AI時代の「ライター」の生き残り方

このコンテンツは有料note「webライターとメディア運営者の、実践的教科書(安達裕哉著)」より転載しています。


AI時代に「ライター」は生き残れるか?

わたしは2013年から10年間、webメディア/マーケティング会社を経営する傍らでライター業も続けてきました。

実際、コンサルティング会社に勤務していた時にも、「日経コンピュータ」などの雑誌への寄稿や、書籍の執筆なども行っていたので、肩書を無視して通算すれば15年以上のライター歴、という事になります。

その経験を踏まえて言えば、ライター業は地味ですが、ライティングへのニーズは常にあります

それどころか、現代産業では「作れば売れる」の時代が終了し、「情報発信」の重要性が高まりましたから、「人の注目を集める記事を書ければ食える」のは、間違いありません。

もちろん、ライター業は参入障壁が非常に低く、「やろうと思えばだれでもできる商売」でもあります。ですから、「耳目をどうやって集めるか」については、工夫しなければなりません。

そんな私ですが、ライターとなって初めてうけた大きな衝撃が、2022年11月の「ChatGPT」の登場です。

特に、性能の良いモデルであるGPT-4を用いると、ChatGPTは「事実をそのまま書けばよい文章」であれば、人間よりもアドバンテージがあります。

それは何と言っても「早い」「正確」「安い」ということです。

例えば、インタビューの文字起こしはAIがやってくれます。
文字起こしされた文章を記事にするのもAIがやってくれます。
てにをはのチェックはAIがやれます。
文章のロジックチェックもAIがやれます。

最終的に人間が編集として「冗長な部分」と「事実と異なる部分」などを見ておしまいです。

今までライターが行っていた仕事は、「ヒアリング」以外はAIに代替可能であり、メインの執筆に至っては、AIにやらせた方が良い文章が出てくることも珍しくありません。しかもそれをやるのは、サービスがリリースされてせいぜい1年である、発展途上のAIなのです。

「人間のライターのレベルには程遠い」という方もいるかもしれません。
しかし、それは認識として非常に甘いです。

AIのレベルは日進月歩であるのに対して、人間のライターのレベルはそう簡単に上がりません。
しかも、AIのほうがはるかに早く、安いのです。
AIに執筆させることを選ばないことは、もはやあり得ないと言っても良いくらいです。

「小説は書けない」
「感情を揺さぶるような文章は書けない」

と言うのも、AIの進歩のスピードを見ると、すぐに過去の話となるでしょう。実際、すでにAIよって書かれたらしき痕跡のある書籍が、いくつも出版されています。

わたしは、「AIが執筆の補助をやってくれる世界」を想像はしていました。しかし「ライティング」という仕事そのものが丸ごと無くなってしまう、と言う事態は想定外でした。

AI時代に「ライター」は生き残れるか?

現状を見ると「ライター」の生き残りは、かなり厳しいように思えます。

特に「ネットを調べて書く」という領域だけをやっているライター、SEOライターやコタツ記事ばかり書いているライターは、早晩、仕事がゼロになるでしょう。

実際、私が知るだけでも、いくつかの会社はすでに、「AIのライティングアシストツール」をつかって、メディア記事の内製化を進めています。

AIは上手く使えば、今までライターに依頼をして、書き直しの注文を出して、数週間をかけて作っていた記事を、内部の人間で数時間で作ることができます。これは、大きなコストダウンになります。
おそらく、「調べもの系記事」においては、近い将来人間がやるのは編集とファクトチェックだけになるでしょう。

では今後、「ライター」の仕事はどうなるでしょうか?

まず「オピニオン系の記事は、AIが書けないのでオピニオンを磨くべき」と言う話があります。
たしかにAIは意見を持たないので、オピニオン系の記事をかけるように、という見方は悪くありません。

しかし、これには落とし穴があります。
AIは意見を持たないのは事実なのですが、「AIが意見を持っているように書かせる」のは実は簡単なのです。

例えば、先日私は、以下のAIに関する記事を書きました。
「生成AIを仕事で使い倒す人たち」に取材して回ったら「自分の10年後の失業」が見えてしまった

ChatGPTの発表から、1年が経過しようとしています。熱狂は徐々に醒め、現在の利用状況はLINEの調査によると、全体の5%程度。
その中でも、仕事で積極的に利用している人は、1%程度ではないかと推測します。
では、この1%の人たちはどのような方々で、どのように生成AIを仕事で使っているのか?9月の中旬から、10月の末にかけて、私は約40名の方に取材を行いました。
そして、私は一つの確信を得ました。それは、「私は間違いなく10年後、失業する」です。

