)」より転載しています。


最近では「大人がなりたい職業ランキング」では1位となった「ライター」という職業。
テレワークの副業として、サイドビジネスとして、あるいは自己表現の一つとして人気を博している。
しかし副業で「楽しい」で済んでいるうちはまだ良いが、それが本業になると、そうも言っていられない。
むしろライターが「稼げる」と思うのは、例外的でフリーランスのwebライターには「稼げない」と感じている人が少なからず存在する。
 
その原因の一つは、参入障壁が低いことだろう。
昔は「メディア」と言えば、紙媒体か電波媒体に限られ、ライターが活躍できる分野は極めて限られていたが、現在はwebというほぼ無限に広がる媒体が存在している。
ライターの活躍できる範囲が広がる一方で、「猫も杓子もライター」になることができ、それがライターに支払われる原稿料の単価の引き下げにつながっている。
 
あるいは、ライターの立場の低さも「儲からない」原因となる。
私も経験したことがあるが、対等の関係とは程遠く、単なる「いくらでも代わりのきく部品」扱いをしてくるようなメディアも少なからず存在しているし、以下のNHKの特集で取り上げられているように、難癖付けて、報酬を支払わない輩すら存在する。
しかしこれらの要因は、「外部要因」であり、ライター独力での改善が非常に難しい。
せいぜい「スキルを上げる」「ダメ客と付き合わない」という対策くらいで、根本的に儲からない、という現状を打破できないのだ。
 
では、ライターが自身で改善できる部分はあるのだろうか。
ライターをもうかる商売に変えることはできるのか。
今回の投稿は、そこにフォーカスしたい。
 

フリーランスwebライターという商売が内部に抱える、本質的な課題

実は、「webライター」という商売自体が抱える課題が存在している。そしてこれらは、本質的な脆弱性なので、リスク対策を取らねばならない。
さもなくば、ライターとして将来にわたって食べていくのすら難しい。
その課題とは、以下の3点に集約される。
1.成果が見えにくい
2.スケールしにくい
3.継続案件が少ない
 

1.「ライターの成果」は見えにくい

最も大きな課題の一つは「ライターの成果」が見えにくいという点だ。
ライターの成果は自明だと思う方がいるかもしれないが、実ははっきりと問われると難しい。
「良い文章を書くこと?」
「PVを取れること?」
「売れる文章が書けること?」
いずれも「ライターへ文章を発注する立場」の視点からすれば、中途半端と言わざるを得ない。
なぜならば、webにおいては「良い文章」であっても、「PVが取れ」ても、直接的には発注者の利益につながらないからだ。
 
もちろん「売れる文章」にもならない。
webライターは作家ではないので、出版で利益を出すことはできない。文章のマネタイズは、発注者の商売がうまくいくかどうかにかかっている。
つまり「ライターがこの文章を書いたから、発注者の利益につながった」という言い方が極めて難しい。
 
そして、成果が見えなければ、単価の交渉は難しい。
どちらかというと、成果型の報酬ではなく、予算型の報酬になるからだ。
「この予算でやって」と言われ、それに対応するのが、ライターの基本的な仕事になる。だから、webライターは「儲からない」。
 

2.スケールしにくい

ライターの仕事は極めて労働集約的なため、スケールしにくいことも儲からないことの一つの要因である。
つまり「かけた時間に応じた報酬」しかもらえないので、おのずと儲けに上限がある。
 
「AIなどをつかえば、文章作成を効率化できるのでは」という議論もあるが、現在、文章生成を100%AIが行うことは不可能で、ソフトウェアが担当できる領域は少ない。
これは「AIが意味を理解できない」ことに起因している。
「意味」を深く問われない、作曲や描画はAIがこなすことができても、文章生成は一つ上のレイヤーにあるため、現在のところこれをこなせるAIは存在しない。
そのため、「ライター」は記事の単価を上げようとするが、ライターの仕事は上述したように「成果が見えにくい」ため、記事の単価交渉が極めて難しい。
そのため、ライターの仕事はどうしても儲からない。
 

3.継続案件が少ない

そして何より難しいのは、ライターの仕事は突然打ち切られる。
というのも、ライターが直接儲けを生み出すわけではないので、メディアが立ち行かなくなってしまえば、そこでライターの仕事もおしまいなのだ。
そして現在、ほとんどのwebメディアは赤字である。
先日、Engadget日本版とTechClunch Japanの閉鎖が示すように、かなり大きなメディアでさえ、収益化に苦労している有様なのである。
大手の新聞ですら収益化に苦労している中で、どのメディアがライターに安定して仕事を出せるというのか。
 
もちろん最近では、メディア単体で利益を出さなくても良い「オウンドメディア」というwebメディアも数多く出現している。
しかしオウンドメディアの成功もまた、運営元企業の広告宣伝費予算によって左右される。
運営元企業の業績が悪化すれば、オウンメディアの運営はおぼつかないし、オウンドメディアから投資対効果がはっきりと得られるようになるためには、数年の歳月を要することも珍しくない。
 
