webマーケティングは、企業がwebの各種媒体を通じて見込み顧客に働きかけ、製品やサービスの購入を促進する手段の一つです。
効果的に実行されれば、ビジネスの成功に大きな影響を与えることができますが、webマーケティングがカバーする領域は広大であるため、初心者にとってはとっつきにくいと感じる人もいるでしょう。
本稿では、初心者がwebマーケティングをどのように進めるべきか、目標管理の始祖であるピーター・ドラッカーのマーケティングに関する知見を借りながら、その推進手順を紹介します。
ターゲットを明確にする
マネジメントの始祖であるピーター・ドラッカーによれば、マーケティングは「顧客の欲求からスタートする」と述べられています。webマーケティングも決して例外ではありません。
そのため、ピーター・ドラッカーは、ターゲットを明確にするためには、次の6つの質問が必要だと説きました。(現代の経営 P・ドラッカー ダイヤモンド社)
1.顧客は誰か
もっとも簡単なのは、既存顧客の属性を調査することで、帰納的に顧客の属性を引き出すことですが、サンプルが少ないときには使えません。
場合によってはアンケート調査やGoogle Analyticsなどの、各種マーケティングツールを使うことで、役職、所在地、興味などを把握することができるときもあります。
2.現実の顧客は誰か
製品を使用している人が購入者でない場合もあります。例えば、親が子供のためにおもちゃを購入することがあります。この場合、子どもはエンドユーザーですが、本当の顧客は両親です。この区別を理解することが重要です。
3.潜在的な顧客は誰か
潜在顧客とは現在は貴社から購入していないが、説得すれば購入してくれる可能性がある人たちです。
そもそも、一般的には購買してくれている人の人数よりも、購買していない人数のほうがはるかに多いのです。「彼らはなぜ購買してくれないのか」を特定することは、市場を大きく拡大することにつながります。この際にSurveyMonkeyやQualtricsのような市場調査ツールを用いることで、潜在的な顧客層を特定するために活用することができます。
4.顧客はどこにいるか
彼らはどこにいるのか?これは、特に場所に依存するビジネスでは、マーケティング戦略に影響します。Facebook Audience Insightsのようなソーシャルメディア分析では、フォロワーに関する地理的なデータを取得できるときがあります。
また、webマーケティングでは特に、「どのメディアを好んで利用しているか」を知ることも重要です。
彼らが通常利用するメディアを特定することで、そこに対してマーケティング施策をうつことがか
5.顧客はいかに買うか
顧客の購買習慣を理解することで、販売アプローチを調整することができます。
例えばどのような理由で購入するか、あるいはどのようなタイミングで購入するか、どのような期待をもって購入するかなどです。
Eコマースプラットフォームでは、Shopifyのストア分析のように、顧客の行動に関する分析を提供することがよくありますが、購入に際してレビューを求めたり、アンケート調査などを併用してこれらの調査を行うことも可能です。
6.顧客にいかに到達するか
彼らがwebにおいて、どのようなプラットフォームを利用しているかを明らかにできれば、次にどのようなコンテンツが彼らにとって魅力的なのかを考えてみましょう。
もっとも一般的なのは、Ubersuggestなどのマーケティングツールによって、顧客が使うキーワードを特定することです。キーワードが明確になれば、顧客が興味を持つ話題・テーマを決定でき、それに関連した顧客が求めるコンテンツを通じて、彼らにアクセスすることが可能になります。
明確な目標を設定する
次のステップは、明確な目標を設定することです。すべてのマーケティング施策は、その成功を判断するために、明確で測定可能な目標を持つ必要があります。
目標は、ドラッカーによれば、以下の5つのことを可能にしなければなりません。(現代の経営 P・ドラッカー ダイヤモンド社)
(1)なすべきことを明らかにする
(2)なすべきことをなしたか否かを明らかにする
(3)いかになすべきかを明らかにする
(4)諸々の意思決定の妥当性を明らかにする
(5)活動の改善の方法を明らかにする
例えば、あるソーシャルメディアキャンペーンの目的が「今後1ヶ月以内に、当社のターゲットのエンゲージメントを20%向上させる」であったとします。
この場合、「何をすべきか」(What)は明確でも、「どうすべきか」(How)の詳細は曖昧なままです。このような場合、目標を日々の業務に沿った、実行可能な小さなタスクに分解する必要があります。
(1)なすべきことを明らかにする
ソーシャルメディアのエンゲージメントを20%向上させることを目標に据えたとすると、そのためには、「いいね!」、「シェア」、「コメント」、「フォロワー」を増やすことが必要です。
(2)なすべきことをなしたか否かを明らかにする
Twitterアナリティクスや、 Sprout Socialのようなソーシャルメディア分析ツールを使って、進捗状況を確認しましょう。これらのツールは、ソーシャルメディアのパフォーマンスに関する洞察を提供し、目標に達したかどうかを測定することができます。
(3)いかになすべきかを明らかにする
目標に従って、 具体的な行動計画を立てます。より魅力的なコンテンツを投稿する、コンテストを開催する、フォロワーと会話を始める、などです。BufferやCoScheduleなどのコンテンツスケジューリングツールを使って、一貫した投稿スケジュールを確保することも必要かもしれません。
いずれにせよ、各種メディアへ投稿するコンテンツを生み出すことは労力とコストがかかるため、どのようにコンテンツを生み出していくかという計画は必要です。
(4)諸々の意思決定の妥当性を明らかにする
計画を実行しながら、各活動の効果を評価しましょう。
ある投稿は「いいね!」を多く獲得できたか?