そして、この文章を学習資料として、ChatGPTに以下の指示を出します。

ChatGPTへの指示例画像1

つまり「安達裕哉」に成り代わって、彼の持ちそうなオピニオンを推定して、と命令するのです。

すると、ChatGPTは「安達裕哉」と言う人物のロールを演じて、オピニオンを作ることができるのです。

ChatGPT生成文例画像1

あとは、このオピニオンを含んだ記事を、「安達裕哉」のロールを持たせて書かせれば、記事は完成です。

この手法を応用すれば(ChatGPTにいくつかの記事を学習させてから書かせる)その著者と同様のオピニオンを展開することもできるでしょう。

とはいえ、まだ「切り口の意外性」と言うところでは今一つですが、実はこれもChatGPTへの指示次第です。

ChatGPTへのプロンプト例 その2

ChatGPTは、「主張には意外性を持たせること」とプロンプトに含めるだけで、なかなか面白いオピニオンを展開してくれます。

ChatGPT生成文例画像2

つまり「オピニオンを持っている」と言うだけでは、ライターの武器にはなりません。
情報でAIと勝負をしようとすることが、そもそも無謀なのです。

今のAIには絶対にできないこと

では、AIにできず、ライターにできることは残されているのでしょうか?


個人的な意見ですが、私は「情報量」と「頭の良さ」で勝負しようとしてはいけない、と考えています。つまり、今後のAIの発展のスピードを考えると、

  • 「AIの知らないこと」は基本的に存在しない
  • 「AIに思いつかないこと」はない

と考えたほうが良い、ということになります。

これをもとにライターの仕事を考えていくと、ライターの仕事は、以下の2つに集約されます。

  1. 現場の取材
  2. 個人的な体験をもとにしたストーリーテリング

1.は物理的な身体をAIが持たないための限界。
2.も同様で「体験」をAIが語ることは不可能なため。この2つはAI技術ではなく、アンドロイドやロボットの技術の発達を待つ必要があるため、現在のAIの延長線上にはありません。

単純に言えば、「いろいろな場所を訪れよ、人に会いに行け」が1.。
「他の人がやらないことをやれ、珍しい体験をせよ」が、2.ということになります。
人間のライターの仕事は、この2つにしか残されていません。

こういう記事はAIには書けない

したがって、「AIには書けない記事」の実例は、以下のようなものになります。

まずは先に紹介した取材記事。

「取材して回る」「依頼を出す」「話を聞く」という行動は、AIにはできない。そして、人間に対して説得力を持つのは、やはり人間の話です。

また、以下の「エチオピアの起業家」についての話も同様です。

起業についての話なのですが、この話はエチオピア人の行動や慣習を、現地の起業家にインタビューしたうえで執筆しています。取材+体験談というフォーマットは、AI時代においても、ライターに残された価値ある仕事になるでしょう。

次に、以下の体験談を交えたノウハウ記事。

世の中にタスク管理のノウハウ話はあふれているが、説得力を持つのは「タスク管理をどのように考えているか」についての、具体的かつ面白い個人的な体験談であることがよくわかります。

あるいは体験談と言っても「ニッチな体験」もライターの領域です。

人生における困難を「体験」と言う形で描写するのは、映画や小説、芸術作品においても良くとられる手法ですが、AIには「体験」そのものがないため(模倣はできるが、ウソになってしまう)、現在もライターの領域です。

まとめ

要するに、AI時代の「ライター」は、ある意味でYoutuberと同じです。
「会ってみた」
「行ってみた」
「やってみた」
「買ってみた」
と、フィジカルな経験・体験などを通じて、オリジナリティのあるオピニオンを主張することが求められます。

逆に言えば、調査、分析、批評などは、よほどの有名人であれば別ですが、表に出ずとも、徐々にAIの領域となっていくことが予想されます。

 

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【著者プロフィール】

安達裕哉

元Deloitteコンサルタント/現ビジネスメディアBooks&Apps管理人/オウンドメディア支援のティネクト創業者/ 能力、企業、組織、マーケティング、マネジメント、生産性、知識労働、格差について。

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