このコンテンツは有料note「webライターとメディア運営者の、実践的教科書(安達裕哉著)」より転載しています。
つい先日。
「売れないけどいい商品」はあるかどうか、という議論があった。
ある商品開発者が
「この商品いいんだよー、あまり売れてないけど……」と
発言したのに対して、複数の人が
「売れてないなら、ダメな商品なのでは。」
と突っ込んだためだ。
その後の議論を省くが、結論としては
「売れてない「いいモノ」はあるけど、売れてない「いい商品」はない。」
という結論で概ね合意した。
「売れてない」なら、商品としての役割を果たしてないよねと、その場の多くの人が考えていたようだ。
せいぜいそれは「趣味」と呼ぶべきだ、とも。
売れない原因が商品のスペックに依るものなのか、マーケティングによるものなのか、地の利に依るものか、時勢に依るものなのか、それらは、ひとまずおいておく。
だが、確かに「売れなくても、良い商品」というのは、言葉の中に矛盾をはらんでいる。商売なのだから、何が何でも、売れなくてはいけないのだ。
これはサイゼリヤの社長の
「おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ」
という信念に通じるものがある。
*
さて、私は商品開発者ではないので、商品の定義については頓着しないのだが、上の議論を聞いて連想したのは「記事」の話だ。
同じように考えていくと、
「ページビューは少ないけど、いい記事」なんてのは存在しないのではないか。そう思ったのだ。
サイゼリヤ風に言えば、
「良い記事だから読まれるのではない 読まれるのが良い記事だ」
とでも言うべきか。
なぜそう言い切れるのかといえば、
「記事」という存在がそもそも、「人に読まれるため」に存在しているからだ。
特に、コストゼロで記事が拡散されるwebでは、「読まれなくていい」などと言えてしまうのは、記事ではない。それは「日記」と呼ぶべきものだ。
このように言うと、
「届く人に届けばいい」という人もいる。
100人でも、200人でも
「読まれたいと思っている人に届けば良い」という考え方だ。
もちろん、どう思うかは個人の自由だ。
だが、記事を掲載するメディア運営側は、少なくともこう思っているはずだ。
「読まれたいと思っている人が世界で100人しか居ないなら、100回読まれるだけでいいが、仮にそれが1000人いるなら、1000回読まれたほうがいいに決まっている。ビューは多いほうがいい。」
要するに
「読まれたい」と思っている人の最大の人数が何人なのか。
それに対してどのくらいの人が読んでくれたのか。
読まれたいと思っている人の数 > 読んだ人の数
ならば、これが等しくなるように、あらゆる手を使うのが、メディアとライターの責務だ。
そして、webではその活動に最も貢献する活動、つまり「バズ」こそが重要なのである。
*
だが、まだ納得しない方もいるだろう。
特に、紙媒体出身のライター諸兄にはなかなかピンときてもらえない事が多い。
これはwebと紙媒体の構造の違いのためである。
では具体的に何が違うのか。
それは「ライターがメディア(記事)の発行部数に介入できるかどうか」である。
紙媒体はライターがメディアの発行部数に介入することはほとんど不可能である。
そもそも、紙媒体の発行部数は、「媒体の購読者数」によって決まっているのであって、ライターが書いたコラムの出来不出来にはほとんんど依存しない。
だから、紙媒体のライターは雑誌が2万部発行なら、その範囲で「いい記事だ」と思ってもらうことを目指す。
「上限が2万」と決まっているのだから、そもそも「たくさん読まれるのがいい記事」という考え方が理解できない。
だから「読まれなくてもいい記事は存在する」と言う人が多い。
「読まれたいと思っている人に届けば良い」という発言は、要するに
「雑誌を買ってくれる人が読んでくれればよい」という意味だ。
ところがwebは事情が異なる。
webでは、「100回読まれた」記事の発行部数は、たった100部である。
5000回読まれれば発行部数は5000部。10万回読まれた記事の発行部数は、10万部、100万回読まれた記事の発行部数は100万部である。
webは「読まれた数」に応じて、記事の発行部数が決まるため、
ライターが発行部数に介入可能どころか。大きな影響を与えるのだ。
だから「バズ記事」を書けるライターの価値は、限りなく大きい。
webライターは、常にその記事の「発行部数」を問われる、シビアな職業なのだ。
*
そしてもう一つ、webライターがページビューを追求しなければならない理由がある。
それは「読んでほしい人に記事を届けるため」には、「関係ない人」を経由しなければならないというwebの特性だ。
下の図をみてほしい。
図中の丸は「人間」、線は「友達関係にある」ことを示している。
ここで中央の青い丸が「自分」とする。
そして赤い丸が「記事を読んでもらいたい人」だと仮定する。
さて、自分には現在、直接線がつながっている、6人の友だちがいる。
SNSで「マニアックだが質が高い記事」を公開すると、下の図のように赤丸の「記事を読んでもらいたい人」3人が記事を読んでくれた。(うれしい!)
