このコンテンツは有料note「webライターとメディア運営者の、実践的教科書(安達裕哉著)」より転載しています。
オウンドメディアのコンテンツとして最も優れているのは、間違いなく
「中の人だからこそ書ける、主張・意見があり、人を感じる記事」です。
「ニュース」「データ」や「ノウハウ」も良いのですが、それは他でも読めますし、
それが単体でめちゃくちゃ読まれる、というのはあまりありません。
仮にニュースやデータが人気を集めることがあっても、それは「単発」で終わることがほとんどです。
逆に、継続して読まれるのは「書き手」の解釈を加えた「意見・主張」です。ブロ的とも言えます。
したがって、継続してファンを付けるのであれば、意識すべきは「書き手の意見を出すこと」です。
例えば、経営者の
「起業の経緯」や「新サービスを立ち上げたときの話」。
あるいは社員の「日々の仕事で疑問に思ったこと」
「お客さんからの要望に答えた時の話」
「成長を実感したときの詳細」
などは、優れたコンテンツになり得る可能性が高いと言えます。
実際、「退職エントリ」が人気を集めるのも、「中の人だからこそ書ける、オリジナリティの高い主張を含む記事」だからです。
したがって私はオウンドメディアを運営しようとしている会社から
「どんな記事を出したらいいですか」
と相談されたときには、必ず
「社員の方々で、ちゃんと意見を主張できる記事を書ける人はいますか?書けるなら、それが最も良いです。」
とお答えしています。
「社員の書いた記事」は文章力に欠けていたとしてもリアリティがあるので、編集をきちんとすれば、かなり良いコンテツになるのです。
しかし、これを実行しようとすると、なかなかハードルが高いと感じる人が多いようです。
特に以下の2つについて、渋る人が多いと感じます。
一つは「社員のリソースを記事作成に割り当てられない」という理由。
もちろん、書き手として気持ちはよくわかります。
文章を一つ仕上げるというのは、大変な労力がかかるし
「本業の時間を削って、文章を書くのは費用対効果が合わない」と考えるのも一理あります。
まあ、確かに仕事が滞っても良くないので、「記事の外注」をするのも一つの手でしょう。
ですがもちろん、その場合でも「社員の書く記事」をゼロにするのはあまりおすすめはしません。
言ってしまえば、「自分たちが主張できない」という会社は、オウンドメディアなんかやらないほうがいいと思います。
外部の信用を構築するのは、結局自分たちの「意見」や「考え方」なのですから。
そしてもう一つ「オウンドメディアなんかやらないほうがいい」と、強く思う時があります。
例えば、ある企業での話です。
「社員の意見が見える記事が良い」と説明し、「社員の方に書いてもらうことは出来ますか?」と聞いたところ、妙に渋るのです。
「皆さんに書いてもらうのは難しいでしょうか……?」
「いや、書かせることは出来ます……ただ、どうでしょう。どうしても社員じゃないとだめですか?」
「そんなことはないですが……現場はお忙しいんですかね。」
「いや、変なことを書かれると嫌だな、と。」
「変なこと……?」
「SNSでネガティブなコメントがついたり、書いてもらった後から「これは出せない」って、言いにくいじゃないですか。あと、炎上しても困ります。」
私は内心「この会社にはメディアは無理だな」と思いました。
「社員が主張する」ことに対して、抵抗があるからです。
「コントロールされた情報」は面白くないし、読まれない
企業が「社員の主張を嫌う」最大の理由は「情報をコントロールしようとしている」という点です。
単刀直入に言うと「自分たちにとって、都合の悪い情報は一切、出てほしくない」という会社は、情報発信に向いていません。
私は、上の会社の方に言いました。
「社員の意見を発信すれば、多少会社の考え方と異なった意見が出たり、何かしらのネガティブなコメントがつくのは、当然ですし、防げません。」
「そこを、なんとかならないですかね」