短期志向になる企業業績において、投資対効果がすぐに見えない施策を取れる企業は元々財務体質が良い会社に限られる。
しかも、ライターは企業業績に直接介入できない。
このように、本質的にはwebメディアはまだ発展途上であり、収益化のめどが立っていない業界なのだ。したがって、「継続案件」が少ないのも、致し方なし、という状況だ。
 
 

ではwebライターはどうすべきか

ではwebライターはどうすべきか。
上の3つの課題を克服するために、できることはあるのか。
解決策として最も有効なのは2つ。
営業力の向上と、リスク分散のための法人化である。
逆に最もやってはならないのは、「取引先を絞ること」「一極集中」など、どう呼んでも良いが、とにかく「少数の顧客と一蓮托生」が良くない。
 

webライターとして食っていけるかどうかは、「文章力」ではなく「営業力」で決まる。

認めたくない事実として、webライターとして食っていけるかどうかは、「文章力」では決まらない。決まるのは「営業力」だ。
したがって、営業が苦手な人間は、webライターとしてフリーランスになってはならない。おそらく数年でつぶれてしまう。
 
なぜ営業力が重要なのか。
それは、「成果が見えにくい」という事実に起因する。
逆に言えば、webライターは「成果を設定する」能力が問われる。
つまり、webライターの提供するサービスは、一種の「BtoBソリューション」なのだ。
顧客であるメディアの悩みを解決することで、「成果」をアピールすることができる。
私の記事を掲載することで、広告主が喜びますよ
有料購読者が増えますよ
メルマガ登録者を誘引できますよ
SNSで拡散できますよ
商品を購入する人が殖やせますよ
こうした「提案」を通じて、webライターはうまく自らの成果を定義しなければならない。
それは「良い文章が書けますよ」とアピールするのとは別次元の話で、メディアがどのようなビジネスを行っているかを理解しなければならない。
 
で「営業力」だ。
営業力こそ、フリーランスのwebライターに最も必要な力で、ときにそれは文章力を凌駕する。
むしろ、営業力さえあれば、自分に文筆家としてのスキルがなくとも、「スキル」を持っている人物に依頼すればよい。
そういう意味では、ライターをソフトウェア技術者とした場合、その営業はSIerに近いのだ。
当然、自分でプログラムも書けて、営業もできる人間であればなおさら良い。だが、営業力の不足は致命的だ。
フリーランスwebライターは何より営業力、そして営業の引き合いをもらうためのマーケティング力が問われる。
 

「営業力」の果てに、リスク分散のための法人化が存在する

したがって、すべてのフリーランスwebライターは、法人化を目指すことになる。
なぜなら、営業活動に力を入れれば入れるほど、「書く」のは自分の時間では不可能になってくるからだ。
自分が営業に時間を使えば使うほど、ライティングを自分以外の人物に頼ることになり、結果として納める原稿のほとんどが「外注」になる。
そうなればもう、立派な「法人」の出来上がりだ。
 
自分が営業に特化し、「法人化」することで、フリーランスのwebライターは、「本質的な課題」の多くをクリアできる。
 
例えば「成果が見えにくい」という課題は、ソリューション営業を徹底して行うことで、ある程度クリアできる。
顧客のニーズに応じた文章を外注を使って生み出し、それを顧客に提供するのは、ソフトウェア会社がやっていることとほぼ変わらない。
 
あるいは「スケールしにくい」という課題もクリア可能だ。
理論上は、自分と数名で構成される、「ソリューション営業部隊」が機能していれば、「営業力のないライター」を使って、いくらでも事業を拡張できる。
その最たる存在が、電通なのだが、彼らは数多くの営業力のない下請けを使い、営業力だけであの規模にスケールしたのだ。
 
そして「継続案件化しにくい」という課題も、法人化によって可能だ。
法人化によって、取引先の数を最大化するように動けば、一件の大口に頼るような経営をせずに済む。
一社解約が出たところで、それがなんだというのだろう。
何百、何千という取引先が入れ替わるだけであれば、経営への影響は極めて軽微だ。
あなたは社長として、営業部隊を組織し、ソリューション営業に持たせる商品を作る、そして多くの外注ライター、クリエイターを使って、「成果」を売るのである。
その果てには、「マーケティング支援ソフトウェア」の販売や、「マーケティングツール」の販売なども見えてくるだろう。
 
まとめよう。
フリーランスwebライターには、本質的な課題が存在しているが、それらはすべて、営業力と組織化によって解決されうる。
ライターが「儲からない」と感じているならば、今すぐソリューション営業とマーケティングに仕事を特化し、あなた自身がライターから足を洗わねばならない。
皮肉なことに、「ライター」を辞めることで、「ライティング業」が成立するのだ。それを理解し、実行している人間だけが、ライターの世界で成功できる。
 

 

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(文責-ティネクト株式会社 取締役 倉増京平)

 

【著者プロフィール】

安達裕哉

元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。

◯X:安達裕哉

◯有料noteでメディア運営・ライティングノウハウ発信中(webライターとメディア運営者の実践的教科書