あるトピックは、より多くのコメントを獲得できたか?
これらの詳細を分析することで、アプローチを改良することができます。
(5)活動の改善の方法を明らかにする
分析ツールのデータを使って、何がうまくいき、何がうまくいかなかったかを認識しましょう。
例えば、短いビジュアルの投稿がより多くのエンゲージメントを獲得した場合、同様のコンテンツを作成することに集中します。また、特定の時間帯に投稿した方が閲覧数が多い場合は、その時間帯に投稿する回数を増やすことも良いでしょう。
以上のようなステップを踏むことで、ソーシャルメディアのエンゲージメントを20%向上させるという大きなな目標が、具体的なタスクと指標を備えた具体的な行動計画となり、追跡して必要に応じて調整することができるようになります。
ドラッカーの5つの質問に常に立ち返ることで、目標が適切で達成可能であることを確認し、オーディエンスの反応に基づいて戦略を進化させ続けることができるのです。
適切なチャネルを選択する
ドラッカーの指摘する「顧客にいかに到達するか」において、最も重要なのが、適切なチャネルを選択することです。
「顧客が誰か」が定義されれば、それに付随して
・顧客はどこにいるか
を明確にすることができるでしょう。
そこで必要なのが、チャネルの考え方です。
TwitterやFacebookなどのソーシャルメディア、電子メール、ニュースサイト、検索エンジンなど、インターネットには顧客とつながるためのチャネルが数多く存在します。
適切なチャネルを選択する鍵は、ターゲットとなる見込み客と、彼らが最も利用しそうなチャネルを理解することにあります。
例えば、あなたのターゲットが10代だとします。2022年のピュー・リサーチ・センターのレポートによると、10代の95%がYouTubeを、67%がTikTokを、62%がInstagramを、59%がSnapchatを使用しています。逆にFacebookは32%、Twitterは23%にとどまります。
したがってマーケティングキャンペーンは、TwitterやFacebookと比較して、これらのプラットフォームでより効果的であろうと推測できます。
一方、ターゲットがB2Bセクターの専門家であれば、LinkedInや業界別フォーラムのようなプラットフォームの方が良い選択かもしれません。
例えば、2022年のContent Marketing Instituteのレポートによると、最も成功しているB2Bコンテンツマーケターの8割が、ブランドマーケティングにLinkedInを使用していることが明らかになっています。また、このグループのうちの4割が、これが最も優れたプラットフォームだと回答しています。
チャネルの候補をいくつか挙げることができたら、さまざまなチャネルで小規模なキャンペーンを実施し、どのチャネルが最も良い結果をもたらすかを確認します。A/Bテストを使って、異なるプラットフォームのパフォーマンスを比較しましょう。基本的には、プラットフォームが提供するツールを使って、キャンペーンのパフォーマンスを追跡し、どのチャネルが最も効果的であるかについての洞察を得ることができます。
最後に、調査結果に基づき、オーディエンスにとって最も効果的なチャネルに焦点を当てます。
適切なチャネルを選択することは、1回で完了するものではありません。オーディエンスやその嗜好、オンライン環境の変化に応じて、継続的に評価と調整を行う必要がありますので、継続的な改善サイクルを回すことをマーケティングチームで実施しましょう。
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【著者プロフィール】
安達裕哉
元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。
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