オウンドメディアはどう運用すれば良い？目的や方法、成功事例を解説！

オウンドメディアと成功事例が注目される背景

近年、地域の経営者や自治体の担当者が自社の製品やサービスを広く知ってもらい、地域ブランドを強化する取り組みとして、オウンドメディアが大きく注目されています。従来の広告とは異なり、自社で媒体を保有し、継続的に情報を発信できる点が強みです。さらに、読者にとって有益なコンテンツを提供し続けることで、検索エンジンでの評価が高まりやすく、顧客との関係構築にも寄与します。特に地方創生を目指す企業にとっては、自治体や商工会との連携を図りながら、地域の特色を生かした情報を全国に発信する好機となっています。

実際に、日本全国の企業300社を対象にした調査では、過去3年以内に85.3%がオウンドメディア運営を始めた一方で、開始から半年以内に更新を停止してしまう事例も約3割にのぼっています。この背景には担当者の不在やリソース不足があり、継続に向けた体制づくりが課題とされています。また、コンテンツマーケティングをうまく活用し、明確なKPI設定やデータ分析を行う企業は、B2C・B2Bを問わず成果を上げています。ライオン株式会社は生活情報メディア「Lidea」を通じて顧客の悩み解決を目指し、NECはB2B向け情報サイト「WISDOM」で潜在顧客との関係構築を図っています。仙台セルバは地域密着型のWeb施策でSNSやユニークな企画を活用し、アクセス数を大幅に増やしました。これらの企業はKPI設定や社内理解の促進、データ分析と施策の両面で効果を高めています（参考*1）（参考*2）。地域における課題やニーズを丁寧にすくい上げるオウンドメディアは、全国展開への足がかりとしても有望です。

 

地域活性化を目指すうえで重要なオウンドメディアの戦略

地方の企業や自治体が地域創生を図る際には、あらゆるリソースが限られている場合も多くあります。そのため、自社サイトやSNSといったオウンドメディアを使って、どのように効率的に情報を発信し、ターゲット層にリーチするかが重要です。一般的に、大まかなターゲット設定から始まり、具体的なキーワード選定を行い、そのキーワードに沿ったコンテンツ制作を続ける流れになります。

特にB2B商社として専門性の高い原材料を扱う松尾産業は、業種や分野を超えたオープンイノベーションを促す場として「PEAKS MEDIA」を立ち上げました。ナイル株式会社はマーケティング支援を通じて、ユーザーインタビューやペルソナ設計、コンセプト作成、KPI設定、コンテンツ制作、サイト制作ディレクションまでトータルに支援しています。松尾産業の担当者は、メディアの内容が「かっこいい」「面白い」と好評で、気づきを与える記事ができていると評価していますが、認知拡大には時間が必要と認識しています（参考*3）。

また、採用活動やイベント情報の発信を担うオウンドメディアを構築する企業も増えています。株式会社アクシアエージェンシーが提唱する自社ホームページやSNSを使った「オウンドメディアリクルーティング」も、大企業だけでなく地方企業にも活用できる手段として注目されています。こうした手法は、求人サイト利用者の約8割が企業HPを閲覧し、そのうち約6割が応募意欲を高めているという調査結果もあり、採用活動の新たな選択肢となっています（参考*4）。

このように、限られた予算で効果的に発信するには、最初にどのようなゴールを設定するか、どんな層に届けたいかを固めることが鍵になります。特に地域の独自性や強みを意識した記事づくりは、オウンドメディアの差別化にもつながるため、今後ますます重要性を増していくでしょう。

 

最新の成功事例：実践から得られた学び

現在、多くの企業がオウンドメディアを「商品理解の促進」「問い合わせ獲得」「サービス認知度の向上」といった明確な目標を持って運用し、一定の効果を収めています。その中でも、ナイル株式会社が運営する「ナイルのSEO相談室」では約3年間で受注額が9倍、資料ダウンロード数が34倍に増える成果をあげています。運用体制は正社員1名と2〜3名の業務委託チームで構成され、月約10本の記事を公開しています。成果を出すために、サービスページの増設、フォームの簡素化、チャネル拡大、記事制作体制の強化、ホワイトペーパーの増加、ウェビナーの実施など7つの取り組みを行いました（参考*5）。

一方、ERP製品の導入支援や現役コンサルタントの視点を生かした「SAP Consult Media」を全面リニューアルした株式会社Anfiniの取り組みも参考になります。こちらは実務に役立つ解説記事や無料でダウンロードできる資料などを完備し、専門知識の提供を通じて読者の課題解決をサポートしています。新設された資料には、ERP製品の比較ガイドやSAP認定資格の受験準備本、フリーコンサルの年収アップ戦略などがあり、無料で利用可能です（参考*6）。自社で培ったノウハウを直接届けることが可能なオウンドメディアは、リード獲得だけでなく、社外に向けたブランド力向上にも寄与しやすいといえます。