そして、友達の中のひとり、Bさんはなんと、自分と同じ興味の知人に記事をシェアし、その先の友達も読んでくれた。(ありがとう!)
この場合、4PV、ターゲットに届いた人数は、4人である。
これが従来の「読まれないけど質が高い記事」の成果である。
ところが。
実は図の上の方に3人ほど、「読んでもらいたいのに、記事がリーチしなかった人たち」がいるのだ。
この人達にも記事を届けるには、一体どうすればいいだろう?
もちろん答えは「他の人を経由させる」である。
例えば図の中のAさんを経由させれば、あと2名、ターゲットを増やすことができる。
右上の知人も巻き込むことができれば、更にもうひとりターゲットを増やせる。
そのために必要なのはもちろん、「記事をバズらせること」だ。
「Aさん」「Bさん」含めて、友人が皆興味を持ちそうなことを書く。
要するに「バズ記事」を書くのだ。
そうして、仮にここに描かれている人全員に記事を読んでもらえた場合、26PV、ターゲットに届いた数は7名である。
結果的に、PVも、ターゲットにリーチした数も「マニアックな記事」より多い。
また、記事を読んだ結果、白丸のひとが何名か「赤丸」に変わるかもしれない。潜在的な読者を増やす効果もある。
このようにweb上では「バズる記事」は「すこししか読まれない記事」に比べて、圧倒的に優れている。
また、この図の中では「バズ記事」によってターゲットは3名しか増加しなかったが、実際はこれは3人ではなく30人、300人かもしれない。
とにかく「自分が直接リーチできる人数」よりは遥かに多いはずだ。
こうしたwebの構造上、「バズを起こせないwebライター」は、「売れない営業マン」と同じであり、長期的にはこの世界で食べていくことはできない。
*
上のような話をしてもまだ
「バズ記事は、本当に読んでほしい人に刺さらない」とか、
「バズ記事は、再現できない」とか、
「バズ記事は、質が低い」とか、
そんな事を言う人たちがいる。
まあ、そう思うなら仕方ない、その人達にとってはそうなのだろう。
潔くwebライターは諦めたらいい。
だが、webライティングの本質は、間違いなく上で紹介したとおりであり、Googleのアルゴリズムの変更や、広告プラットフォームの栄枯盛衰と関係なく成果を出す方法はこれである。
したがってwebライターに必須のスキルは、「バズ記事を書くスキル」である。
逆に言えば、これ以外のスキルは二の次、三の次だ。
ところがこのように言うと、「バズは再現できない」という方もいる。
だが本当にそうだろうか?
私はそう思わない。
事実、Books&Appsでは、ほぼすべてのライターが「バズ」を何回も起こしている。
再現ができないなら、全員が一発屋であるはずだが、実際には何回もバズを起こしている。「バズは再現できる」のだ。
ただ、もちろんこれは「誰もが」できるわけではない。
管理職が全員にできるわけではない。
AI技術者が全員に務まるわけではない。
調香師は誰でもなれる職業ではない。
いわば、「バズライター」は、そういう性質の話であり、「練習」と「フィードバック」の繰り返しにより獲得できる技能と言える。
この連載は、そのような「バズライター」を目指す人のための、教本なのだ。
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