このコンテンツは有料note「webライターとメディア運営者の、実践的教科書(安達裕哉著)」より転載しています。
「オウンドメディア支援」を掲げて商売をしていると、ほとんどのクライアントから聞かれるのが「効果測定」についてです。
企業活動の良し悪しの判断は、結局のところ「費用対効果」に集約されますから、オウンドメディアにかけたコストが、リード獲得などのメリットをどの程度生み出しているのかを測定したいのは、当然と言えます。
ところがこの「オウンドメディアの費用対効果」は、結構曲者です。
なぜなら「閲覧」から「リード獲得」までの期間が、広告と異なり非常に長いからです。
例えば。
商材の広告であれば、「広告を見る」▶「申し込む」の流れは数分〜数日の間に行われることがほとんどです。
しかし、「オウンドメディアの記事を見る」▶「申し込む」の流れはそれほど強くなく、成果が出るまでに数週間〜数ヶ月を擁するときもあります。
これは、考えてみれば、当たり前です。
「オウンドメディアの記事」はそもそも、商品を売るというよりは、「多くの人に読まれる」用に作っているのですから、販売という目的に限って言えば、広告に劣るのは当然です。
それを聞いて
「だったら、広告だけをやればいいじゃない」という方もいるでしょう。
全く、そのとおりです。
「すぐ売りたい」
「すぐに問い合わせがほしい」
「すぐに成果がほしい」
といった企業は、広告から、web上での販促を始めるべきです。
オウンドメディアに手を出すべきでありません。
「オウンドメディア」と「すぐ」は相性が悪いのです。
ではなぜ「オウンドメディア」をやっている会社があるのでしょう?
もちろんそれは、「潜在客」に対してアプローチしたいからです。
「広告」がリーチすることの出来ない、「検索」ニーズが発生する前の状態の人々である、「潜在客」を、ファン化して、ニーズが顕在化した時に、まず自分たちのことを思い浮かべてほしいからです。
例えば。
ある人が潜在客から、顧客に至るまでの流れの一つを簡単に示してみましょう。
1.オウンドメディアの記事をFacebookでたまたま読む
2.オウンドメディアの記事をスマートニュースでたまたま読む
3.オウンドメディアの記事を社内の人から勧められる
4.「あれ、このサイトよく見るな」と、ブックマークに登録する、またはSNSで公式アカウントをフォローする(ファン化する)
5.一週間に一回程度、オウンドメディアの記事をチェックするようになる
6.「どんな会社がやっているメディアなんだろう?」と運営元のコーポレートサイトを見る(潜在客化する)
7.たまたま配属されたプロジェクトで「こんなサービスやっている会社ない?」と聞かれてオウンドメディアの運営元を思い出す
8.オウンドメディアの運営元に問い合わせる(顕在客化する)
こうして、彼は「顕在客」となるまでに、延べ20回、オウンドメディアを訪れてから、問い合わせをしたとします。
ここで問題です。
「このオウンドメディアは、成果を出した」と言えるでしょうか?
はい。もちろん最終的には「問い合わせ」につながったのですから、成果を出したと言えると思います。ここまでは簡単ですね。
ではもう一つ問題です。
「どの時点で「成果」と呼んで良いでしょうか?」
Facebookで読まれたら成果?……いえいえ、早すぎますかね。
SNSの公式アカウントをフォローしてくれたら成果?……フォローしただけで、購買にはつながらないかも知れませんね。
運営元のコーポレートサイトを見たら成果?……「見た」というだけで成果にしてよいのでしょうか?
やっぱり「問い合わせ」があって初めて成果?……それまでの訪問は何一つ成果ではないのでしょうか?
ということで、ここはまさに決め事の世界です。
どう決めても、自由です。
それではさようなら……
というわけにはいきませんよね。
というわけで、Books&Appsでは「すべてを成果」としています。
つまり、「最終的な問い合わせ」も、「問い合わせに至る前にメディアを訪れたこと」も一旦全て「成果」としています。
そして
前者を「直接コンバージョン」(最終的な問い合わせをしたこと)
後者を「間接コンバージョン」(問い合わせに至る前に訪れたこと)
と呼び、区別しています。
つまり一つの「直接コンバージョン」の前に、数十、時には百以上の「間接コンバージョン」が存在している、というわけです。
では、ここからが本題です。
具体的にはどのように、これらのデータを把握したら良いのでしょう。
このラインより上のエリアが無料で表示されます。
実は、これらは、Googleアナリティクスで、データの取得が可能です。
左サイドバーの「コンバージョン」の中の、マルチチャネル→コンバージョン経路から、このデータを取ることができます。
例えば「すべてのコンバージョン」のデータを見るように設定し
コンバージョン経路と「ランディングページのURL」を取得するように設定すると
以下のように、コンバージョンに至った経路を確認できます。
例えば【8.ノーリファラー】のコンバージョンは、
「「スキル不足で職場に居場所がないおじさん」の救済プロジェクトに関わった時の話」
という記事に直接来て、そこからコンバージョンした、ということがわかります。
さらに見ていくと、複雑な経路でコンバージョンした方がいることもわかります。
例えば、以下のようにサイトに何十回も訪れて、SNSからも訪れて、最後にコンバージョンした、という経路もあります。
これを見ると、一概に「直接コンバージョンする記事」だけが成果ではない事がよくわかります。
ただ、このGoogleアナリティクスのデータにも欠点はあります。
それは「過去90日間」のデータしかわからない、という点です。
したがって「1年前に訪れた人が、コンバージョンした」といった非常に長期間に渡るデータは取れません。
しかし「オウンドメディア」の効果は90日以上に渡ることも当然ありえるでしょう。
その場合、どのように効果を測定したら良いのでしょうか?
その場合、古典的ですが「アンケート」を使うことをお勧めします。
例えば弊社では、コンバージョンした直後のページに、以下のようなアンケートを設定し、「なにをきっかけに問い合わせたのか」を聞いています。
webのアクセス解析ツールだけに頼らず、こういったアナログな方法を組み合わせれば、かなりの確度で「オウンドメディアがどのように問い合わせに貢献しているのか」を可視化でき、費用対効果の検証に使うことができます。
この手法は、もちろん当社だけではなく、金融機関、アパレルEC、MAツール、外食、比較見積もりサイトなど、あらゆるwebメディア、オウンドメディアで用いられている方法であり、
「1年くらい前にたまたまこのサイトを見て」といったコメントも珍しくありません。
オウンドメディアはどうしても「費用対効果」の検証がしにくく、中小企業にとってはハードルの高い施策ではありますが、長期的に見れば自社の「資産」となる、貴重なノウハウの集合です。
ぜひ臆せず、取り組んでいただけると良いのではないかと思います。
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