このように成功している企業の多くは、自社の強みや独自性をコンテンツで具体的に示すことを重視しています。記事を通じて読者の課題に寄り添い、効率的に情報共有することで、ローカル企業でも全国規模の集客が狙いやすくなります。

 

生成AIで効率化を狙うマーケティング施策

限られた人員や予算でメディア運営する際には、コンテンツ制作の効率化と質の両立が課題になります。そこで近年注目されているのが、テキスト自動生成サービスなどの生成AIを活用した施策です。下書き段階でAIの支援を受けることで、担当者がアイデア出しや構成づくりを手早く行い、精度の高いコンテンツをより多く量産できる可能性があります。さらに、AIによるキーワード分析や需要予測を取り入れれば、SEO対策の計画もより的確に立案できるでしょう。

コンテンツマーケティングの取り組みは毎年開催されるグランプリでも広く注目されています。例えば「コンテンツマーケティング・グランプリ2023」では、記事のみならず動画や音声、紙媒体といった多様な形態のオウンドメディアが評価されました（参考*7）。翌年の「コンテンツマーケティング・グランプリ2024」では、さらに増加した応募の中からグランプリや優秀賞が選ばれ、企業それぞれが独自の戦略を展開していることがうかがえます。受賞作品には、派遣社員向けメディア「ハッケン・テンプ」や犬と飼い主の生活を支える「WanQol」、宇宙ビジネス情報の「宙畑」、一人旅専門の「ソロトリマガジン」など、多様なテーマや媒体が含まれています（参考*8）。これらの受賞事例には、ユーザー参加型コンテンツや社内技術ブログなど、アイデアを取りこむさまざまな手法が見られます。

このように新しい技術やプラットフォームを柔軟に採り入れながら、読者に有益な情報を届けることこそが、オウンドメディアを拡大し、長期的な集客を可能にする要因といえます。生成AIを活用した取り組みは、地方創生に取り組む企業でも取り入れやすい方法となるため、今後も応用の幅がいっそう広がりそうです。

 

継続運用によるブランディング効果と今後の展望

オウンドメディアを運営するうえでは、一度公開したコンテンツを長期間にわたり置いておく意味合いが大きいです。長く読まれる記事が増えるほど検索エンジンでの評価も高まり、継続的な流入が見込めます。また、そのメディアが育つにつれて社内外の関係者が情報発信に協力しやすくなるため、企業としての信頼構築にも重要になります。実際に、長期的な成果を狙うための研修やセミナーを行う事例もあります。株式会社ルーシーでは、業界No.1のオウンドメディア構築を目指す企業向けに、特別セミナーを開催しています（参考*9）。

さらに、大人向けの社会科見学をテーマにものづくり現場を紹介している「しゃかいか！」では、企業や地域の魅力を深く掘り下げて紹介することが高く評価され、コンテンツマーケティング・グランプリ2024でグランプリを受賞しています（参考*10）。こうした事例は、単にアクセス数を伸ばすだけでなく、コミュニティ醸成やブランドとしての価値発信にもつながることを示しています。

今後は、地域活性化と結びついたオウンドメディアがますます増える可能性があります。限られたリソースでも、生成AIなど新しいテクノロジーを用いて効率よくコンテンツを生み出し、自分たちの地域の強みをしっかり発信できれば、全国や海外へ向けた展開にもつなげやすいでしょう。オウンドメディアを上手に活用すれば、新しい顧客層との接点づくりや企業間のパートナーシップ形成にも効果が期待できます。今こそ、自社のメディア運用計画を再確認し、読者が求める情報を分かりやすく届け続けることが重要です。

 

監修者

倉増 京平（くらまし きょうへい）

ティネクト株式会社 取締役 / 株式会社ライフ＆ワーク 代表取締役 / 一般社団法人インディペンデント・プロデューサーズ・ギルド 代表理事

顧客企業のデジタル領域におけるマーケティングサポートを長く手掛ける。新たなビジネスモデルの創出と事業展開に注力し、コンテンツマーケティングの分野で深い知見と経験を積む。

コロナ以降、地方企業のマーケティング支援を数多く手掛け、デジタル・トランスフォーメーションを促進する役割を果たす。2023年以降、生成AIをマーケティングの現場で実践的に活用する機会を増やし、AIとマーケティングの融合による新たな価値創造に挑戦している。

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