「許可された人だけに見せればいいのですが、そうするとほとんど誰にも見られないですよ。」
「個人的な主張を入れず、客観的事実や、エビデンスだけに基づいて記事を書けばよいのではないでしょうか。」
「エビデンスを示そうが事実を提示しようが、ケチは付きます。あと「いかにも正しすぎる意見」や、論文のようにデータでガチガチの記事をwebであえて読みたいですか?」
「……。」
「発信する以上、どんな素晴らしい記事を書いても、必ずグダグダ言う人は出てきます。逆に、「賛成多数」「反対少数」くらいのほうが、議論が盛り上がります。」
webは評判をコントロールしようとすればするほど、反発されます。
ですから、多少の反論があっても、それを無理に説得しようとせず、単に「ご意見ありがとうございます」でよく、またひどい態度の人へは、完全無視でいいのです。
大丈夫。
お客さんになってくれるような、まっとうな人は「どっちが間違っているか」をちゃんと理解しています。
「炎上」なんかしない
「でも、炎上は困ります」
と先方の担当者は言いました。
私は言いました。
「社員の記事で「炎上」なんて、起こすほうが難しいですよ。」
実際、炎上を起こすのはそんなに簡単ではありません。
炎上は、
1.皆が「自分に関連する」と思う話題
2.誰かを見下す・馬鹿にする、ウソをつく
3.一般常識から逸脱する
のすべての条件を満たさない限り、発生しません。
したがって、最も単純に「自分のパートナーや、子供に言えないようなことは、書くべきで無い」というルールさえ守れば、炎上することはまずないのです。
しかも「記事」として外に出る場合、複数人でこれを見るわけですから、余計に炎上は起きにくいといえます。
むしろ、注意すべきは社員の発言よりも「ワンマン社長」の発言です。
彼らは一種の「全能感」を持っている人が多い上に、人を見下すことに躊躇しない人もいます。
また、創業者などは奇人も多く「一般常識」を知らない人も居ます。
例えば一昔前、ZOZOの元社長の前澤さんが炎上していました。(参考:https://togetter.com/li/393199)
正直、「詐欺」というツイートはどうかと思います。
しかし、これに対して「お前みたいなやつは」「感謝のないやつ」のように、マウントし、「客」に対して暴言を吐くという「一般常識に反する行為」をしたので、炎上しました。
ですが。
前澤さんの「炎上」に対して、「よく言ってくれた」という、賛同の声もまた多い事を忘れてはいけません。
知人も「これで惚れてフォローした」という人がいました。
前澤さんは「意見」を表明し、それによって炎上もしましたが、ファンも獲得したわけです。
本質的に「意見を発信する」ことのリスクをゼロにしようとすると、「無難な意見」ばかりが発信され、読んでいる方にとっての価値は低くなります。
逆に「本音で語る」ことが増えると、読んでいる人にとっての価値は増加します。
したがって
「我々は、本音を語ることが出来ない」
「きれいな情報だけを発信したい」
「担当者が失言しないように、完璧に統制したい」
「記事の中身には、一切の反論ができないようにしたい」
という会社に、オウンドメディアは向いていません。
オウンドメディアを立ち上げたとしても、面白みのない、どこにでもある記事ばかりの、人気の無いサイトになってしまうでしょう。
またサビ残などの違法行為をしている「ブラック企業」や、「商材が法律スレスレ」の会社も、オウンドメディアを運営しないほうが良いです。
オウンドメディアの人気が出れば出るほど、「あら捜し」をされる可能性が高くなるわけですから、いつかボロが出て、サイトも閉鎖に追い込まれます。
要は「正々堂々」「本音を」「反論を気にせず」発信できる会社が、オウンドメディアをやったほうが良い会社です。
逆に、そうではない会社は、オウンドメディアではなく「広告」で限定的に情報を出すだけにしたほうが良い。結局、そういうことです
(了)
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